浜松市立中央図書館御中 2017年12月1日
人権平和・浜松
浜松航空史展の改善を求める要請書
2017年10月から12月にかけて浜松市立中央図書館内で浜松航空史展がおこなわれている。この展示は、浜松の航空に関する基地と消防・医療に関し、日本最初、日本一、浜松にしかないものという視点で、構成されている。浜松がアジアNO1航空宇宙産業クラスター形成区の一つとなり、航空宇宙産業の発展に寄与することへの期待についても記されている。
この展示の問題点は以下である。
第1に、過去、陸軍の航空爆撃基地がおかれることで、浜松は軍都となったが、その基地の部隊によるアジアへの爆撃の記載が不十分であり、加害への反省がない。
第2に、浜松での日本楽器(ヤマハ)のプロペラ生産がなされたが、その工場が浜松への米軍爆撃の目標となったこと、航空軍需産業への関わりが空襲被害をもたらしたことについて記されていない。
第3に、戦後は航空自衛隊に基地となったが、F86Fの基地周辺での何回もの墜落事故、ブルーインパルス機の墜落事故など、戦後の事故については全く触れられていない。
第4に、AWACS配備により、浜松基地は警戒航空隊が移駐し、実戦基地となったが、それへの反対の動きが存在したことが記されていない。また、イラク戦争時にはクウェートへと浜松基地からも派兵され、空自のイラクでの行動は名古屋での違憲訴訟によって憲法違反とされたが、そのような憲法違反の派兵について記されていない。
第5に、浜松基地内の広報館(エアパーク)の展示に追従し、現代の軍事の広報活動への批判的表現が見当たらない。太陽に向かうAWACS写真など軍事を美化するような展示がみられ、軍拡の危険性を示してえていない。
第6に、浜松にしかないものという視点で自衛隊を示し、航空教育集団司令部、AWACS、広報館などを賛美するものになっている。
第7に、アジアNO1航空宇宙産業クラスター形成区は三菱重工、川崎重工、富士重工などの航空宇宙産業推進のための特区の形成であり、宇宙の軍事化と密接に結びついているが、それへの批判的考察がみられない。
今回の展示は、過去の歴史を批判的に見て、戦争被害者の立場に立って考える、現代の軍拡や派兵、宇宙の軍事化を批判的に考察するという姿勢に欠けるのである。「浜松ファースト」の意識をもとに、航空宇宙産業の推進のために過去の軍需生産と戦争の歴史を美化しかねない展示である。
浜松市は平和都市宣言をおこなっているが、平和都市としての名誉ある地位は、過去の侵略戦争と軍需生産への反省、現代の軍拡と戦争の危機への抵抗精神が欠かせない。図書館はそのような知的・批判的・抵抗的精神の形成の場である。過去の戦争と現在の軍拡を賛美するかのような展示は、なすべきではない。
以上、問題点を指摘し、展示の改善を要請する。