2012年6月8日、野田首相は大飯原発を再稼働すべきと記者会見、国会前では集まった市民が「再稼働阻止」のコールを繰り返した。



日本国首相様                      
20126月11日

                              人権平和・浜松

      大飯原発34号機の再稼働計画の中止を求める要請書

 

 201268日、野田首相は記者会見を行い、「大飯原発を再稼働すべき」と発言し、今週には再稼働にむけて「関係閣僚による政治判断」をおこなうといいます。私たちはこのような再稼働計画の中止を、ここに強く求めます。首相は再稼働を撤回するという意思表示を早急に行うべきです。

私たちは浜松で浜岡原発に反対して活動してきました。それは、原子力発電が核開発の副産物でありその平和利用はいつわりであること、原子力発電により地域が金と権力によって支配されること、巨大な東海地震により大事故を起こしかねないことなどの理由からです。          

しかし、地震による大事故は、実際に3・11に福島第1原発で起きてしまいました。この3・11事故により、私たちは反原発の意思を再度確認し、浜岡原発の廃炉の声を地域であげてきました。昨年5月には政府の要請によって浜岡原発は停止され、自治体の長や議会の中からも永久停止や廃炉の声が出るようになりました。現時点では浜岡原発の再稼働はありえない情勢となっています。

この1年の情勢は、世論調査で8割の市民が原発の停止や廃炉を求めるというように、多くの市民に反原発・脱原発の意思を形成してきました。3.11以後、「核と人類は共存できない」「原子力は民主主義と相いれない」「地震の国に原発は無理」といった言葉が、多くの市民に共有されるようになりました。これらの言葉は3.11を経るなかで市民社会が再確認した教訓と考えます。他方、政府の語る「安全」や「基準」はまったく信用されなくなりました。

現時点で政府がなすべきことは再稼働ではありません。

まず第1に、事故の真実を市民に示すことです。福島第1原発1号機、2号機、3号機、4号機燃料プールなどの事故の実態が、いまも市民に十分に示されていません。大量の放射能汚染の実態さえ把握できず、福島の市民には避難の権利が認められていません。情報の操作、隠蔽をやめるべきです。例えば、福島第1原発1号機の水素爆発が地震による配管損傷が原因であることを認めるだけでも、津波だけの応急対策では安全につながらないということになります。4号機プールが崩壊すれば、燃料棒が青空で燃焼するという人類が体験したことのない重大事故となって日本は終わると言われ、関西方面も含む巨大地震がおきるとも言われています。そのようなときに「再稼働」などすべきではありません。

第2に、今回の事故の責任を明らかにし、処罰することです。ドイツの国営放送では東電は「犯罪企業」と名指しされています。政府はそのような認識を持つべきです。東電は重大事故を隠し、知事の更迭をも画策し、想定されていた事故の対策も取らずに、政府・官僚・学者の原子力の利権構造が形成されるなかで、莫大な利益をあげてきました。そのような利権行動と体質が今回の事故をもたらし、汚染され居住できない地域と住民の離散を生みました。それは重大な人権侵害です。企業と政治によるこのような重大な人権侵害をもたらした犯罪行為に時効はありません。その責任を追及し処罰することが再発防止につながります。

第3に、市民の生命を守ることです。その観点から福島をはじめ汚染地域からの避難をすすめるべきです。安易な帰村宣言や除染は市民の被曝を深めるだけです。政府による「冷温停止状態」や「収束」といったごまかしの発言は撤回し、汚染の実態をきちんと説明すべきです。がれきを全国に送って焼却するような政策も中止すべきです。汚染があるものは現地に留め置き処理する、がれきの広域移動はしないという原則を確立すべきです。政府・環境省によるがれきの移動が各地に混乱を招いています。また、そのような処理は日本の信用をさらに失墜させています。すでに福島の子どもたちに甲状腺の異常が出はじめています。4000度を超える高熱で気体化した放射性物質の雲が渦巻くように日本列島をなめ、海を汚染しました。そのことによる重大な結果に私たちは長期に渡って付き合わざるをえないのです。政府は姿勢を根元から変え、市民の生命を守るという姿勢を取るべきです。

野田首相は5月8日の記者会見で、「原発を止めれば生活は立ちいかない」「国民の生活を守るため」「豊かで人間らしい生活を送るため」に「再稼働すべき」といいました。しかし、生活よりも、財産よりも、生命が大切です。生命を守ろうとするから、原発の是非が問われているのです。電気よりも命です。原発なしでも人間らしい生活はできます。

「炉心損傷は起きない」「安全性も確認」ともいいました。地震や事故対策用の免震施設や除去フィルターの設置ができていないのに、どうして安全を確認できるといえるのでしょうか。現時点での再稼働はあり得ないはずです。そもそも「政治判断」で再稼働するというやり方自体が、再稼働させるために作為されたものにすぎません。

このような首相の発言や日本の政治風土の問題点は、海外にすぐに報道されます。ますます日本の政治は失笑を買い、信用を失います。6月8日、首相官邸前で首相の会見を聞いていた市民の中からは、「再稼働阻止!」の激しいコールがはじまり、「恥を知れ!」、「あなたに私の命を預けたつもりはない」、「子どもを守れ」、「市民の声を聞け」、「これ以上の汚染はごめんだ」、「一時の金のために国土を無くすつもりか」とつぎつぎに声があがりました。このような主権者である市民の怒りを首相は知るべきです。それは怨念のように渦巻き始めています。   

首相が日本の政治の名誉を回復する道は、6.8会見での再稼働方針を撤回することです。そうすることが首相の良心を示すことになります。そのような行動は「原子力ムラ」と呼ばれる日米の原子力の利権構造への屈服を拒んだ志ある政治家として評価されるでしょう。

私たちは、ここに再稼働計画の中止を求め、首相が再稼働撤回の意思表示を早急に行うことを求めます。