コマーシャル       べにはこべ

 

 

テレビ番組が終わると

さァ 次は

脅しと扇動番組の始まり 始まり

化粧品やサプリメントの出番

加齢による肌のくすみ シミ シワ

外に出るのも 人に会うのもイヤだった と

変化の程を

ピカピカの厚化粧で きれいにアピール

「使用前」の写真は

暗ぼったく覇気のない写りで 目線は下に

「使用後」は

ヘアスタイルも整え

明るく きれいなカラーで

前向きに 生き生きとした表情で

バックグラウンドからは

「ええーっ!!」と

驚きの声を添えるのも忘れない

 

感想はきまって

「・・・・な感じ」

決して「・・・に効く」と言ってはいけません

画面には ごく小さく

「個人の感想であり効能ではありません」 のお断り

効能実験は 会社におまかせ

厳密な方法表示はいりません

ただ 結果の表示は

折れ線グラフでも 棒グラフでも

大した差ではないものも

一見 大きく違って見えるよう 工夫が大切

幼稚園児を騙すような手法のオンパレード

消費者 特に女性はこの程度 と

高を括って ほくそ笑む

これ程にバカにされても

腹の立たない人が多いのだろうか

 

まて まて

化粧品やサプリなら

他人の人生に与える影響は知れたもの

でも

憲法はどうだ

国会の場ですら 嘘とごまかしのオンパレード

この手のやり方で 堂々と流される嘘に 

人々は絡め取られていくのだろうか

今こそ 知性を研ぎ澄まし

私たちの死後を生きる

多くの命のために生きよう

 

今年も イヌフグリが咲き始めた


繕いもの       べにはこべ

 

 

ふと目を覚まし 布団から覗く

灯りの下で

居眠りしながら 母が繕いものをしている

針を持つ手が時折り止まり 頭を垂れる

家族がお風呂を済ませ

最後の母の番は もう夜も遅い

あの頃の百姓仕事は すべてが手作業

母の疲れは

ジクジクと 私の胸を重くした

それからは

洗濯物を取り込むと

繕いものをするのが 私の日課になった

子どものすることとて

出来栄えの程は 知れていたことだろう

 

時が過ぎ

今も私は 繕いものが好き

ほつれを直し

虫食いセーターに 小花を刺し

ステッチやアップリケ

穴のあいたくつ下に 継ぎをあてる

爪先の小さな穴

足底だけの穴

他は何ともないので

もったいなくて 捨てられない

畑仕事には これでも充分

くつ下の穴の位置は

どこに力が入る歩き方や作業をしているか

身の処し方の癖を的確に示す

仕事をやめてから

私のくつ下の破れは 少なくなった

けれども

一針一針を運ぶ時

灯りの下の

あの母の背を思い出す