10・14「反日判決なのか?
7・10ソウルー7・30釜山判決を考えるシンポジウム」
2013年10月14日、東京で強制労働被害補償立法をめざす日韓共同行動の主催による「反日判決なのか?7・10ソウルー7・30釜山判決を考えるシンポジウム」がもたれ、110人が参加した。7月に韓国での強制労働判決で原告側が勝訴し、それに対して日本のマスコミは日韓合意に反する不当判決、反日判決などと批判する記事を書いた。今回のシンポはそのような動きに抗して、この判決の歴史的意義、判決の本質を明らかにするために開催された。
集会では新聞記者の五味洋治さんが、日韓のすれ違いの原因、「上から目線の」の安倍政権による対韓国認識の問題点、トップが会えないために課題がたまるばかりという日韓外交現場での焦りなどについてふれ、今回の判決の誤解を解いていく必要性を話した。五味さんは誤解の例として、司法が世論に流されている、憲法裁判所は左派が判事である、判決は日本の戦後処理を否定するもの、個人の請求権は消滅している、歴史認識というがその内容があいまいといったものをあげ、その克服を語った。
この発言を受け、弁護士の張完翼さんが、大法院判事のうち、左派とされる判事は5人であるが他の7人は進歩的ではないこと、2012年5月の大法院判決を書いた金能煥主審判事は左派ではなかったことを示し、判決は関連する資料を十分集めて記されたものであるとした。また、「反日」と決めつけることで個別の事件の歴史的な真実が見逃される危険性や日本日本政府による法的義務はないとする主張が、請求権の消滅を印象付けるものであると指摘した。そして、問題解決のためには韓日両政府と連行被害者、日本企業などの当事者が集まって真摯に議論して合意案を作るべきとした。
日韓会談文書を研究している吉澤文寿さんは、問題の背景に朝鮮人の戦争被害の問題が東京裁判や日韓会談で十分議論されなかったこと、韓国政府による補償措置も不十分であったことあるとした。また、大法院判決は、日本企業による強制動員など植民地支配に直結した不法行為への賠償を、請求権協定の対象外とするものであり、7月の判決はそれを受けて出された。これらの動きは日韓請求権協定の見直しにつながるものとした。そして、日本が請求権関係の文書を全面公開し、強制労働問題の解決に向けて活動することが有益な結果をもたらすと指摘した。
弁護士としてこの問題に取り組む川上詩朗さんは、大法院判決や7月の判決は、戦争などに起因する重大な人権侵害に対して個人の尊厳を重視し、その救済を図るべきとする国際人権法・国際人道法の発展の方向性に合致するものであり、重大な人権侵害による個人の損害賠償請求権は国家間の合意によって消滅されることはできないとした。そのうえで、日本政府は請求権が消滅したとは明言せずに、法的義務が存在しないと述べていると指摘した。そして、「法的解決済み論」の欺瞞を暴露し、被害と加害の事実を確認し、日韓両政府が問題解決に向けて協議のテーブルにつくべきとした。
このような問題提起とともに、10月4日に光州で開かれた名古屋三菱裁判の原告の法廷証言などの様子なども報告された。
日韓請求権協定での5億ドルは、日本政府による経済協力での生産物や役務であり、被害の救済に充てるものではなかった。加害企業は請求権協定による経済協力でも利益をあげ、被害者の尊厳回復は放置されたまま、現在に至る。
2012年大法院判決、13年7月の判決は、そのような過去の清算のはじまりである。重大な人権侵害に対して、個人の尊厳を重視してその救済を図るという国際的な人権の動きのなかで、強制労働の歴史的事実をふまえて、その強制労働の被害の救済に向けて包括的な解決をめざすときである。被害者による不屈の闘いが、被害救済・尊厳回復の扉を開けようとしている。両政府の決断と多くの市民の理解と協力が求められる。 (竹)