7・16さようなら原発10万人集会報告

 

2012年7月16日、東京の代々木公園で「さようなら原発1000万人署名市民の会」の主催による「さようなら原発10万人集会」がもたれ、主催者発表で17万人が参加した。警察発表では7万5千人と少なくされているが、会場周辺には人々があふれるという状況であり、集会名のように10万人余が全国各地から結集したということができる状況だった。静岡の平和運動センターと浜岡原発を考える静岡ネットのデモ隊も1000人ほどの市民の隊列になった。

 3・11の福島での原発震災以後、政府は事故の真相を把握することはできないまま、事故の「収束」や「安全」などを宣伝してきた。他方、放射能汚染はいっそう拡大し、「がれき」の広域処理までもが強行され、汚染物質が全国に送り出されるに及んでいる。さらに原発の輸出を計画し、国内では大飯原発の再稼働を始め、伊方をはじめ各地の原発の再稼働もねらわれている。その中で毎週金曜日には、国会首相官邸前に10万を超える市民が繰り出し、再稼働反対のアピールをくり返すに至っている。今回の集会はそのような情勢のなかでもたれている。

 メイン会場では集会呼びかけ人が、政府による原発政策の侮辱と野蛮の実態を語り、再稼働に反対し、原発のない社会に向けての行動を呼びかけた。「もう原発はいらない」、「再稼働などもってのほか」、そのような発言に会場からの共感の拍手と声が大地に響く。メイン会場以外にも集会場が設営され、会場には入れない人々へと各所で訴えがなされた。コンサートでは「原発はいらない」「足りないのは電力ではなくて、愛だ」といったメッセージが表現された。

  

「立ち上がり声をあげよう」、「命を守ろう」、「この国を変えることができる」、「本当に怖い」、「広島、ビキニ、チェルノブイリ、フクシマ、もうたくさんだ」、「核の文化・社会を変えよう」、「原発の息の根を止めよう」、「人々のいのちの叫び、魂の声を聞け」、「大切なものは電気よりも命」、「ひるまずに闘おう」、「このままでは子どもたちが生きていけない」・・、さまざまな声が、会場にはあった。

  

原発の再稼働は利権のために、市民の命を博打に賭けるようなものである。このままでは殺されてしまう。そう感じた人々が政治党派や階級を超えて結集している。

原発反対署名は750万人を超えた。しかし政府は原発推進、再稼働を止めようとしない。それほどまでに原子力を含む日米の軍事的な同盟関係、企業利権が強いということを示している。この政治的社会的利権構造を変えなければ、原発のない社会は実現しないことも明らかになってきた。

7月16日、炎天下のなか全国各地から人々が集まった。参加者ひとり一人にこの原子力を推進する政府の野蛮と侮辱への強い怒りと反・脱原発への熱い思いがある。

参加者ひとり一人が10万人集会という歴史の場にいることを確認し、その思いが交差した。集会場は民衆がその力を発揮する時が来ていることを確信できる場でもあった。

大切なものは命だ、愛だ、と人々が自らの身体を以て、この歴史を動かそうと権力に対抗して行動を始めている。今回の10万人集会はそれを象徴するものだった。 

前日の15日には、再稼働阻止全国相談会や反原発新聞の全国交流集会などがもたれ、全国各地から報告がなされた。福島現地での民衆の権利の確立、反原発・再稼働阻止の運動の全国的なネットワークの再構築、焦点となっている大飯や伊方での再稼働の中止・阻止、官邸前の行動などの運動の高まりと新たな政治的、社会的な勢力の形成など、多くの課題が示された。

歴史的な変革期にどれだけのものを確立し、獲得できるのか、権力の野蛮と侮辱に抗し、原発のない社会をめざす者一人ひとりが、何をするのか、何ができるのかが、いま、問われている。 (竹)