浜岡原発の敷地および周辺の断層に関する質問と要請

2021年2月、浜岡原発の再稼働を許さない静岡県ネットワークは原子力規制委員会に対して「浜岡原発の敷地および周辺の断層に関する質問と要請」をおこなった。浜岡原発の敷地・周辺にあるH断層系については、規制委員会の審査会合でH断層系に軟弱部分があり、そこが活断層である可能性も指摘されている。県ネットはそれに関する説明やテータの提供を求めた。
 2月7日には静岡市内で立石雅昭氏が「浜岡原発廃炉・日本から原発をなくす静岡県連絡会」による静岡市内の集会で講演した。立石氏は講演で次のようにまとめた。
 浜岡原発敷地内外に多数分布するH系断層について,その活動時期に関する重要な指摘が、規制委審査会合で行われている。 ・中部電力の膨大な資料を詳細に検討する中で、断層粘土の固結度からして、「H系断層の新しい時期の活動を否定できない」との主張は,きわめ て重要である。 しかし、こうした「厳密な審査」も基本、中部電力の資料に基づくしかないのが現状である。 規制委における審査を補強し、中部電力をして、再稼働を断念させるには、市民団体としての調査に基づく、電力と規制委への要請活動が必要だ。 活断層露頭(段丘礫層を切断する断層)を見いだし、断層の走向傾斜を測定するとともに、断層の性状を記述すること。 その結果を、電力、規制委に解析を要請するとともに、市民に知らせ広げることが大切である。

以下は県ネットの要請書。


原子力規制委員会  更田豊志 様

 浜岡原発の敷地および周辺の断層に関する質問と要請

浜岡原発の再稼働を許さない静岡県ネットワーク 

2020年7月3日に行われた「原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合第871回において、貴委員会から重要な指摘がありました。以下の点について確認および資料の提供をお願い申し上げます。

 

1.H断層系の活動時期について(中部電力が100~200万年以上前に断層活動を終了したと主張していることに対し)内藤調整官は針貫入試験(はりかんにゅうしけん)の結果は「最近動いた断層と遜色ない柔らかさなんですよね」と指摘しました。

  これを言い換えれば「針貫入試験の結果は断層部分が軟らかく、12~13万年前以降に活動した活断層の可能性も否定できない」ということでしょうか。針貫入試験のデータも示した上でご説明下さい。

 

2.針貫入試験の結果は中部電力も意識しており、「断層面の細粒部分について、重力で水が上から下に通過し続けたために固結せず、軟らかいのだ」と主張しました。これに対し、内藤調整官は「解釈として水みちになって固結が遅れましたと言っているんだけど、それは解釈であって逆に言うと柔らかいものについて、後から動いたということについて否定ができていないと思っています」という内容の発言をされました。より正確、詳細な説明をお願い致します。

 

3. 中部電力は「H断層系(原発敷地より海側のH-m4から北側のH-9まで14本)が同時にできた」 と主張しています。仮に数百万年前にH断層系が同時にすべてできたにせよ、その後活動しなかったとは言いきれません。また、北端にあるH-9断層が、最後の最後まで他の断層群と同時に活動したとは言い切れません。H-9断層が活動に参加しなかったこともありうるからです。貴委員会が「H-9断層がH断層系を代表できる」という中部電力の主張をしりぞけたことは理にかなっており、今後とも全断層について詳細に調査・検討して下さるよう要望します。

 

4.H断層系が活断層であるかどうかを明確にできるのは笠名礫層(7~10万年前頃堆積)や御前崎礫層(5~6万年前頃堆積)がH断層系の上に載っている場所だと考えています。その点でBF2トレンチやBF3トレンチの掘削でわかった資料は貴重だと思います。データがあれば提供して下さい。

 

5.BF2トレンチの約40m南側に、相良層の上に笠名礫層が載り、相良層を切った断層が笠名礫層の途中まで達している露頭(別掲資料参照)があります。この断層は約8万年前の笠名礫層堆積中に生じ、その後さらに笠名礫層が堆積を続けたことを示すもので、活断層と言うことができると考えます。東西方向の正断層で西側が40~50cmほど下がっています。この断層をどのように評価していますか。H断層系との関連を含めご説明下さい。

 

6.中部電力は、この審査会合で「H断層系が敷地内の断層を代表できる」と認められたと報道しています。しかし、H断層系が約7~10万年前に活動したとすればH断層系に切られている南北方向の断層が12~13万年前以降に活動したとしても矛盾はなく、その場合、活断層だと言えます。したがって、南北方向の断層を含め、H断層系に切られている断層の針貫入試験を行い、全ての断層を注意深く調査・検討されるようお願い致します。

 

7.2018年8月4日に行われた審査会合で石渡委員が「H断層系が未固結または半固結の時代に活動してできたとするならば健岩部と断層部の帯磁率は同じになるべきだと思うんですね。相良層がやわらかい時代に動いたならば、磁性を担う磁鉄鉱が全く破砕されて小さくなるとかはないと思うんですがね」と指摘しました。H断層系が相良層固結後にできた可能性があることを示唆する実に鋭い指摘だったと思います。今後、帯磁率の調査をさらに続け、一部のデータを除外した一括統計でなく、各断層別に帯磁率データを整理していただきたいと考えます。