浜松市の水道民営化を考える集会2017・12.20

     浜松市の水道民営化に反対の声を!

 

12月20日、水道事業の民営化を考える浜松市民の会の主催で集会がもたれ、全水道労働組合の辻谷貴文さんが「水道事業が民営になる?」の題で講演、60人ほどが参加した。以下は講演の要約である。

 

全日本水道労働組合は約2万人の水道の現場労働者で組織する組合です。

水道事業での民営化の動きがすすんでいます。浜松ではコンセッション方式が導入されようとしています。水はすべての人にかかわる問題です。市民が知っているのか、議論できたのか、考えることができたのかが大切です。

水問題の現状に関心を持ち、欧米など20カ国ほどを見学してきました。水道はライフラインであり、経済活動を支えるものです。水は、憲法25条の生存権に関わるものです。水道事業は公営企業の独立採算制でおこなわれています。水がみんなのものであり、公営の方がいいのです。水道はコストがかかります。取水、ろ過、送水、これは100年先も変わりません。1年365日、24時間、現場は必死でやっています。

老朽化設備の更新など、この先もっとお金がかかります。コンセッションにして民間企業にやってもらうのか、水道料金を上げて、でも公営水道を維持するのかが問われています。水問題は、地域の自治の問題として捉えるべきです。世界では、水は公共財なのか経済財なのか?という議論がなされてきました。多国籍企業が水ビジネスを展開し、水道料金を上げて、搾取し、成長したヨーロッパの水企業がたくさんあります。浜松の下水道コンセッションを受けた親会社もそのひとつです。 

浜松市が検討しているコンセッションは国策であり、アベノミクスの3本目の矢のひとつ、民間投資の推進なのです。2010年代から水道民営化の促進があり、たとえば、2013年、アメリカの戦略国際問題研究所CSISで、麻生が日本の水道全部を民営化すると発言しています。アメリカから押し付けられた国策と見るべきでしょう。郵政民営化と同様、アメリカが利益をあげるのです。

浜松での下水道と上水道のコンセッションですが、考えますと言った時点で、国からカネがでます。国は、公共施設の運営権が設定できるようにしました。これがコンセッションです。民間企業に丸ごと任せることができるのです。水道の職員も減らされます。日本では、上水道は厚労相の水道課、下水道は国交省の下水道部の管轄ですが、世界では水省や水道省があります。水は何より大事だから、誰も口を挟むなと国が所管するという国もいくつかあります。

民営化が80年代以降、ヨーロッパですすみましたが、2000年前後、失敗だったとし、2010年代からは再公営化がすすんでいます。パリ市は2010年、1985年から25年契約でセーヌ川挟んでスエズとヴェオリアが運営していたのですが、公営にしました。劣悪な管理運営、投資不足、事業コスト増大、料金高騰、監督の困難性、財政透明性の欠如、人員削減など問題は世界共通です。民間水道だったところが、契約更新時に軒並み、公営の道を選んでいます。

アイルランド、ウェールズは公営で、イングランドだけが民間ですが、ガーディアンがイングランドで調査して70%の市民が公営に戻してほしいと言っています。

民間企業が大丈夫ですよといいますが、劣悪な管理運営、投資不足がおきます。民間は短期収入を上げないといけないから、長期投資がおろそかになりがちです。水道事業のように、水源地の森を守る。将来にわたってきれいな水を守る、ということには投資しないのです。事業コストは必ずあがります。公営水道事業は法人税は払いません。工事の時、道路占有料は払いませんが、民間は払わないといけないのです。知らないうちに料金が上がる可能性もあります。民間企業は事業をフルオープンにしませんから、透明性が欠如し、サービスは低下します。問題が必ずおきます。

民間は短期的な利益を追求します。企業秘密、経営戦略など、ほとんどブラックボックスです。あがった利益は市民には返ってきません。株主配当や役員報酬に転じます。収益が上がったら一部の人が持っていく構造は危険です。水は自治の問題であり、公営水道を強化すべきです。

大阪では橋本徹さんが市長の時、水道民営化しますと言った。府は用水供給事業、各自治体は産地直売店、コンセッションの上下分離で、下は土地資産、上は運営というのです。議会で継続協議となり、最後は廃案・否決でした。橋本さんは、大阪市の職員は税金を食い荒らす白アリだとテレビでいうのです。大阪市の公務員けしからんという空気ができあがる。組合としては、いろんな市民グループやNPOにリークし、ネットワーク作りました。資料を提供し、大阪市の水道コンセッションのこと、世界の水道の事、一緒に水道の事考えてくださいと話しました。反対運動はせず、市民運動をしました。

浜松市が先例を切ると、よその地域でもやるようになります。危惧しています。公務員もこの間の公務員バッシングで疲れています。そういう中でいい公務員を作っていくのは、市民がどういう目線で自治をつくっているかによります。水の事は、共有できる問題です。

海外での再公営化の運動ですが、オランダのNGOの一人が「公共の水を取り戻す」というネットワークを作りました。いろんなテーマを抱えているグループに対して、あなたの国の水はどうなっているの、水の事をみんなで話し合おうよと動いたのです。水の問題は、どう生きるかではなく、生きられるかどうかの問題と表現したのです。選択の問題ではなく、生きられるかどうかの問題に必死にならないのはおかしいじゃないかの言葉が印象に残りました。共同所有、社会的共通資本の認識を深めていったのです。水道は公営原則しかないと考えます。2040年は大丈夫かもしれないけど、子や孫の代になった時になんてことしてくれたんだと言われかねません。重大な局面に立たされています。

スペインのバルセロナでは水道の再公営化を達成しました。いろんな面で新自由主義化した社会の中で反動が起き、人間が産まれて死ぬまで、生きている間に関わるもの全部、公営でいいじゃないかという議論も出ています。水道を再公営化できたという成功から、教育や医療などの問題にでも、行政が金を出せないのかという運動に変わっています。バルセロナ市は左派政権になりました。それは水の問題で勝利したからです。

浜松市はコンセッションを下水道から始めるとしましたが、全国からなんてことをしたんだと浜松市は思われます。行政を自分たちで考えていけば、今の政治はおかしくないか、今の行政はおかしくないかという運動が盛り上がるでしょう。水は自治の問題です。生きられるかどうかの切実な問題なのです(要約)。