ティモシー・ムソー浜松講演
2013年7月23日、サウスカロライナ大学のティモシー・ムソーさん浜松が「チェルノブイリから福島へ ツバメたち動物が教えてくれたこと」の題で講演し、70人ほどが参加した(主催は春を呼ぶフォーラム)。ムソーさんは生物生態学者であり、2000年からフランスのアナースメラーらとチェルノブイリ原発事故によって放出された放射能の鳥類・昆虫類、人間への影響について研究し、放射能が生育や遺伝にマイナスの影響を与えていることを実証してきた。2011年7月からは福島原発事故による影響の調査に入っている。
HPはhttp://cricket.biol.sc.edu/Mousseau/In_Japanese.htmlにあり、今回の報告で紹介された地図などが収録されている。以下は、ムソーさんの報告の概要である。
チェルノブイリ事故での高汚染地域での400地点、1100の事例の調査から次のことが分かった。それは、被曝に正比例して遺伝子損傷率が上昇する、奇形率や発育以上が上昇する、出生率が低下し、寿命が短くなり、個体群の規模が縮小している、生物の多様性が縮小する、突然変異が次世代に伝えられる、突然変異が汚染地域から被曝していない固体群に移動していることなどである。ツバメでは、精子の損傷が多く、頭部で部分白化がみられ、尾羽の湾曲や不均一、くちばしの変形などの発育異常が発見された。他の鳥の調査では、目のまわりの腫瘍や小頭、白内障などがみられた。
国連のチェルノブイリフォーラムでの報告書では、動植物の個体群が拡大し、生物相に良い条件を与えているとし、人間疾病の理由を主としてストレスとしている。しかし、そこには、それを支持する量的なデータはなく、個体群と生態系への損害に関する問題意識がない。実際には鳥類の個体数は66%も減少し、ハチや蝶、クモの昆虫類や哺乳類などの個体数も、放射線の影響で減少している。チェルノブイリは「野生動物の天国」などではない。
福島での鳥類や昆虫の状況はどうだろうか。2011年7月から鳥類と昆虫の調査、2012年5月からツバメの生殖、生存、遺伝子損傷の調査を始め、今月からは小型哺乳類の個体数と遺伝子損傷の調査を始めた。この調査には研究費がほとんどつかない。このなかで部分白化やDNAの損傷が明らかになっている。福島の鳥類の被曝量はチェルノブイリよりも大きい。2012年の被曝量は2011年よりも上昇している。昆虫ではクモが減少している。ツバメなどの鳥や動物たちからの警告から人間は学ぶべきである。死んだ毛虫たちのすがたは、多くの動物たちが絶滅するという兆候とみるべきだろう。(以上概要)
このように、ティモシー・ムソーさんはチェルノブイリと福島の真実を示した。
ムソー講演の後、金谷節子さんが生体防御のためにORAC(活性酸素吸収能)を摂取することをすすめた。続いて、浜松城公園の移植芝生の問題、学校での教育実践、浜松での放射能測定活動などでのアピールが続いた。
話を聞きながら、2012年12月、『調査報告チェルノブイリ被害の全貌』の著者アレクセイ・ヤブロコフさんが来日した際のメッセージを思い出した。ヤブロコフさんは、事故による血液・循環器系、内分泌系、免疫系、呼吸器系、泌尿生殖系、骨格系、中枢神経系、眼球などの疾患の増加や乳幼児、染色体などへの影響を示し、低線量でも被曝が何年にもわたることによって人体に大きな影響を与えるとした。そして、日本でも今後、同様の被害がでるとし、原子力産業は原子力発電によって地球を危機に陥れることもいとわないものと批判したのであるが、最後にこう語ったのである。
「皆さんは真実のために、健康のために、原子力をなくすために闘わなくてはならない。政府と闘わなくてはならない。なぜなら政府と原子力産業はあらゆるところで、私の国だけでなくすべての国で、アメリカで、ここ日本で、データを隠ぺいしようとするからである。原子力産業と政府は、人々を恐れている。真実を恐れている。なぜなら真実はとても不愉快なものであるからだ。真実とは、原子力技術は恐ろしく危険であり、コストは異常に高く、プラスよりもマイナスばかりということである」と。
放射能汚染の実態、その真実をあきらかにして、政府の安全宣伝を撃ち、反原発の活動をいっそう強めていこう。 (T)