20131211日「たちかぜ裁判」控訴審証人尋問報告

律義な ほんとうに律義な

 ほんとうに貴重な「証言」を私は聞くことができた。20131211日の「たちかぜ裁判」控訴審での現職幹部自衛官Sさんの証言だ。証言台に立った小柄なSさんは終始姿勢を崩すことなく裁判官に視線を向け淡々と証言したのが印象的だった。

Sさんが海上自衛隊幕僚幹部法務室に勤務したのは20084月から8月までの5カ月間だった。この間「たちかぜ裁判」が提訴され法務官として「たちかぜ裁判」を担当することになった。そして原告から開示請求されている「艦内生活実態アンケート調査」の存在を知ることになる。国側に不利な証拠を隠し、ないものと強弁する自衛隊の対応にSさんは不信を感じ、転任になり担当を離れた後も苦悩し続けた。そして「公益通報制度」を使い隠されている証拠の「艦内生活実態アンケート調査」のファイルが存在することを告発した。しかし、それでも公開されことなく、2011123日の横浜地裁判決を前にして意を決して行動に出た。判決30分前、情報公開担当のN二等海佐に「艦内生活実態アンケート調査」を出すように説得しようとしたのだ。

説得は無視され、Sさんは悩みに悩んだ末、職を賭して次の行動に出る。「たちかぜ裁判」の岡田弁護団長に手紙を書いたのだ。裁判は新たな展開を始める。破棄されたことになっていた「艦内生活実態アンケート調査」の存在を隠しきれなくなった自衛隊は存在を認めざるを得なくなった。こうして一審の国側の指定代理人であった現職の自衛官が控訴審の証言台に立つことになった。

「民主主義国の実力部隊の一員として防衛秘密と国民の知る権利のはざまで苦悩する」(Sさんの証言から)一人の自衛官は隊内の事実を隠し組織防衛に走る不誠実な自衛隊の対応を告発し淡々と証言した。Sさんには「律義」という言葉がよくあてはまる。この誠実な律義な一人の自衛官を自衛隊は懲戒処分しようとしているという。特定秘密保護法が成立した現在、ただでさえ組織に不利な情報は隠そうとするこの国の官僚機構はさらに闇の中に隠れていくことだろう。

今日のSさんの証言は「民主主義国の実力部隊」に今も多くの誠実な「良心」が存在していること確信させた。そしてその「良心」を圧殺させてはならないこと、それは私たちの義務でもあることを強く感じた法廷であった。

次は1216日、国側の2人の証人が証言台に立つ。

                        (1211日夜、M