2・8水道民営化を考える岡崎の集会
2020年2月8日、愛知県岡崎市のむらさきかんホールでの集会に参加した。岡崎市は2017年2月に厚生労働省が水道民営化を働きかけた全国19自治体のうち、愛知県で唯一働きかけを受けた市だ。そしてすでにヴェオリア社が事務所を市庁舎の中に構え「受付」、「検針」、「システム開発」等の業務を行っている。
集会は映画「どうする?日本の水道」鑑賞の後、尾林芳匡弁護士による「PFI法と水道民営化の問題点について」という講演に入った。講演で尾林弁護士は公衆衛生の国の責任の重大性を説いた(憲法25条2項)。2017年5月三井住友銀行の「公共事業が落ち込む中で上下水道設備投資は下げ止まり、更新需要増の見込み」という提言等を紹介し、2018年の水道法改正に経済界の影響が大きかったことを示した。しかし、2018年10月12日の新潟県議会の意見書等に見るように今回の水道法改正への批判はかってない程大きく、市民運動も大きなうねりとなっている。民営化賛成の中でよく聞かれる「民間に任せれば経費が安くなる」に対しても、尾林弁護士の長年の研究の中から高知病院赤字・汚職・PFI契約解除や他の多くの例を示しながら、PFIの問題点を示した。Concession(コンセッション)の語源は「利権」であり「運営権」という訳語を使用しているが、運営権を利権と置き換えて読み直すとすっきりすることが多いと述べた。最後に浜松市の下水道コンセッション契約書の「住民を敵視するような条項(50条)」「情報公開がされない条項(95,96条)」「監督はセルフモニタリング(57条)」等多くの矛盾点を指摘して講演は終わった。
その後交流会がもたれ、西尾市のPFI事業の裁判が話題になった。西尾市は2011年4月一色町、吉良町、幡豆町の3町を編入合併し市域を2倍以上に広げた。このとき多くの公共施設も重複するようになり、これを解消するため、後に第9回ファシリティマネジメント大賞の奨励賞に輝く「西尾市方式」というPFI事業を採用した。「ゼネコンを特別会社に加えず、地元企業が主体となる」「一つの事業者に長期間(30年)、総額327億円の事業を一括して任せる」という2つの特徴をもっていた。2015年3月、民間事業者向けの説明会を開いたところ企業の反応は悪く、市内でスイミングスクールやスポーツクラブ、スーパー銭湯を運営する企業グループ一つだけが手を挙げた。2016年1月、グループによる公開プレゼンテーションが開催され参加した多くの市民を仰天させた。新設する公共施設にフィットネスクラブやスケートボード場を新設するプランを示されたからだ。市民は交渉内容を知ろうと市に情報公開請求をしたが「民間事業者の著作権や意匠権などが絡むので市の一存で開示判断できない」と黒塗りの資料ばかりであった。これ以降、紆余曲折あったが計画を一部変更(契約期間を15年、契約金額を198億円)し、2016年PFI事業は正式にスタートした。しかし、各事業の内容が明らかになるにしたがい市民の反発はましていった。たとえば、市役所の吉良支所を建て替え、支所機能と共にフィットネスクラブ(浴室付き)を併設する計画や寺津校区に小中学生と市民が共有する温水プールを新設することなどについてである。こうした市民の反発がうねりとなり、2017年の市長選、市議選で、慎重派の市長が誕生しPFIを見直すことになった。これに対し市と包括契約を結んで事業を担当していた特定目的会社「エリアプラン西尾」は事業の中断で発生した約6000万円の増加費用の支払いを求める訴訟を名古屋地裁に起こした。
西尾市のことは週刊ダイヤモンド2018/4/14を参考にさせてもらった。隣県とはいえ浜松から静岡市とほぼ同じ距離にある所でこのようなことが起こっていた。
PFIという得体の知れない方法でやらなくても、問題はいろいろあっても市民の手の届く公営事業の大切さを噛みしめた一日だった。(池)