5・3静岡憲法講演会 纐纈厚「集団的自衛権容認の深層」

 

2015年5月3日、静岡で憲法フォーラムがもたれ、纐纈厚さんが「集団的自衛権容認の深層」の題で講演した。集会は、しずおか憲法9条を擁護し実現する会が主催し、230人が参加した。

纐纈厚さんは「集団的自衛権容認の深層 安倍政権と「戦争国家」日本の道を阻むために」と題し、つぎのように話した。

安部政権は、長年、違憲とされてきた集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をおこないましたが、それは憲法違反であり、許されないものです。それは戦後の疑似民主主義的な憲法体制を、国家主義的なものへと転換するものといえるでしょう。

この決定により、日本が矛になって、アメリカを守るという関係になる可能性が出てきました。盾から矛に変わるわけです。日本国憲法第9条があることにより、自衛権を認めるとしても、それは非武装自衛権であると解するのが妥当です。政府はこれまでは個別的自衛権を保持するとしてきましたが、昨年の閣議決定により、政府が集団的自衛権を認めるようになったのです。

この決定と安保法制により、青年層がイスラム国への戦争に駆り出される可能性、そして、徴兵制復活の可能性も出されています。

安部政権による国家改造計画がすすんでいます。アメリカのために海外で戦争を実行できる国にするために、憲法を変え、「国防軍」を創ろうとしています。アメリカの覇権主義と共同体制を敷く国家をつくろうとしています。特定秘密保護法は、日米同盟の深化により増加することになった、アメリカからの秘密情報を保護することが最大の目的です。情報の統制にも使われます。国家安全保障会議[日本版NSC]をつくることで、外交防衛に関する情報の一元的管理・指導がすすめられています。また、文民統制を空洞化させ、軍人による統制をねらっています。ガイドライン再改訂では、中国を正面に据えることになり、日本が対中国戦略の最前線に立たされるのです。日本が中米戦争の肩代わりをさせられます。

これまで安部政権は、大本営政府連絡会議の現代版である国家安全保障会議の設立、特定秘密保護法の制定、靖国参拝、内閣法制局長官の交代、ガイドラインの再改定などをおこない、さらに自衛隊法などの関連法の改定、国家安全保障基本法や海外派兵恒久法の制定、靖国神社国家管理法案の再提出、教育での愛国心の強要などをねらっています。

安部のいう「積極的平和主義」とは、集団的自衛権行使をおこなうなど、軍事国家化を正当化するためのものです。あべの積極的平和主義の英語訳は、Proactive Contributor to Peaceとしていますが、このProactive は軍事用語では「先制攻撃」を意味します。先制攻撃を辞さないという意思を世界に表明しているわけです。

戦後憲法体制では、日本人は主体性をもたずに、民主主義を得てきました。ファシズム型独裁政治への抵抗感が希薄なわけです。現在、「橋下人気」のように劇場型民主主義が跋扈しています。それにメディアが便乗しています。政治責任の意識が希薄であり、その裏返しが独裁者や英雄への賛美となります。それは、他者依存型の思考様式です。このなかで、青年層には既成の秩序や価値観念を打破するために戦争を含む暴力への肯定感が強まっている傾向があります。強き者への従属に喜びを示す人々も存在します。

安部は中長期的にはアメリカからの自立を模索しているようです。しかしそれは過去の侵略戦争を反省することなく、平和憲法を変え、軍事力を担保にして自立するというものであり、わたしたちの求めるものとは逆の方向です。

本来護憲とは、政府に憲法を守らせるという運動です。その視点が護憲運動には弱かったのです。憲法の改悪がねらわれている現在、市民の平和運動の団結と勇気が問われています。新たな護憲運動、憲法を守りぬき、生かしぬき、そして守らせぬくという運動をすすめましょう。

このような問題提起を受け、活発な討論がなされ、集会後の有志の交流会も、大いに盛りあがった。                              (T)