安倍政権とアベノミクスの罪   白川真澄浜松講演会2015.2.22

 

2015222日、ピープルズプラン研究所の白川真澄さんを講師に「安倍政権とアベノミクスの罪」の題で講演会をもった。以下は、その講演の要約である(文責、人権平和・浜松)

 

安倍政権とアベノミクスの罪   白川真澄

 

浜松のみなさん、こんにちは、白川です。きょうは「安倍政権とアベノミクスの罪」という題で、お話ししたいと思います。

●安倍政権と改憲策動

はじめに、安倍政権の特徴をみておきましょう。安倍政権は戦後日本国家の良い要素をことごとく破壊しようとしています。

まず、憲法の立憲主義・平和主義を破壊し、戦争ができるようにしています。また、侵略戦争と植民地支配への反省を否定し、旧日本帝国を継承するという歴史認識です。さらに経済成長を復活させるとし、それをアベノミクスと称し、量的緩和、財政出動、大企業の利益優先の政策をすすめています。そして、行政権力の独裁化をすすめ、メディアへの統制を強めているわけです。

改憲では、2016年の参議院選挙での3分の2の議席確保を狙い、それを以て改憲をすすめようとしています。改憲では、段階的に進めることをねらい、1回目では、緊急事態条項・財政規律条項・環境権などを入れて改憲するとしています。この緊急事態条項は、国家緊急権とされる条項であり、例外事態での憲法停止の権限を首相に与えるという危険なものです。

安倍政権は9条改憲の前に、20147月、集団的自衛権の行使を認めるという憲法解釈を閣議決定しました。安倍は「積極的平和主義」を主張していますが、彼の主張の危険性は「イスラム国」による日本人拘束事件で明らかになりました。日米同盟の強化、有志連合への参加の動きが新たな危機を生んでいます。侵略戦争や植民地支配を認めようとしない安倍の歴史認識は日中・日韓関係を悪化させます。それはアメリカの戦略をも踏み破る行為になります。

●アベノミクスの罪

アベノミクスの過酷な実態も露呈してきました。就業者が100万人増加したと宣伝していますが、非正規雇用の増加です。物価が上昇し、それに賃上げが追い付いていませんから、家計の消費支出はマイナスです。景気も回復していません。

アベノミクスの最大の罪は、格差のあからさまな拡大です。景気回復の実態は、株高の進行です。株高は、個人の金融資産を1年半で93兆円も増やしました。20146月には個人の金融資産が1600兆円を超え、過去最大になったのです。しかし、株を持つ人は11%ですから、大多数の人々には、株高は恩恵をもたらしません。

金融資産が1億円以上の富裕層は、2013年までの2年間で2割増えて、100万世帯になりました。他方、金融資産ゼロの世帯(2人以上世帯)は、2010年の22.3%から2013年には31%となり、過去最大になっています。非正規の増加により、労働者内部の賃金格差も拡大しています。

大企業の利益増大により、2013年度に1億円以上の役員報酬を受けたのは189社の360人と、前年より2割増加しています。他方、年収200万円以下の労働者は1120万人に増加しました。

アベノミクスとは、大企業が利益を上げ、その利益が従業員、さらに中小や非正規に還元され、消費も活性化され、売り上げも上がるというものですが、そのようなトリクルダウンは起こらないでしょう。20153月期の上場企業の経常利益は30兆円を超えると予想され、企業の内部留保は20143月で328兆円、資本金1億円以上の大企業では206兆円に及びます。

しかし、株高、企業の利益の増加と実体経済の足踏みとが同居しています。GDPや売上高、営業利益は横ばいなのです。その理由には、グローバル化により、生産拠点の海外移転がすすみ、グローバル市場に直結する経済圏と国内市場を中心とするローカルな経済圏に分断されたことがあります。地方に仕事が回らない状況なのです。

また、非正規雇用は2000万人を超え、労働者全体の4割にまで急増しました。企業の利益の賃上げは大企業の正社員に限られたものになります。企業利益の増加は、非正規の賃金上昇や雇用の拡大につながっていません。安部は分配よりも成長をすすめていますが、それが、格差を拡大しているのです。富裕層への課税が求められます。

 ●オルタナティブへ

 このような安倍政権の経済対策に対して、オルタナティブとして、賃金引き上げと社会保障による消費の拡大がありますが、ライフスタイルへの批判力にかけるという点が問題です。人への投資による成長という提案もありますが、雇用の拡大にはつながりません。

 もう一つのオルタナティブとして、脱成長経済に向かうことがあります。これはローカルからの社会と経済の再生を最優先するものであり、生産性の低い部門で、雇用の拡大を目指すものです。社会保障の財源の確保、貿易や投資での国際関係の確立などに課題があります。

安部政権は「自信を取り戻す」という宣伝をし、侵略戦争や植民地支配という歴史認識を否定しています。しかし、このような主張は国内で通用しても、国際的には通用しません。改憲もアジアから警戒心を起こします。トリクルダウンも起きませんし、アベノミクスは破たんするでしょう。

このような政治の動きなかで、改憲・平和主義の破壊をはばむ運動とアベノミクスによる格差拡大とたたかう運動をつくることが求められます。歴史認識、平和主義、格差と貧困、原発などの領域での活動をすすめ、地域での無数の実践をつなげ、新たな政治勢力を形成していくことが課題です。