731武藤類子講演会・静岡

 

20167月31日、静岡市内で武藤類子さんの講演「原発事故は終わらない」が、浜岡原発を許さない静岡県ネットワークの主催でもたれ、200人が参加した。

●武藤類子「原発事故は終わらない」

武藤さんは、福島第1原発内の状況について話し、原子力発電所内では事故が終息せず、汚染水の流出がつづいていることをあげた。

福島原発内では、汚染の激しい排気筒の半分を切断する計画があること、汚染地下水をくみ上げる計画では処理しても、トリチウム濃度が濃く、タンクに入れていること、海側の遮水壁が1ヶ月で海側に20センチ傾いたこと、湾の水は2日で外洋の水と入れ替わり、汚染水のコントロールはできていないこと、凍土壁には345億円の国費が投じられ、鹿島が請負ったが、失敗していることなどを示した。

また、武藤さんは発電所外での除染や焼却、汚染土壌の再利用の問題について話した。

福島原発外では、除染のフレコンバックが大雨で流され、中身がなくなったものもあること、都市では除染土が埋められることなく、容器に入れられ保管されているものもあること、その容器の商品名が「除染太助」であること、除染の土の入れ替えのために山が崩されていること、汚染物の減容化のために巨大な焼却炉がつくられていること、8000ベクレル以下の汚染土壌が全国の道路や公共事業で使われる方針であることなどを示した。

さらに、武藤さんは事故後に強まった放射能の安全プロパガンダの動きを批判した。

「まんがなすびのギモン」にようにマンガや動画で放射能安全プロパガンダが始まっていること、「ハッピーロードネット」のように国道6号線の道路掃除に中高生を動員する動きも出てきたこと、「リスクコミュニケーション授業」がさかんになされ、開沼博らが放射能批判を「根拠なき偏見」と記すようになったこと、政府は原発事故などなかったかのように避難解除と帰還をすすめていること、故郷の三春町の福島県環境創造センターなどのキャンペーン施設が復興予算192億円をかけて建設されたことなどを示した。

武藤さんは、このような動きに抗する活動について紹介した。武藤さんたちは、告訴をすすめ、最終的には検察審査会での強制起訴を認めさせたが、その決定の理由は、電力会社の役員には注意義務がある、大津波と事故を予見できた、対策をとれば事故を回避できたことだったとし、強制起訴による刑事裁判にともない、福島原発刑事訴訟支援団が結成されたことを示し、多くの市民の参加を呼びかけた。

そして武藤さんは、事故の真実とその責任の追及をすすめなければ、再び事故が起きる、その追及が被害者の責任と感じて活動してきたこと、その結果、建設審査会で強制議決をさせ、東電の刑事責任を追及する第1回公判を迎えようとしていること、ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)をつくり運動を共同していることなどを示した。

最後に、武藤さんは、美しい福島の自然について語った。多くの生き物を原発事故に巻き込んでしまった人類の責任を指摘し、あきらめないこと、つながること、自分の頭で考えることの3点をあげ、ともに活動することを呼びかけた。

 

●浜岡原発を許さない静岡県ネットワーク総会

講演後には県ネットワークの総会がもたれ、世話人会からの提案を受けて、今後の活動について討論がなされた。

 世話人会からは、浜岡原発の再稼働をさせない世論形成、地域での運動、知事への働きかけの3点の方針とともに、署名、集会、金曜ン行動などさまざまなアクション、福島の意識化、1万人規模の集会、住民投票、広域避難計画問題、市町村での請願、議員との信頼関係、浜岡裁判支援、電力契約切り替えなどが提起された。

討論では、UPZと他の地域、避難計画の問題、原発労働被曝、浜岡再稼働の情勢認識の違い、住民投票の可否、放射能安全神話批判、原発マネー、県による意識調査、使用済み核燃料税導入問題、共同行動など、さまざまな立場からの意見が出された。

 

武藤さんは、共感する心を大切にし、福島で反原発運動をすすめてきた。事故だけではなく、ドングリやハキリバチを含めた福島の話を聞きながら、「真実と責任」をふまえ、再度現在の「復興と帰還」の問題、放射能安全プロパガンダの問題を考え直したいと思った。