1・16袴田再審・第6回,第7回公判

2024年1月16日、17日と静岡地裁で袴田事件再審第6回・第7回公判がもたれた。16日には110人ほど、第7回公判では120人ほどが傍聴を求めた。

16日の第6回の公判では、弁護側が袴田さんを犯人とする「証拠」がねつ造されたものであることを具体的に示した。

  

この日は、弁護側が犯行着衣とされた5点の衣類の長袖のスポーツシャツなどを示し、衣類はねつ造された疑いがあると主張した。衣類のシャツの血痕に位置と袴田さんの腕の傷の位置がずれているのである。

弁護側はズボンの共布の問題点をあげた。共布は犯行着衣とされた5点の衣類のうちのズボンの下の部分であり、袴田さんの実家で発見されたというものである。警察がベルトと手袋の捜索に入り、共布はそこで押収された。この捜査は警察の松本と岩田がおこなったが、ズボンの共布は5点の衣類を証拠とするためにねつ造されたとみられる。

また、弁護側は、袴田さんのすねの傷は逮捕当日の身体検査では記載されておらず、違法な取り調べでによってできたものである。それを専務と格闘してできた傷であると虚偽の自白をさせている、衣類の損傷はこの自白に合わせて作出されたものと主張した。

さらに弁護側は、遺体写真の分析から、被害者4人が縄などで縛られ刃物で刺され、複数人による恨みによる犯行とする見解を示した。

続いて17日の第7回公判では、弁護側が、取り調べでの録音テープや5点の衣類に付着していた血の色の問題を示した。録音テープの一部が法廷で再生され、警察が自白や謝罪を迫るが、袴田さんが否認する状態が示された。当時、取り調べは430時間、一日平均12時間も行われ、人権を無視した違法な取り調べだった。テープは強いられた自白の状況を物語る。

なお、再審請求の中で弁護側に開示された録音は47時間分であり、自白した場面は開示されていない。自白調書は45通作成されたが、死刑判決では1通が採用されたが、再審公判では検察側は証拠として採用していない。

5点の衣類には赤みがかかった血痕が付着していたが、弁護側は実験では一年以上味噌に漬けると血痕の赤みは消えてしまうと主張した。5点の衣類は袴田さんを犯人とするためにねつ造された可能性が高い。

今回の再審では、弁護団は死体の状況についての再調査をふまえ、この事件を金銭ではなく怨恨による複数犯によるものと主張する。袴田さんにはこの事件をおこす動機はない。被害者の遺体の首にはロープとみられる跡がある。胸には刃物の傷が集中し、歯が抜けるほど顔がひどく殴られている。顔が焼かれるが、衣服は焼け残っている部分が多い。極悪な行為であり、複数の暴力団関係者による犯罪のようだ。警察は真犯人の見当があったが、袴田さんを犯人に仕立て上げたともみられる。犯人のものとみられる黒革の財布の存在も問題とされる。

裁判所前では集会がもたれた。この事件では、警察は犯行凶器されたクリ小刀を取り扱っていたという沼津の刃物店での捜査で、写真を示して袴田さんが購入したという言質をとったが、それは誘導してのものとみられる。その刃物店の店主の子の高橋さんは再審公判に群馬から参加した。高橋さんは裁判所前の集会で、店が取り扱っていたのは135ミリの小刀であり、犯行使用の120ミリの小刀はなかったとし、警察が来て袴田さんの写真を見せて、ここで買ったという確認をとったが、それは店をえん罪の加害者にすることになったと話した。

今回の公判には日本プロボクシング協会の袴田さん支援者も参加し、これ以上袴田さんを苦しめてはいけないと呼びかけた。冤罪・東住吉事件の被害者、青木恵子さんも支援に駆けつけ、傍聴機会の拡大を訴えた。公判前の1月7日、袴田再審を担い車椅子で公判に参加してきた西嶋勝彦弁護士が亡くなった。弁護団と支援者はその遺志を継いで、再審無罪を勝ちとる想いを共有した。

  

裁判所前の集会で、参加者は、検察は証拠のねつ造を認め、有罪立証を中止しろ!裁判所は不当な傍聴制限をやめ、席を増やし、ビデオ会場を設定して傍聴の権利を保障せよ!裁判所は冤罪に加担するな!などとアピールした。  (t)