赤いささ舟 欲望の暴力に抗う光
その企画で、ナカムラマサシは福用駅近くの公園に「OPPAI」を展示した。
3基のOPPAIを数多くの「赤いささ舟」が囲むというインスタレーションである。
赤いOPPAIは怒り、黒は真実、虹色は希望を示すものである。
そのOPPAIを人々が折り込んだささ舟が取り巻く。
ささ舟が風に揺られては、祈りの流れを形づくる。
3月27日にはトーク&ライブがもたれ、
赤いささ舟展示のフクシマ、ジャワでの体験談、
赤いささ舟によせた追悼歌が歌われた。
欲望の暴力はフクシマ原発事故を生んだ。
そこでの被害の実態は明らかにされてはいない。
その事故の原因は今も明らかにされていない。
またその事故の責任はだれも取ろうとしない。
帰還と復興と安全が宣伝される。
その「聖火」の先にあるものは偽りの世界である。
赤いささ舟は、閉ざされた多くの生の声に耳を傾け、
失われた人々の魂を呼び寄せる。
その声を聴き、原因をつかみ、責任をとらせ、実態をつかもうとする。
偽りの未来を拒み、別の道を探す。
新たな怒りを体現し、真実を追及し、希望の光となる。
身を切るほどの悲しみに支えられた赤いささ舟は、
欲望の暴力の流れに抗し、天空を漕ぎすすむ。(T)