12・3 梁英聖講演「日本型ヘイトスピーチを問う」
2017年12月3日、日韓文化講座・浜松の主催で、梁英聖さんの講演会「日本型ヘイトスピーチを問う」がもたれた。
梁英聖さんはつぎのように話した。
●ヘイトスピーチとは
ヘイトスピーチはなぜ頻発するようになったのでしょうか。それをなくすためにはどうすればいいのでしょうか。
在日コリアンにとって、ヘイトスピーチは生死に関わる問題です。ヘイトスピーチは個人の内面を破壊します。ヘイトスピーチが激しくなったことから、新たなやり方で対応する必要を感じ、研究をすすめるとともに、2015年3月、ARIC・反レイシズム情報センターを立ち上げました。
ヘイトスピーチとは簡単に言えば、差別を煽動する言論・表現のことです。
反レイシズムのモノサシには、人種差別撤廃条約があり、この条約ができた1965年前後にはアメリカで公民権法、イギリスで人種関係法などの法律ができています。さらにヘイトクライムの問題が起き。それに対応するために1990年代には、これらの法律が改正されています。ドイツでも1960年に民衆扇動罪が刑法に入れられ、94年にはホロコースト否定罪が追加されています。
日本にはこのような法規制がありません。日本での反レイシズム規範・法制定がもとめられるわけです。
●社会を破壊するヘイトスピーチ
レイシズムは社会を破壊します。近代になるとレイシズムによって人間を分類し、激しい虐殺がおこなわれるようになりました。
日本では、ヘイトスピーチを国が公認するなか、関東大震災では、警察や軍が虐殺を実行し、自警団を組織させて、さらに虐殺がおこなわれました。政府は虐殺を放任し、処罰も不十分なままであり、政府による真相糾明もありません。
現在の特徴は、差別煽動を政治利用する右翼が現れてきたことです。極右とは、そのような集団です。政治家が差別発言をし、それがネットなどで拡散・増殖し、人の生命を奪っていくという事件が起きています。政治家のヘイトがさらに増殖し、社会を破壊するのです。
●ヘイトスピーチの原因
ではなぜヘイトスピーチが頻発しているのでしょうか。
戦後の講和条約による1952年の「独立」は、在日朝鮮人を無国籍者扱いするものであり、在日を難民化させるものでした。国籍の壁をつくり、そこにレイシズムが組み込まれたのです。そのような状況のなかで、差別を煽動する政治家が現れると、民衆による暴力につながっていくわけです。レイシズムを規制する法のブレーキがなく、差別煽動のアクセルがふかされていくというわけです。
1960年代から70年代にかけての朝鮮高校生への襲撃事件は、反共主義右翼が組織しました。けれども1980年代後半から90年代のチマチョゴリ切り裂き事件や2000年代以降の差別暴力事件では、「一般人」によるものが増えたのです。政治空間での差別煽動がそれをもたらしています。
現在のヘイトスピーチは、「一般人」が徒党を組み、レイシストの団体を結成し、差別煽動のデモをおこなうに至りました。これまでの右翼では恥ずかしくてできないような言動をする、たとえば、「殺せ!朝鮮人」などと笑いながら叫ぶのです。さらに、筋金入りのレイシストが政党を結成し、政界にすすみでようとしています。
それは、反レイシズム規範の不在と上からの差別煽動の結果です。これに加えて過去の歴史の正当化の動きが強まっています。
●新たな活動としてのヘイトウォッチ
ではどうすればいいのでしょうか。
まず第1に反レイシズムの規範を構築することです。ヘイトスピーチのブレーキをつくることです。東アジアの冷戦構造の解体、日本型企業社会の克服、労働運動、社会運動の再構築も同時に必要です。
ARIC・反レイシズム情報センターは、政治家レイシズムデータベースを構築し、ヘイトウォッチをすすめています。これは政治によるヘイトのアクセルを止めるためです。ヘイトスピーチの監視を強め、記録し、公開し、その責任を追及します。新たなヘイトウォッチの活動をぜひご支援ください。