望ましい国民のつくり方   べにはこべ

 

 

一通の便りを 心待ちしたあの頃

ポストに投函した時から

封を開け 読んでくれる姿を想いうかべ

返事を書いてくれる様を想像して

今は

それらをすべて省いて

世界の果てからも 瞬時に情報が届く

 

 

でも大丈夫

大量のウソやデマで

本当のことが見えないようにすればいい

戦争の記憶は経験者だけのもの

そのうち 皆 いなくなる

決して後世に伝えてはならない

加害の歴史は 極力知らせず

七十年かけて薄めてきた

今や なかったこととして堂々とまかり通る

都合の悪いことは 国会中継させず

答弁ははぐらかし ヤバイことは裏でもみ消す

なあに

そのうちすぐに忘れるさ

大事な局面になれば

お笑いやバラエティー そして

どうでもいいスキャンダルを用意しよう

そうそう

皇室の話題も格好のネタだ

北のミサイル発射で

避難訓練も成功しちゃった

電車まで止めて

オレたちはゴルフを楽しんでいたけれど

中国と北朝鮮のイメージは上々だ

ありもしない危機でも本気で従ってくれる

よし よし この調子だ

なあに ダマされても反省しないやつらは

何度でもダマせるから 大丈夫

ダマされたことに気付きもしない

大学生の四割は本を読まないところまできた

論理も倫理も知性とも無縁

他者への想像力もいらぬもの

ひとと違うことを ひたすら恐れさせ

自己責任と将来への不安を煽り

過労死寸前まで 働いてもらう

そうしておけば

物事を深く考えもせず

ましてや

お上に楯突くなんてできっこない  と

どこまでも見下した声がする

 

 

今日も 空襲で焼け残ったプラタナスの木の下で

共謀罪の危険を訴える

無関心の人も多いなか

「いつも見ていました」

「参加できてよかったです」

「テレビの前で怒ってました」

署名し もどかしげに想いを語っていく人々

黙って通り過ぎていく人たちにも

気付いてくれることを願って 立ち続ける

 

畑のショウブは

寒さのせいで 一週間遅れ

切り取っても 切り取っても

鋭角の蕾を次々と立ち上げ

しなやかな花を広げる

今年は いくつの部屋を飾れただろうか