浜松市民と浜松市水道部管理者との水道コンセッション問題意見交換会
2018年10月19日金曜15時から1時間30分の間、浜松市中区住吉の浜松市水道部の2階会議室で水道民営化(コンセッション)反対市民有志と水道部管理者寺田さんとの直接対話集会をもった。この意見交換会は9・28の要請行動により、設定された。
この交渉で管理者は、「包括委託を民営とするなら、コンセッションは民営」、「コンセッション(運営委託)は委託の一種」、「運営権の売却とするのはまちがい」などと発言し、内閣府の調査費全額の1億3700万円はコンサルタントの新日本監査法人に渡したと答えた。この費用はコンセッションの調査報告と水道資産調査、経営調査に使われたという。
参加した市民は、もっとわかりやすい説明を、、いのちの水を守れずして何を守るのか、企業の視点でなく、労働者の視点を持て、管理者は口答えする前に市民の声を受けとめろ、民間に任せればすべてうまくいくという見方は甘すぎる、一度民営にすれば、公営には戻れなくなる、市民との公開討論会を開いてほしい、水は人権の問題であり、値上がりだけを問題にしているわけではないなどと発言した。
以下要請書
浜松市長様
浜松市上下水道部管理者様 水道民営化(コンセッション)反対市民有志
浜松市水道コンセッション導入中止を求める要請書
わたしたちは以下の理由で浜松市水道へのコンセッション導入の中止を求めます。
1 コンセッションを「運営委託方式」とすることは虚偽の説明である。
コンセッションとは経営権長期売却による民営化が本質である。コンセッションは民営化の一形態である。にもかかわらず、市は完全民営化ではないとし、ごまかしの説明をおこなっている。
2 浜松市の2018年2月報告書は「コンセッション有効」という結論ありきである。
浜松市は、公的部門への民間資本導入の動きに呼応して、コンセッション導入をすすめてきた。報告書は「浜松市水道事業へのコンセッション導入可能性調査」として内閣府のPFI推進室から1億3700万円もの補助を受けてのものであり、「管路付きコンセッション」有効という結論ありきのものである。
市の水道事業は年収益約150億円、黒字約10億円の事業であり、その利権が狙われている。コンセッションが唯一の解決策ではない。報告書をみても、浜松市のコンセッションと民間の利益想定の経営には乖離がある。
3 コンセッションによる利潤追求の経営には数多くの問題がある。
利潤追求により、短期収益の優先、長期投資の不足、水道料金の値上げ、労働者の人員削減・非正規の増加、行政による監督の困難性、財政透明性の欠如、投資・財政での企業秘密の増加など、多くの問題が指摘されている。
SPCへの出資額の割合も、職員派遣数も不明である。市は運営会社の経営権を制御できない。融資のため運営権への抵当権設定もありえる。運営権買戻しでは多額の賠償も想定される。市はコンセッション企業による地域貢献を求めているが、願望にすぎない。
4 コンセッションにより市は水道事業能力を喪失する。
コンセッションで市の水道職員は現時点での150人から30人台へ減少する。市の人材が喪失し、技術育成は不能となる。モニタリング能力や現場監視能力も喪失する。モニタリングは外注化される。それは水道事業者の当事者能力の喪失であり、公共事業の放棄となる。コンセッション企業が事業継続不能となっても、市は事業を継承して、運営する力を失う。
5 大災害時の対応は不能となる
コンセッションにより、大災害時には市は本部・総務を担当し、指示命令をするだけになる。民間が水道復旧・給水・浄水を担うとするが、市の意向通りに動員できるかは、未知である。浜松市職員に現場水道業務に通じる者がいなくなり、他都市への応援は不能となる。災害時の復旧負担を民間負担とするが、想定通りにいくとは限らない。
6 地元業者とのこれまでの連携の排除をはじめ、問題が多すぎる。
これまでの地元業者との提携は競争原理により排除される。コンセッションにより、随意契約が可能となり、地元優先の主張は効率化・自由競争の原理から通用しない。
また、市のコンセッション企業への出資割合、そこへの職員派遣、災害対応、要望による敷設工事負担の分担、料金算定方法、組織再編、モニタリング、要求水準の設定、資産管理区分、庁舎使用区分など問題が多すぎる。
7 市のコンセッション会社との想定リスク分担は問題が多い。
市の想定リスク分担では、管の破損漏水の際の負担分担、運営権者が直した管の所有権、災害時の修繕負担、市と運営権者で環境問題・住民訴訟負担の協議など、問題が多い。コンセッション会社に有利な分担となりやすい。
管路ありコンセッション有効の結論を導いたために、問題が多くなった。管路ありコンセッションでのVFMは3〜4%にすぎない。それよりも、公営を維持して、職員体制を強化すべきである。
8 世界の再公営化の動きを認知し、コンセッションの導入は中止すべきである。
1980年代以降の水の民営化は、数多くの問題を生み、21世紀に入り、水道事業の再公営化がすすんでいる。市は、フランスに民営部門が存在することを示し、言い逃れをするが、再公営化の進行は事実である。水は人権、水の正義、水はみんなのもの・利益のために使うなといった活動が世界各地で生まれ、国連も水を人権とする見解をとるようになった。新自由主義による「水は公共財ではなく、商品」とする見方は否定されるようになった。
このような状況下で、外資参入も想定される日本最初の水道コンセッションをすすめる浜松市の動きは、歴史に残る愚行である。浜松市はPFIの洗脳から覚醒し、公営の強化をすすめ、水源の分散化などの水をめぐる諸課題に率先して取り組むべきである。