8・6 自衛隊名簿提供問題、浜松市に要請

2021年8月6日、浜松市に以下の要請をおこなった。
文書行政課の担当者は、自衛隊による名簿の閲覧もCDでのデータ提供も同じことであり、法と条例に依拠した業務であるという対応だった。
名簿をCDで提供することへのためらいも疑念も全く感じないようすであった。個人情報を特定の組織にデータごと渡すことヘの問題意識、、市民の個人情報保護・権利擁護の視点、志願隊員募集業務への加担ヘの批判意識などは全く持ち合わせていないようだった。申し入れに対して、言われなければ記録しようとしない姿勢だった。名簿提供が個人の権利侵害と考える市民の存在に耳を傾けるという心は持ち合わせていないようだった。



                             2021年8月6日

浜松市長様          

                             人権平和・浜松

                             ピースサイクル浜松

 

自衛隊への電子データでの個人情報の提供中止を求める要請書

 

 浜松市は2020年から自衛隊募集対象者の電子データ(CD)を自衛隊に提供している。2019年度までは自衛隊が住民基本台帳を閲覧して情報を収集していたが、市は2020年度には7580件、21年度には7137件を電子データで提供した。このような電子データでの個人情報の提供中止を要請する。

 2015年の日米防衛協力の指針の再改訂と安保法制定により、自衛隊は米軍と共にグローバルに展開し、軍事行動を展開できるようになった。当時の安倍政権は憲法改悪を狙うとともに、2019年2月、自治体が隊員募集への協力を拒否しているなどと喧伝し、自治体に募集の名簿閲覧から名簿提供を働きかけた。それにより川崎市、京都市、大阪市、熊本市、神戸市、岡山市などで名簿提供に関する動きがおき、浜松市も2020年にCDでの名簿提供を行うに至った。

安保法による自衛隊の海外での軍事行動や集団的自衛権の行使は日本国憲法の平和的生存権と第9条の戦争放棄規定に反する行為であり、憲法違反である。そのような違憲行為を進める自衛隊組織への名簿提供もまた、違憲である。

 憲法第13条では個人の尊重が明記され、生命・自由・幸福追求のための権利の尊重が記されている。自治体の持つ個人情報についてもこの個人の尊重の規定から遵守されねばならない。本人の同意もなく、自治体が市民の個人情報をCDに入れて自衛隊に提供する行為は、この個人情報の保護の原則に反する違憲行為である。

 個人情報保護では、目的外の使用が認められる例外もあるが、その提供により市民の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合には、提供してはならない。提供での「相当の理由」の解釈は、その運用において安易に拡大解釈されてはならない。個人情報保護が原則であり、自衛隊による隊員募集での名簿利用は、プライバシーの侵害にあたる。

 自衛隊は自衛隊法第120条で、自治体に必要な報告、資料の提出を求めることができるとするが、自治体が名簿提出に応じる義務はない。自衛隊による自治体からの提供名簿を利用してのDMなどの勧誘活動は特定業種による特権的活動であり、そのような活動に自治体は加担してはならない。閲覧許可を超えての、市職員によるCD名簿作成とその提供は自衛隊の勧誘行為への加担である。市職員の業務外の活動である。

 浜松市は平和都市宣言で、多文化共生や国際交流により、恒久的な世界平和に貢献する旨を記している。平和的生存権、戦争放棄、個人の尊重、個人情報保護は世界平和の基礎である。世界人権宣言第12条には、何人も、自己の私事、家族、家庭もしくは通信に対して、ほしいままに干渉され、または名誉及び信用に対して攻撃を受けることはない。人はすべて、このような干渉または攻撃に対して法の保護を受ける権利を有するとある。浜松市はこの精神をふまえ、市の保有する個人情報が自衛隊によって利用され、勧誘によって私生活が干渉されることがないように留意すべきである。

 以上、主権者市民として、自衛隊への電子データによる個人情報の提供中止を要請する。