袴田巌さんに届けられなかった1万3000通の手紙
5月3日、袴田巌さんに送られてきた手紙の整理がおこなわれた。拘置所に送られてきた手紙は1万3000通ほどであり、アムネスティの呼びかけによる海外からの手紙が1万2000通を超える。
これらの手紙は拘置所で留め置かれ、巌さんには手渡されなかった。死刑囚だった巌さんへの手紙の交通権は制限され、手紙は拘置所が認めた数人分のものだけが渡されていたのである。
海外からの手紙の内訳は、イギリスの5000通をはじめ、スペイン、オランダ、デンマークなどが多い。ほかにもチェコ、ドイツ、オーストリア、アイルランド、フランスなど各地にわたり、パラグアイ、台湾、韓国などのものなど計25か国分があった。
日本からの手紙には、永山則夫さんが拘置所から送ったものや、静岡の救援会をはじめ、埼玉の中学生の絵入りの葉書などもあった。
これらは、読めば、生への意志と勇気を自覚させるものである。手紙の束を見て、外部との交通権の遮断は、死刑囚から生への意志と勇気をうばうためになされているように思った。それは、人間の関係性を断ち、その尊厳を破壊する仕打ちであったのだ。
そのようななか、巌さんは自らの内面に「巌の勝利を約束する神の国」をつくりあげ、その中に自らの精神を閉じ込めることで、拘置所の迫害から精神をまもり、体調を歩くことで維持し、生き抜いてきたのだろう。解放され、穏やかな人間関係をえることができても、40年近い拘束のなかで形成された内側の空間から、巌さんの精神が解放されるには、まだ多くの時間が必要なのだろう。
スペインの袴田巌支援の葉書は、黒紫の星空の中を、誕生を祝う雪に輝く世界に向かい、裸の人間がはしごを登り続けていくというものだった。体は解放されても、魂の旅はいまも続く。この葉書に思いをはせ、FREE!HAMAMADAのインスタレーションを構成した。
浜松救う会芸能部