6・9浜松集会 安全保障法制の問題点

 

201569日、浜松市内で池田五律さんを講師に「安全保障法制の問題点」をテーマに集会を持った。講演の後、討論がなされた。その後、「戦争は平和だ ニュースピークの歌」が紹介され、最後に安保法制関連法案の撤回を求めるアピールを採択した。 

以下は池田さんの話のまとめである。

 

安全保障法制の問題点             池田五律さんの話

いつでも、どこでも自衛隊を派兵

浜松のみなさん、こんにちは、池田です。現在、国会では安保法制関連法案が国際平和支援法案、重要影響事態法などの一括法案が審議されています。また防衛省改革法案などもすすめられてきました。

 この安保法制によってさまざまな口実で世界中に自衛隊が送りだされるようになります。自衛隊の任務が増加し、海外派兵が拡大するわけです。自衛権が拡大し、地理的な制約が取り払われ、いつでも、世界のどこでも自衛隊が活動するようになります。

憲法第9条では武力の行使や交戦権を否定していますが、その9条の精神を無視して、「武器の使用」をおこなうというわけです。

●「国際平和」を口実にした海外派兵

 安保法制では「国際平和」を口実にして海外派兵が拡大されますが、それは国際平和支援法とPKO協力法の2つですすめられようとしています。

 国際平和支援法では、自衛隊による他国軍への後方支援ができるようになります。PKO協力法の改正では、治安任務、駆け付け警護、人道復興支援などが新たに入れられます。イラクのサマワでみられたように、人道復興支援には多国籍軍の占領統治を引き継ぐことが入るわけです。

 この活動では、武器使用の基準の変更も問題です。任務遂行妨害を理由とした武器使用ができるようにしますから、治安維持妨害を除去するという理由でも武器が使用されます。報復され、自衛官が死傷することにもなります。活動領域も拡大し、現に戦闘がおこなわれていなければ、活動するとされています。

PKOは対テロの一環で展開されるようになりましたから、対テロ戦争への派兵にもなるわけです。

●自衛権の拡大

 海外派兵は、他にも様々な口実で行われようとしています。重要影響事態、存立危機事態、邦人救出などですすめられようとしています。重要影響事態などでの後方支援では、戦闘がおこなわれていない現場ならどこでも活動するというのです。

 武力攻撃事態法には存立危機事態が追加されました。「存立危機」を口実に個別的自衛権の行使として機雷掃海のために自衛隊が世界に送られることも考えられます。自衛隊法が改正され、邦人救出にむけての派兵もできるようになります。任務遂行妨害を理由とした武器使用は、邦人救出でも適用されます。

●安保法制整備の背景

アメリカは同盟国への役割分担をすすめてきました。弾薬提供を含む後方支援、船舶検査などは、対中抑止力を高める側面も併せ持っています。改訂新ガイドラインでは、自衛隊に南シナ海での役割を拡大させ、武力攻撃事態では離島防衛も盛り込んでいます。

しかし、アメリカの要求に応える面のみで安保法制整備をとらえてはならないと思っています。このような自衛隊の役割の拡大の背景には多国籍企業化した日本企業の権益確保の意思があることを踏まえる必要があると思います。

それを象徴するのが邦人救出です。これも、アルジェリア日揮プラント襲撃事件などを念頭においたもので、「テロとの戦い」に踏む込むものです。しかし、「テロとの戦い」にのめりこめば、いっそう邦人の生命が危険になります。

●すすむ国家改造

 安保法制の問題には国会の軽視があります。国際平和支援法では国会の事前承認が規定されるようですが、7日以内に議決するとされ、その議決は基本計画だけになりそうです。PKOに関しても基本計画は承認が必要ですが、駆けつけ警護などは事前承認に対象にはなりえません。重要影響事態法では国会の事前承認が条件とはされません。邦人救出、機雷掃海、船舶調査なども自衛の名で事前承認なしでおこなわれるでしょう。グレーゾーン事態では電話閣議で対応するのです。

このような緊急事態への対処は、国家安全保障会議が主導して対応するのですが、実権を握っているのが国家安全保障局の官僚です。自衛隊の制服組の発言力が強められています。 

このようななかで、憲法での国家緊急権の明文化、改憲の動きがでているのです。

●対テロ戦争参戦法にNO!の声を

 今回の安保法制は、自衛権を拡大し、海外派兵をすすめるものですが、言い換えれば、対テロ戦争参戦法です。自衛隊は殺し殺されることを前提としたものになります。任務の遂行妨害に対しての武器の使用も解禁されます。自衛隊員を自治体や企業の危機管理の専門家として派遣する動きもありますし、自衛官への罰則の強化もすすみます。死亡者への追悼、軍法会議の設置、遺家族援護、PTSD対応などの研究も進められているわけです。

この動きとともに社会と経済の軍事化もすすんでいるのです。経団連も軍需産業に傾いています。

このような動きに抗して、東京では75日に反基地に関わる練馬、習志野、立川の3団体の呼び掛けで、戦争立法反対の集会と銀座デモが計画されています。多くの人々の参加を呼びかけています。この実行委員会では『戦争する国反対!自衛権拡大の正体を暴く』という冊子を作りました。ぜひお読みください。

 

 

以下は集会で採択された要請書である。

 

日本国首相様

 

安保法制関連法案の撤回を求める要請書          201569

 

 湾岸戦争以後、ペルシャ湾への掃海艇派遣にはじまり、PKO協力法、周辺事態法、イラク特措法、有事法制などが制定され、海外派兵と戦争立法がなされてきた。アメリカによるグローバルな戦争態勢の構築のなかで、日本の海外派兵がすすめられてきたのである。

このような動きのなかで、浜松基地にもAWACS(空中警戒管制機)が配備され、日米の共同訓練にAWACSが参加するようになった。また、イラク戦争にともない浜松基地からの派兵もおこなわれた。さらにミサイル防衛の一環として、PAC3ミサイルが浜松基地に配備された。

わたしたちは、このようなAWACSPAC3の配備、海外派兵の動き、さまざまな戦争法の制定に反対し、浜松を再び戦争の拠点にするな!と地域で活動してきた。

安倍政権による、集団的自衛権の行使容認、それによる新ガイドラインの改訂、そして安保法制関連法案の制定に向かう動きは、立憲主義、平和主義に反するものであり、海外で戦争をおこなうことを認めるものである。そのような法案は、断じて許すことができない。

201564日の衆議院憲法審査会での参考人質疑では、与党が招いた憲法学者も含め、全員が安保法制関連法案を憲法違反とした。政府は、法的安定性は確保されているなどとするが、この間の政府の行為が憲法違反であることが明らかにされたのである。どうみても、海外で集団的自衛権を発動し、米軍などがおこなうグローバルな戦争に参加することは憲法違反である。

いま政府の語る「平和」とは戦争の意である。国際平和支援とは国際戦争支援にほかならない。ウソで市民をだます政治は許されない。戦争に巻き込まれるというよりも、政府が戦争を起こそうとしている。リスクは高まらないなどとする発言には、生命を大切にするのではなく、生命を使い捨てる姿勢が示されている。政府の語るウソと違憲の行為は、主権者の尊厳と権利を侵す不正義であり、政府による犯罪にほかならない。

わたしたちは、政府が今すぐ、安保法制関連法案を撤回することを求める。

                   

             「6・9安保法制とは何か」浜松集会参加者一同