1027武田かおり講演「ここが問題!大阪・浜松水道民営化」

 

 20181027日、浜松市内で大阪のAMネットの武田かおりさんが「ここが問題!大阪・浜松水道民営化」のテーマで講演した。集会には20人ほどが参加した。

 以下は、武田さんの講演をまとめたものである(文責 人権平和・浜松)。

 

 浜松のみなさん、こんにちは。AMネットの武田かおりです。きょうは、水道民営化の問題点をあげ、浜松の水道の現状とコンセッションの動き、大阪での水道民営化ストップの活動について話したいと思います。

 

 ●どうなってるの?水道民営化

 完全民営化をすることで、固定資産税を支払うことになり、撤退も困難となります。完全民営化よりもPPP/PFI方式の方が、民間企業にとって都合がいいのです。そこでPPP/PFI方式を使い、所有権を行政に残し、民間企業が経営権を得て、公共サービスの提供をおこなう手法をとるのです。

 

このPFIの手法のひとつがコンセッションです。それは、施設の所有権は移転せず、民間業者に事業の運営権を長期間売却するというものです。実質的にだれが経営のハンドルを握っているのかが問題であり、コンセッションは民営化そのものです。

このような手法は「利益は民間に、リスクは行政へ」と振り分けるものとして、国際的に批判されています。

 

コンセッションにはつぎのような問題があります。

水道は地域独占企業となる。株主配当などにより、市民への利益の還元が減少する。株主の利益と市民の利益が一致するわけではない。公共サービスの公平性と利潤の追求とは、相反する。行政の現場能力が失われ、監視やモニタリングができなくなる〔ブラックボックス化〕。代替の企業は少なく、契約解除は困難であり、事業者の意のままに運営される。行政・市議会の関与は大幅に減少する。料金が高騰していく危険が強い。民間企業は長期的な投資には不向きであり、施設更新が遅れる。民間企業が大災害で対応できるのか、他の自治体を支援できるのかは不明である。ラチェット・ISDS条項などで外資によって国際法廷にうったえられることもある。

 

 イギリスでは20181月に、PFIを請け負っていたカリリオン社が破たんし、行政が肩代わりしています。イギリスの会計監査院やヨーロッパ会計監査院の報告では、PFIが公的財政に恩恵をもたらすデータや証拠が不足し、多くのPFIプロジェクトでは通常の公共入札より40%割高となるなどと指摘されています。イギリスの世論調査では、水道の再国営化を求める声が70%を超えています。

 

 しかし、日本ではPFI法改正など、コンセッションが一層推進されています。水道や公共施設などへのPFIがすすめられ、ワンストップの窓口がつくられ、総理主導でのPFIが推進されています。運営権の移転を許可する条例を自治体がつくれば、議会にPFIの実施を事後報告で済ませることができるようになります。政府はPPP/PFI手法を優先するよう、自治体に要請しています。

 

 ●どうなっているの?浜松市の水道

 浜松市は他の都市と比べると、政令指定都市で2番目に安い水道料金です。「チーム水」による20183月の調査「人口減少時代の水道料金 全国推計推定結果(改訂版)」(新日本有限責任監査法人・水の安全保障戦略機構事務局)では、浜松市は2014年に16%の値上げで2040年までは黒字と推定されています。あと22年は黒字とされています。

ところが、新日本有限責任監査法人も関与しているのですが、民営化を想定した浜松市のコンセッション導入調査可能性業務報告書では2046年までに46%の値上げが必要とされています。コンセッションを入れても、大幅な値上げが想定され、VFM3から4%程度とみなされています。この違いはどこから来るのでしょうか。

和歌山市の資料を見ると、これまで浜松市は職員数を減らし続けており、もうこれ以上減らせない状態です。民営化のコストカットの多くは人件費のため、VFMを計算しても低い値しか出ないのでしょう。

 

浜松市の水道の特徴をまとめてみます。

同じ会社の出した試算なのに、16%の値上げで今後22年間黒字、一方浜松市での資産は2046年までに46%の値上げが必要とする試算の根拠は怪しいものと思います。VFM34%では民営化のメリットとは言えるのか、大きな疑問です。民営化されればさらに人員は減らされるでしょう。サービスは悪化し、ノウハウは失われ、持続した経営はできなくなり、災害時での対応にも支障が出ます。民間会社はダウンサイジングしたがらないでしょう。すっぱりとダウンサイジングされれば、住めない地域ができます。旧管理水道地域は民営企業によって除外される可能性もあります。

浜松市の議会の定数は45人ですが、自民党が20議席あり、反対の意思を持つものは共産党の5議席、一人会派の2議席です。水道は建設消防委員会で審議されますが、その委員長は自民党であり、最大会派の自民党の動向がカギを握ります。201810月の市議会では自民党はコンセッションに賛意を示してはいません。

 

●ストップ水道民営化の声を

民営化によって外資が参入することにもなりますが、それは保守系も懸念しています。運営会社の株式が公開されれば、海外の資本が運用利益を求めて買い取るでしょう。外資は水道経営に関心は無く、損得だけをみているのです。海外では民営化が失敗している事例が数多くあります。

市民の側の、水道民営化は時代遅れ、再公営化が時代の流れという主張が浸透し、市民があちこちで、自分の言葉で、水道民営化はやめるべきと語り始める状況をつくりましょう。議会に陳情する、議員に呼びかける、映像をアップする、チラシやパンフレットを作成し、配布する、集会を持つなど、さまざまなかたちで、ストップ水道民営化の声をあげることができます。

大阪市議会では、水道民営化の計画案は過半数をとることができず、審議未了で廃案になりました。市民が粘り強く訴えることで、このような状況になりました。

浜松の動きをみると、来年4月以降が正念場になるでしょう。浜松のみなさんの市民活動に期待します。