12.13スーパーシティ構想の問題点
2020年12月13日、浜松市民有志のよびかけで、「スーパーシティ構想の問題点」の題で内田聖子さん(アジア太平洋資料センター)の講演会がオンラインでもたれた。
講演で内田さんは、スーパーシティとは何か、その政策的背景、スーパーシティをめぐる論点、浜松市など自治体の動きの順に話をすすめた。概要は以下である。
2020年9月、浜松での内田さん
日本政府がすすめようとしている「スーパーシティ」とはAIとビッグデータを活用し、社会の在り方を根本から変えるような都市設計をいう。政府は「まるごと未来都市」を目指すが、日本には規制があり、国家戦略特区はその規制をはずそうとしている。政府のいうスーパーシティとは、先端技術を利用してインフラやサービスを効率的に運用するというスマートシティを個別的であるとし、インフラやサービスを包括的に進めようとする形態である。スマートシティには巨大IT企業、コンサル企業が参加してプロジェクトがすすめられてきたが、スーパーシティにはさらに多くの企業が外資を含めて参入する。。
スーパーシティの政策的背景には、第2次安倍政権での新たな地方統治政策、公共サービス分野での産業化(民間企業の参入)、未来投資会議での「Society5.0」の推進とAI,ビッグデータなどの先端技術の社会への導入、デジタルファースト法の制定と「IT新戦略」の設定(2019年)、ポストコロナ戦略としてのデータ統合の動きなどがある。内閣府はスーパーシティに10の領域(移動、物流、支払い、行政、医療介護、教育、エネルギー、環境ごみ、防災緊急、防犯安全)を示し、そのうち少なくとも5領域を計画に含むものをスーパーシティとみなし、推進しようとしている。この計画の核心には、データ管理があり、「国家戦略特区データ連携基盤」を作り、そのデータに各都市が接続する形が想定されている。
しかし、このスーパーシティ構想には、住民合意がなされないまますすめられるという危険性がある。行政が応募し、国家戦略区域会議で計画が立てられることになるが、そこには住民の参加の規定がなく、自治体が必要とすれば参加できる。スーパーシティに参加したくない人の権利は無視されるのではないか、究極は自治体の民営化ではないのか、民主的なガバナンスと適正な規制がなされないのではないか、などの疑問が出されている。トロントでは企業が利潤を得られなくなり撤退を表明した。
個人情報のデータ管理の問題もある。一元管理はしないというが、マイナンバーとの連動が議論されるなど、一元化の危険がある。さらに個人情報を公益を理由に民間企業が扱うことになる。本人の同意なく、データが管理される。AIによる事故が起きた場合、その責任の所在も不明確である。韓国の仁川市松島では事業がうまくいかず、米国企業のゲイルが韓国企業のポスコと対立し、ゲイルが損害賠償を求め、韓国政府を訴える事態になっている。
スーパーシティに関する法案は2020年5月に可決され、政府は21年3月ころには5の自治体をスーパーシティに認定する動きである。浜松市は2019年10月にデジタルファースト宣言をおこない、20年4月にはデジタルスマートシティ官民連携プラットフォームを設立した。20年12月は「浜松デジタルスマートシティ月間」とした。コンサル企業は日本総合研究所である。鈴木市長は積極的に対応すると話している。浜松市も多様なサービスをあげ、スーパーシティに応募する動きである。
浜松市のデジタルファースト計画をみると、「自治体運営のデジタルファースト」と記されているが、それは、自治体サービスの民営化である。また、計画では「自治体の生産性向上」がうたわれている。しかし、公共サービスでは生産性を言うべきではない。生産性の名で市民へのサービスが選別されるのではないか。この計画案は、国のいうバラ色の未来を丸写しにしたものである。(以上要約)
この問題提起を受け、討論がなされ、以下のような意見が出された。
住民サービスをすべてネット化するのは不可能であり、使える人だけが利益を得るのは不平等
住民サービスの外注により個人請負のような労働形態も増えるのでは。
技術によってあらゆる課題が解決するというのはバラ色の宣伝であり、市民の目線ではない。リスクは示されない。
自治体の職員を減らすことが狙いだろう。
5Gでは電磁波問題がある。環境への影響に不安がある。
マイナンバーと連携させ、全個人情報を集めたいのだろう。情報の流出が問題となる。
マイナンバーカードを政府は普及させたいのだが、皆危険性を感じているから、普及しない。義務化させたいのでは。
マイナンバーと銀行との紐付けを市、市民の財産を管理しようとしている。
日本での政府による個人情報保護の規制を強くするべき。
浜松市は12月17日に説明会を開くなど積極的であり、問題あり。
浜松市の応募の動きを公開させる必要がある。
国家戦略区域会議に住民が参加できるようにすべきであるし、構想そのものに反対する動きが必要。