第10回日本軍「慰安婦」問題解決のためのアジア連帯会議報告 



2011年8月12日から15日まで、韓国教会100周年記念館(ソウル市鐘路区)において「第10回日本軍「慰安婦」問題解決のためのアジア会議」が開催された。

日本、韓国、台湾、カナダ、フィリピン、タイ、ドイツ、アメリカ、東ティモールから、市民、活動家が参加し、それぞれの活動報告、成果と課題が報告された。

終戦後タイに定着したノ・スボクハルモニ、韓国からはイ・ヨンスハルモニ、日本からはソン・シンドハルモニの参加と発言を受けることができた。

ハルモニたちが壇上から声を振り絞り、日本政府に対して「謝罪、補償、真実の記録」を求める姿を見て、力をもらうと同時に「高齢なサバイバーたちを、これ以上闘いの先頭に立たせるわけにはいかない!」と、わたしたちは、決意を固くした。

そのために、「できないことより、できることを提起していこう」という韓国挺身隊問題対策協議会尹美香常任代表の言葉は、参加者一同に拍手をもって受け入れられた。

今年は、李明博大統領の妨害によって、「北」共和国からの参加要請さえ、できなかった。

日・米・韓の軍事同盟によって、南北に分断された被害者たちは、被害さえも訴える機会を奪われたままだ。

日本では3月11日の東北震災、原発人災の後、「慰安婦」問題解決のための立法化活動は、中座を余儀なくさせられている。植民地支配と性支配は反省されるどころか、日本の大地に潜む毒のように、事あることにサバイバーの尊厳を蹂躙する言論となって立ち上がってくる。教科書採択でも、育鵬社、自由社の教科書採択にむけた反動攻撃が激しさをましている。

金学順さんが名乗り出てから、20年、遅々として実現しない日本軍「慰安婦」被害者への謝罪、賠償を、今度こそ、実現しなければならない。

昨年末から今年にかけ、多くのハルモニたちが逝去された。8月24日の今日、また一人韓国のハルモニが逝去されたという報告が入ってきた。これで韓国の生存者は69名になってしまったのだ。

戦時性暴力の被害とその犯罪性が歴史に記録され、謝罪と賠償が行われ、日本軍「慰安婦」問題が解決されることによって、現在もアフリカ諸国をはじめ、全世界で繰り返されている女性とこどもたちへの犯罪が、裁かれ、予防されるのである。

過去の犯罪が黙殺されることによって、現在の犯罪を可能にし、平和な未来への道が閉ざされる事を思う時、わたしたちが果たすべき責任の重さは、計り知れない。

 

第10回アジア連帯会議では、支援活動の層と世界連帯の広がりを確認できた。

状況の厳しさに屈することなく、より広範な国際連帯と強固な意志をもって、闘う決意を共有し、会は終了した。

今年の12月14日は、ソウルの日本大使館で続けられている「水曜デモ」も、1000回を迎える。

この1000回をもって、闘いが勝利のうちに終焉することを願うが、仮に困難であっても、運動のひとつのターニングポイントとするべく、各国の被害者、支援者、政治家たちの連帯をより一層ひろげ、強固にしすること、そしてこのデモを、世界的規模で実行することになるだろう。

                (vaww-netジャパン会員 M)

以下、大会で選択された「決議と行動計画」

 

 

第10回日本軍「慰安婦」問題解決のためのアジア連帯会議決議文および行動計画

 

2011年8月12日から14日まで「日本軍『慰安婦』問題解決のためのアジア連帯20年の活動の成果と課題」というテーマで、第10回日本軍「慰安婦」問題を解決するためのアジア連帯会議がソウルで開かれた。同会議には、東ティモール、フィリピン、タイ、台湾、日本、韓国などアジア諸国とアメリカ、カナダ、ドイツなど世界各地から約150人が参加し、朝鮮民主主義人民共和国は文書で参加した。タイから盧寿福ハルモニと日本から宋神道ハルモニが、韓国のハルモニたちと共に連帯会議に参加した。

私たちは第10回アジア連帯会議で、20年間の各国の活動状況を共有し、各国で、または国際連帯レベルでおこなってきた活動の成果を確認し、その成果を引き続き拡大し継承していくための方法について、真相究明、立法、国際連帯、被害者支援活動、記憶・教育活動などの領域をめぐり議論した。

金学順ハルモニが初めて日本軍「慰安婦」であった事実を明らかにし、私たちに歴史の真実を知らしめてくれた時から20年経った今日、66年間待ってきた被害者たちの20年間のたたかいにもかかわらず、依然として問題解決がなされていない現実を直視し、日本軍「慰安婦」問題解決のために、以下のように私たちの立場を明らかにする。

 

 

日本政府と日本の国会に対する私たちの要求

 

1.         日本政府は、日本軍が1930年代から日本の敗戦に至るまでの間、アジア太平洋地域の女性たちを連行、性奴隷化した事実に対して、公式に認め謝罪すること。そのために、すべての関連文書を公開し、真相を究明すること。

 

2.         日本の国会は、日本軍「慰安婦」問題に対する国家責任を認め、公式謝罪と法的賠償を実現するための特別法を一日も早く制定すること。

 

3.         日本政府は、日本軍「慰安婦」問題を否定するいかなる暴言と行動も許してはならず、これに対して公式に反駁すること。

 

4.         日本政府は、日本の歴史教科書にこの問題を正しく記載させ、現在と未来の世代に教育すること。

 

私たちの行動計画

 

1.私たちは、日本政府が被害者や国際社会の声に向き合って、一日でも早く公式謝罪と賠償のための立法を制定するよう、日本の国会と政府に向かって強力に働きかける。そのために、

 ―日本軍「慰安婦」問題解決のための日本の国会議員と各国の国会議員の交流活動を推進する。

―各国の地方議会、国会に向けた活動を精力的に展開する。

 

2.私たちは、2011年12月14日におこなわれる「日本軍『慰安婦』問題解決のための1000回水曜デモ」をグローバルキャンペーンとして展開する。そのために、

 ―世界各地の市民団体が連帯して、各国で1000回水曜デモに連帯する共同集会をおこなうよう組織する。

 ―世界各地の政治、文化、社会的に影響力のある人々が1000回水曜デモを迎えて被害者たちを激励し、日本政府に問題解決を促す連帯のメッセージを発表するよう組織する。

 

3.私たちは、日本政府に強く圧力をかける国際世論を形成するために、国際連帯を強化する。

 ―国連の各機関に、日本軍「慰安婦」問題を解決されていない人権課題として引き続き提起し、日本政府に問題解決を促すよう働きかける。

 ―ILOでも2012年総会の案件として採択、勧告が出されるようITUC、ILO労働者グループ議長に対する活動、日本軍「慰安婦」問題の深刻さに共感する国々の政府と使用者に、一層積極的に協力を要請する。

 ―国際人権団体および平和団体との積極的な連帯活動を展開する。

 

4.私たちは、アジア各国の被害者たちに対する支援を続け、特に被害国政府と国際市民社会が支援のためのネットワークをつくるよう活動する。

 

5.私たちは、日本軍「慰安婦」問題が繰り返されないよう、日本軍「慰安婦」の歴史を記憶し、未来の世代に教育する。そのために、

 ―日本の歴史教科書に日本軍「慰安婦」記述が復活するよう活動する。その一環として日本政府に検定・採択制度の改善を要求する。

 ―各国の制度教育に対する介入、監視活動をおこない、アジアと世界各国の歴史・人権教科書に日本軍「慰安婦」問題が記録され、未来世代に教育がおこなわれるように活動する。

 ―民間レベルの代替教材を冊子、DVDなどで製作し、各国語で普及して歴史・人権教育に活用する。

―日本軍「慰安婦」を記憶し教育する博物館、アーカイブ、歴史館、追悼碑などの施設を建設する活動を支援し、世界各地で活動している女性人権、平和問題関連の博物館や教育施設とネットワークを形成して活動する。

 

6. 私たちは、現在も続いている戦争と武力紛争下で人権を蹂躙されている女性の問題に積極的な関心を持って支援し連帯する。

 

2011年 8月 14日

第10回 日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議参加者一同