小出裕章講演会「福島第1原発事故と浜岡原発再稼働」

20151017日、静岡市内で、小出裕章講演会がもたれ、小出さんが「福島第1原子力発電所事故と浜岡原子力発電所再稼働」の題で講演した。主催は浜岡原発の再稼働を許さない静岡県ネットワークであり、500人が参加した。
 小出さんの話を
5点にまとめるとつぎのようになる。

 

@福島第1原発事故は収束していない

 第1原発は4機が壊れ、7000人が被曝して働いています。炉心がどこに落ちたのかもわからないのです。燃料デブリは格納容器の床に落ちて散乱しているでしょう。床も侵していると思います。

1000平方キロメートルあまりが帰還困難や避難地域となり、汚染地帯で暮らす人々が数百万人います。故郷を追われた流民も10万人以上です。原子力緊急事態宣言はいまも解除されていません。

「収束」も「アンダーコントロール」もウソです。

A深刻な汚染がつづく

 福島事故により、偏西風で多くが太平洋に流されましたが、福島の中通り、浜通りが汚染され、関東地域に広がっています。放射線管理区域では、1平方メートルで4万ベクレルの汚染があると外に出られないのですが、事故により、6万ベクレルの汚染地帯が生まれ、そこに人が居住しているのです。

汚染水は毎日あふれ出ています。201410月の敷地内での井戸の水の調査では、セシウム1371リットル当たり、19万ベクレルとされ、基準の2000倍であり、ストロンチウムとみられる「全ベータ」は26万倍の値であり、深刻な汚染状態なのです。

日本政府からIAEAへの報告でも、広島原爆の168発分のセシウム137が大気中に撒かれたといえます。海への放出分を入れれば、この23倍が撒かれたとみられます。何百発分もの死の灰が撒かれ、今もばら撒いているのです。

漏れ出たセシウム137は2.4×10の15乗ベクレルとみられますが、重さにすれば、750グラムにすぎません。

B日本は法治国家か

これまで日本は、一般人は年被曝を1ミリシーベルト以下とし、1平方メートルで4万ベクレル以上の汚染地には人は住めないとしてきましたが、事故により、そのような汚染地帯に人々が捨てられています。日本は法治国家なのでしょうか。

除染するといっていますが、実際には移染です。放射能のゴミの山ができ、内側から植物が袋を破っているものもあります。置場がありません。中間貯蔵施設へとそのごみが押し付けられようとしています。

さらに、低線量でも危険であるのに、帰還をすすめ、補償金を打ち切ろうとしています。子どもたちは放射線に敏感です。子どもたちにだけは被曝をさせない行動が必要です。100ミリシーベルトまで安全と宣伝する人々は、刑務所に送った方がいいのです。

C原子力マフィアの動き

 原子力マフィアが再稼働をすすめています。ムラでなくマフィアを言うべきでしょう。事故が起きてもだれも責任をとらない犯罪者集団です。処罰されないのです。今回の事故の責任をとらせることが大切です。原発をすすめた自民党、東電の担当者は刑務所に入れるべきですし、原発をすすめた学者やマスコミも同様です。

 新規制基準は破局事故を前提としています。これまでは安全基準としてきましたが、事故により、規制基準としたのです。新基準に合格しても安全ではないのです。しかし、政治家は安全と宣伝し、地方自治体に再稼働を認可させるのです。

核兵器を作る能力を持ちたいから、原子力をすすめたのです。原子力と核は別物ではなく、平和利用は軍事に転換できるものです。日本は原発により、広島原爆の120万発分の死の灰をつくり、その危険性は消せないのです。

D浜岡原発と地震

 浜岡原発では防潮堤を作り、津波対策をおこなっていますが、津波よりも地震が問題です。東海地震の震源域の真中に浜岡原発があります。マグニチュード9は地下で広島原爆が3万発爆発するようなものです。それに浜岡原発が耐えられるでしょうか。

 20145月の大飯原発運転差止訴訟の判決では国富とは「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していること」といっています。浜岡で事故が起きれば、そのような国富を失います。静岡市も深刻な汚染地帯になる可能性が大きいのです。

 かつて戦争への道を歩んだ時、有能な人々が周囲から圧迫されました。今、再び戦争への道を歩もうとしています。また、原発の再稼働がすすめられています。

そのとき、どう生きたのか、未来の子どもたちから問われるでしょう。非力ではあったが、やるべきことはやっと答えられる人間でありたいと思います。  (要約)