2021.1 ソウル中央地方法院「慰安婦」判決によせて
2021年1月29日、戦後補償裁判の現状と課題の題するフォーラムがもたれ、1月8日のソウル中央法院での「慰安婦」判決について、議論がなされた。ここでは、その判決の内容と意義についてまとめておく。
この訴訟は「ナヌムの家」に居住する元慰安婦12人が2013年8月に日本政府の法的責任を求めて調停を申請し、2018年1月の訴訟となったものである。
1月の判決は、日本軍慰安婦制度が日本政府によって戦争遂行を目的に実行されたものであり、不法行為にあたると認定し、その制度は国際条約や日本の刑法に違反するものであり、その法的責任を認めた。また、被害者の損害賠償権は消滅せず、被害者の裁判請求権を重視する立場をとり、「国家免除(主権免除)」の法理を排斥し、日本政府に賠償を命じたものである。
主権を有する国家が外国の裁判権からは免除されるという「国家免除(主権免除)」論への対応が焦点であったが、判決は、国家より人権を重視するという新たな国際法の解釈を採用し、国家免除には重大な人権侵害などの人権例外があり、今回の慰安婦制度は「人道に反する犯罪」であり、そのような犯罪に対して国家免除は該当しないとした。
判決は被害者の尊厳を回復し、戦時の性暴行被害者の被害救済をすすめるという内容であり、被害者の30年の活動がついに勝訴したということができる。
今回の判決は、人権侵害に対する国家免除の制限を示すアジアでは初めての判決であり、司法による正義回復の道を開いたものということもできる。
しかし、日本政府は主権免除を主張し、判決を国際法違反とするとともに、日韓請求権協定で解決済み、2015年日韓外相合意にも反するものとしている。そして韓国政府に国際法違反の徐内を是正することを求めている。
日本政府はこのような旧態依然の国家免除論を改め、植民地支配とその下での慰安婦制度が人道に反するものであったことを認め、その歴史を反省し、被害者救済にむけて協議をすすめるときである。国際法違反をおこなったのは日本政府であり、日本が加害者であったことを自覚すべきである。 (t)