1・17 浜松市スーパーシティ構想を考える 岡田知宏講演

 

2021117日、浜松市のスーパーシティ構想を問う集会がもたれ、岡田知宏さんが、浜松市スーパーシティ構想の動きを批判する講演をおこなった。講演の後、市民による「スーパーシティを考える会」が設立された。

岡田さんは講演で次のように話した。

新自由主義による行財政改革の中で大型合併がすすめられたが、それは地方公務員を減らし、公衆衛生機能などのサービスを縮小させるものであった。例えば合併で、浜松市では保健所は一つになった。大阪ではコロナ対応を困難にさせている。このような新自由主義の動きの中で、スーパーシティ構想が出されてきた。

このスーパーシティ構想推進の背景には、安倍政権での地方統治の強化、地方行政や社会保障分野などの公共サービスでの産業化、経済界によるAIICT重点投資戦略などがある。政府は「地方創成」を打ち出し、公共分野への企業参入による経済成長をねらい、公共サービス、公共施設の市場化を進めている。個人情報を含むビックデータも利用し、経営への資源とする動きである。

このスーパーシティの実現に向け、20195月にデジタルファースト法が制定され、国と自治体によるデータ統合やマイナンバーカードの普及の加速化がすすめられている。政府は「自治体戦略2040構想研究会」を設置し、職員数半減、公・共・私による「プラットホームビルダー」の設置、圏域単位での行政などを提言している。この先取りとして、デジタルガバメントづくり、電子全面申請化、ビッグデータの活用などがすすめられている。そこでは、民間企業が自治体の計画や施策を策定することもおこなわれている。また個人情報保護についてはその規制を弱めることが狙われている。       

浜松市の動きをみれば、浜松市は総務省や国交省に職員を派遣し、浜松市へと官邸が推進するアドバイザーを「浜松市フェロー」の名で採用している。スーパーシティのコンサル企業である日本総研の研究員が官邸に出向し、さらに浜松市にも派遣されている。浜松市では、大型合併後に行政改革の名で地域自治が破壊され、民営化がすすめられてきたが、現在は、スーパーシティを目指す動きである。

201910月、浜松市はデジタルファースト宣言をおこない、20204月には、「デジタルスマートシティ構想づくりのための官民連携プラットフォーム」を設立した。このフォームには浜松市フェローをはじめ、パートナー会員として事業に意欲を示すNTTドコモや日本電気などの企業も参加している。同年11月には、浜松市デジタルスマートシティ構想案を発表した。そして、20211月に、政府による国家戦略特区法に基づくスーパーシティ構想に立候補した。さらにデータ連携基盤整備や先端的サービスを実施する企業も募集している。浜松市はデジタル推進事業として、保健・福祉、自動運転、教育、テレワークなどの分野をあげ、デジタルガバメント、官民共創による推進などを示している。

しかし、このような「デジタル革命」で住民は救われるのだろうか。

それにより潤うのは内外の情報技術系の大企業である。これらの企業は地方自治体の公共サービス部門に入り込んでの市場の拡大を狙っている。そこには、「儲ける自治体づくり」という考えがある。これは「地方創成」の思考の根幹にあるものだ。自治体への企業の参入によって利潤が追求され、住民サービスは後退する。実際、大阪では、維新政治によるリストラや職員削減、事業の外注化により、サービスが後退している。

また、地方自治が破壊されていく。スーパーシティを推進する増田寛也は、行政サービスの一元化により地方自治体が団体自治の役割を終える、あとはコミュニティ活動に関する住民自治でいいとまで記している。しかし、企業の自治体情報への参入とそのアウトソーシングの拡大は、官製ワーキングプアを増やし、公共サービスを低下させる。

そして、個人情報の保護が保障されず、経済成長が優先される。個人の尊厳を前提とし、個人情報保護が人権と民主主義の前提であることをふまえるべきである。

地方自治体は一部企業の利権のためではなく住民のものである。自治の目的は利益の追求、稼ぐことではなく、住民の福祉の向上にある。住民の意向を無視した政策を行ってはいけない。巨大企業の所得は市外に流れていく。地域の経済発展にはつながらない。地域住民の主権、地域内経済の循環を進めるような政策をとるべきである。〔文責、人権平和・浜松〕