12・21「海外から見た日本の危機的状況」
藤田早苗浜松講演
2015年12月21日、浜松市内で「海外から見た日本の危機的状況」の題で藤田早苗さんの講演会がもたれた。
藤田さんはイギリス在住、国際人権法を専攻し、秘密保護法の問題点を示すとともに、国連の人権理事会によって任命された特別報告者デービット・ケイ(カリフォルニア大学)の日本訪問をすすめてきた方である。講演で藤田さんは、国際人権法の視点を紹介し、日本の表現の自由と情報アクセス権の問題点を示した。
講演を要約するとつぎのようになる。
国際人権法では、情報の自由、情報へのアクセスの権利が基本的人権である。世界人権宣言の19条では意見及び表現の自由の権利が記され、それは情報・思想を求め、受け、伝える自由を含むものである。国際人権規約・自由権規約の19条でも、意見・表現の自由、国境に関わりない情報の自由が記されている。
国連人権理事会の特別報告者フランク・ラ・ルーは2013年11月、秘密保護法について批判し、同年12月には、国連の人権高等弁務官ナビ・ピレイも表現の自由と情報アクセス権の視点から慎重な審議を求める意見を示した。しかし、自民党の城内実らは事実誤認とし、分担金の凍結をほのめかしたり、内政干渉などと対応した。
フランク・ラ・ルーの発言には、表現の自由、情報へのアクセス権の視点からの批判であり、権威とは信頼から生まれ、信頼は透明性から生まれるという知る権利の重要性に関する国際的認識がある。自民党の改憲案をみれば、21条では表現の自由を公益の名で制限でき、36条では拷問残虐刑の「絶対に禁止」から「絶対に」を除き、97条の人権が永久の権利であるとする条項をなくすというものである。さらに緊急事態条項を入れようとしている。改憲の問題は、9条だけではない。
秘密保護法は日本の表現の自由、情報アクセス権を侵すものであるという国際的な懸念が深まるなかで、デービット・ケイによる調査がこの12月1日から予定されていたが、日本政府は延期を求めた。そのような対応は、日本政府は独裁国家並みとする評価を生んでいる。
国際的な人権規範の理解が求められる。たとえば、国連には個人通報制度がある。人権条約にある権利を侵害された個人が各人権条約の機関に直接訴える、国際的な場で人権救済を求めることができるというものだが、日本はこれを批准していない。 (文責 人権平和・浜松)