11・11 「ここが問題!浜松水道コンセッション」集会報告
2018年11月11日、浜松市内で辻谷貴文さんを講師に浜松の水道民営化の問題点を考える集会を持った。集会には30人が参加し、水道の民営化をどう止めるのかをテーマに議論した。
以下は、集会での講演や討論を聞きながら、感じたことである。
水道は人口減、老朽化、料金減少、と人・物・金の3つの問題を抱えている。そのなかで、ライフラインである水道事業の基盤強化のために検討会がもたれ、水道法の改正をすすられたが、官邸の圧力で、コンセッション方式・運営権の設定が入った。
コンセッション導入の背景には、日本政府によるPPP/PFI推進がある。2013年の日本再興戦略の閣議決定ののち、インフラの公共による管理から民間事業者による経営への転換をすすめ、その手法としてコンセッションを導入しようとしている。公共サービスや資産の民間開放、公共サービスの産業化などと言っているが、要は民営化の推進である。
水道法改正案での運営権の設定では、施設は自治体が所有し、事業認可権が自治体に残るようになっている。しかし、民間企業が実際の事業を進め、災害時のリスクはできるだけ自治体に負わせ、料金からの収入を民間企業が得るという仕組みとなる。
改正法案では、運営権の設定には厚労大臣の認可が必要とされ、認可基準にハードルが設けられたように見える。しかし、法案成立後に、政府方針での変更が可能である。自治体はモニタリングで運営権者の事業を検証することになるが、自治体には技術も人材もなくなり、モニタリングする能力は失われる。モニタリングを外部委託することになり、客観的かつ公正なモニタリングは困難になる。
コンセッションでは利益が追求され、水道料金から利潤や投資の回収がおこなわれる。民間資金の調達で運営権対価が支払われるが、利潤・配当付きで回収され、その分は市民からの水道料金でまかなわれる。水道料金では自治体と企業との水準設定と引き上げをめぐる対立が起きても、企業側の要求通りにすすむことになる。
浜松市はコンセッションを運営委託方式とし、完全民営化ではないと強調しているが、コンセッション方式は民営化である。VFMの記載は絵にかいた餅である。いざというときに運営権を市が取り消すとしているが、できないだろう。
運営企業が破綻した場合、浜松市にはスムーズな給水ができる技術が残っていない。民間ノウハウや創意工夫が示されているが、具体的ではない。
下水道の契約書では、95条の情報公開と96条の秘密保持は二律相反関係となる。情報公開は限られる。市がやることを市民が監視できる保証もない。58条にある第三者機関が、公正・専門・民主的なものになるのか、信用できない。
イギリスの官民パートナーシップ(PPP)の大手請負企業であるカリリオンが、2018年1月に倒産した。同月、イギリスの会計検査院は、「多くのPFIプロジェクトは、通常の公共入札プロジェクトより40%割高」「公的財政に恩恵をもたらすというデータは不足」と報告した。さらにイギリス政府は、「今後新規のPFI事業は行わない」と宣言した。
必要なのは公的な倫理と確かな管理、公務員によって提供される公共サービスである。市民の金がグローバルファンドに搾取されている。
パリ市の水道は、1985年から2009年までの25年間、スエズ、ヴェオリア系の民間企業によって経営されてきたが、その間、不透明な会計による利益隠し、企業グループ内での資材調達による過剰請求、必要な再投資の不備などがあり、水道料金は値上がりした。このような状況を受けて2010年に再公営化、多くの事業改革が行われた。株主配当や親企業への収益還元の必要がなくなり、事業一元化で経営・運営が効率化され、2011年には、水道料金は8%値下げされた。
竹中平蔵氏とともに菅官房長官の下で大臣補佐官としてPFIと水道民営化を進めてきた福田隆之氏が11月初め、辞任に追い込まれた。2016年・17年のフランスへの水道調査旅行はコンセッションの宣伝のためのものだったが、水メジャーによる接待旅行とうわさされている。水道民営化で利益をあげるのはグローバルな投機マネーである。日本の企業にもそれほどの利益はない。ピンチは、チャンスである。
(T)