侵入者         高橋 恵理

 

 

もうずいぶん前からわが心の奥深くに入り込んだ侵入者がいる

2003年10月23日、東京都は教員から内心の自由を奪った

儀式では日の丸を掲げ君が代を歌うことが義務付けられた

人のこころにずかずかと侵入し「君が代を歌え」「日の丸を掲揚せよ」と脅した

 

儀式の前にはこころがきりきりと痛かった

自分のこころに従って行動したいのに侵入者は義務に従えと強いる

従わないと処罰が待っているぞと脅迫する

いやいや私は自分の心に従うのだ 侵入者の言うなりになるものか

 

しかし私は一度だけ自分のこころに沿うことができなかった

侵入者に負けたのだ 自らの内心の自由を守れなかった         

その後も私のこころに侵入者は居座り続けている

あらたな仲間を引き連れて

 

私のこころに増殖する侵入者はなかなか手ごわい

次々と許しも得ずに入り込んできて

何も考えずに従っていればいいのだとささやく

私たちはあなたの安全と幸せのために働いているのだから

 

そうはいくものか 街に出て自分の思いを吐き出したい

道行く人に伝えたい そして気づいてほしい

あなたのこころもいつのまにか侵入者が住みついて

あなたを支配し始めていることを


闖入者      高橋 恵理

 

 

数ヶ月前から私の心にいつの間にか闖入したものがいる

そいつは困ったことにすっかり居ついてしまった

そして私のこころをかき乱し ときに舞い上がらせる

 

ここ数年私の心にこんなふうに入り込んだ闖入者はいなかった

こころ模様がこんなに変わるなんて思いもよらなかった

迷惑だから出て行ってと闖入者にささやいてみる

そのすぐあとにいつまでもそばにいてほしいとつぶやいている

 

人のこころに忍び込んだ闖入者は

こんなにも勝手に人の気持ちを操れるものなのか

わが心をこれだけ好き放題かき回して

これからどうする気なのだろう