「たちかぜ」東京高裁控訴審(第3回弁論)参加記

●「たちかぜ」第3回控訴審・東京高裁

2012123日に東京高裁で「たちかぜ」控訴審の第3回目の弁論がもたれ、神奈川・栃木など各地から60人が支援に駆けつけた。今回、支える会は33692筆の署名を提出した。前回の提出分の8240筆とあわせると41932筆分の提出となる。

控訴審では、原告側は自衛隊が暴行自殺事件を調査して出した「一般事故調査結果」が自衛隊側に都合よく作為されていることを問題にしている。

控訴審の第1回の弁論は105日にもたれ、原告の母・姉が意見陳述をおこなった。原告側は1012日には求釈明申立書を出し、事件後に「たちかぜ」でなされた「艦内生活実態アンケート」の提出を求めた。それに対して、国は申し立ての却下をもとめる意見書を出した。 

1114日の第2回の弁論では、原告は「証拠説明書」を出して「艦内生活実態アンケート」と起案用紙などについて説明した。さらに1226日に原告側は「準備書面2」を提出した。この書面では、加害行為と自殺との因果関係を断ち切るために「一般事故調査結果」が作り直されたとし、「艦内生活実態アンケート」も加害と自殺の因果関係を断ち切るために廃棄されたとした。自衛隊では、新たに2回目の「答申書」が誘導されるなかで作成されたことも明らかになっている。

このような経過をふまえ今回の弁論では、原告側の「準備書面2」を中心にやり取りがなされたが、裁判長も国側もふがいない対応だった。結局、国側は224日までに反論の準備書面を出すことになった。

今回の弁論では裁判長の要をえない発言が目立ったが、早期の結審をねらうような言質もあった。そのため、きちんと証拠調べをさせて裁判の勝利に繋げることが課題となっている。

 弁論の後に、裁判の報告集会がもたれた。原告側の弁護士が、アンケートを1年未満の文書を口実に廃棄したとしていることを批判した。また、被害者は恐喝され、暴力を振られているなかで自殺したのであるから、「予見可能性」の議論なしで相当因果関係があるのであり、賠償すべきとした。

●「自衛隊内部の人権侵害を問う1.23集会」

 報告集会の後、続いて「自衛隊内部の人権侵害を問う1.23集会」がもたれた。参加は60人。集会では大倉忠夫代表のあいさつの後、支える会の木元さんが作成した映画『自衛官人権裁判の歩み』が上映された。

上映後、自衛隊の人権について、「たちかぜ」裁判の岡田弁護士、浜松裁判の塩沢弁護士、横須賀の市民運動の新倉さんから問題提起がなされた。

岡田さんは、自衛隊裁判ではすべての情報を自衛隊が握っていることの問題点をあげ、「たちかぜ」事件の自己調査報告書が作りなおされた経緯を示した。また、支援の力で隠された情報を引き出していったことも紹介した。さらに「自衛官と憲法9条」という切り口の重要性を話し、自衛官の人権保障を突きつめれば、人間は殺せない状況になると提起した。

塩沢さんは、裁判官に事実を示し、1審の不当判決の問題点をあきらかにしたいとし、浜松での6.4全国集会の内容を紹介し、自衛官人権裁判の状況をまとめた報告集を出版する予定であるとした。さらに全国各地での自衛官人権裁判の状況を示し、日米安保の破棄を考えること、自衛官の人権問題を考えることの重要性を語った。

新倉さんは、自衛官・市民ホットラインや自衛官・兵士への呼びかけの体験を話し、海外派兵の時代での兵士に直接訴えること、自衛隊を災害救助中心とする組織にすること、派兵の時代に自衛官の声を受け止める平和運動をおこなうことなどの課題をあげた。そして「戦争をするために自衛隊に入ったのではない」という自衛官の声を受け止め、3.11を経て、「第9条が自衛官の命を守っている」から、「自衛隊を第9条の道に返す」運動にむかうことを提起した。

問題提起の後、「たちかぜ」裁判の西村、田渕弁護士があいさつし、最後に「たちかぜ」、「さわぎり」、浜松の原告からの訴えがなされ、裁判勝利への意思を分かちあった。