旧強制動員委員会報告書・口述集などの日本語版4冊を発刊

 

20191216日、ソウルで、旧韓国強制動員委員会(2004年から2015年)が作成した報告書と口述集などの発刊記念会が、日帝強制動員被害者支援財団の主催によってもたれた。旧韓国強制動員委員会とは、韓国政府内に置かれた日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会、のちに対日抗争期強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等支援委員会と名称を変えた組織のことである。日帝強制動員被害者支援財団はこの旧委員会の事業を継承する財団であり、韓国の行政安全部の下にある。

今回発刊された本は、口述集の「ポンポン船に乗って海の幽霊になるところだったよ」(忠清道から福岡、長崎、佐賀など九州への動員)、「朝鮮という私たちの国があったのだ」(大阪造兵廠、捕虜監視員など軍属として日本、東南アジア、中国への動員)、調査報告書の「朝鮮人BC級戦犯に対する調査報告」、「ハワイ捕虜収容所における韓人捕虜に関する調査」である。また、韓国語の「太平洋戦争実記集」(沖縄の阿嘉島への動員、特設水上勤務103中隊)も発刊された。

これまで、旧委員会によってシベリア抑留、崎戸炭鉱、長生炭鉱、広島長崎原爆などの調査報告書の日本語版が出されてきたが、委員会の解散によって発行は停止した。2018年に韓国を訪問した際、その再開を目指して支援財団と意見交換し、韓国の行政安全部には要請文を送った。その結果、2019年に入り、支援財団が日帝強制動員出版事業をすすめて日本語版を発行することになり、強制動員真相究明ネット内にその発行に向けて新たに日本語翻訳協力委員会を置くことになった。

戦争は国家による暴力であるが、それを正当化するためにさまざまな美辞麗句が使われる。その暴力の実態を戦争被害者の視点でとらえ直すことが大切である。韓国の強制動員被害者の証言は戦争の実相を示すものであり、貴重なものである。その翻訳本を発行することで、これまで知ることのできなかった多くの事実を知ることができる。日本側の歴史認識にとって重要な資料となる。その発行は、真実を伝え、歴史の歪曲をただすことにつながる。

口述記録は強制動員された人びとが生きぬいてきた物語である。60年以上前の出来事には不鮮明な部分があるが、それを含めて歴史の証言として受け止めたい。その体験からの思いを分かち、分析しよう。その戦争動員の体験を思想化することで、戦争動員をおこない、その責任をとることなく、いまも事実を否認しようとする動きを、変えていく力とすることができるだろう。