第6回強制動員真相究明全国研究集会報告
2013年3月30日、東京で第6回強制動員真相究明全国研究集会が「強制動員真相究明の到達点と今後の課題」をテーマに開催され、100人が参加した。
集会では、韓国と日本での研究の現状と課題、日韓会談での研究の現状と課題についての報告がなされた。各地の活動としては、奈良、滋賀、長野、強制動員被害者補償立法、浮島丸、「慰安婦」、海軍軍人軍属資料、山口の長生炭鉱、北海道などからの報告があり、浅川地下壕をテーマに旧日本軍地下壕についての案内もなされた。
韓国からは金廣烈さんが「韓国における戦時期朝鮮人強制動員の研究動向と課題」の題で報告した。金廣烈さんは1980年代から現在に至る韓国での労務動員、兵力動員、補償・残留遺骨問題、女性性搾取の順に強制動員関係の論文や著作を紹介し、韓国で強制動員被害真相糾明委員会が発足した後に、資料を活用しての研究が活発になされるようになったとした。そして、今後の課題としては、名簿研究から動員主体別、産業別の特徴を押さえること、強制動員を日本帝国による植民地支配のなかに位置付けて批判すること、朝鮮駐屯軍による動員の実態解明、戦争の無謀さを暴く視点での研究、企業別の動員の特徴の把握、戦後補償をめぐる日韓の交流史への注目などをあげた。
日本の現状と課題については研究史、強制連行者数、課題などが示された。
日韓条約については太田修さんが「日韓会談研究の現状と課題―『請求権』問題を中心に」の題で、日韓請求権協定での「請求権」が、支配を適法とみたうえで、日韓間での領土分離の際に国の財産及び債務の継承関係から生じた「請求権」として捉えられていたとし(「分離論」)、植民地支配の責任や罪を問うものではなかったことを指摘した。また、その「分離論」により、韓国側が被徴用者の未収金や被徴用者の被害に対する補償について求めた際に、日本側が、法律関係では植民地支配に対する被害補償を認めず、事実関係については韓国側に被害の提出を求めるという対応であったことを示した。そして、植民地支配を反省・謝罪するとした村山談話以後も続く「日韓条約で解決済み論」の矛盾を指摘し、強制動員への補償は未解決であるとし、真相究明と責任追及、記憶の継承などを提起した。
各地の報告では、韓国の委員会との交流によって得た資料を使っての滋賀、北海道、長野、奈良、山口など現地調査の報告が目立った。また、韓国からの海軍軍属史料の分析紹介も今後が期待されるものだった。今後とも、市民間のいっそうの共同作業が必要である。
翌日には、八王子の浅川地下壕のフィールドワークがもたれた。浅川地下壕は地下倉庫として建設が始まり、中島飛行機武蔵野工場の疎開工場となったものであり、建設を佐藤工業と大倉土木が請け負った。朝鮮人飯場の跡地や巨大な地下壕の一部のなかを歩き、発破やトロッコの跡などをみた。当時の労働の現場に立ち、その歴史を考えることができる企画だった。