3・25強制動員問題の解決を!韓国原告の家族・遺族の声を聞く集い

2024年3月25日、強制動員問題の解決を!韓国原告の家族・遺族の声を聞く集いが東京の衆議院会館で開催された。会場には170人が詰めかけ、オンラインを含めると270人ほどが参加した。

集会の前、原告の家族・遺族は日本製鉄、三菱重工業での面会を求め、不二越前では抗議行動に参加した。しかし日本製鉄と三菱重工業は面会を拒否し、文書を直接受け取ることも拒否した。「担当者がいないから文書は受け取らない。」「置いていっても受け取るかは分らない」というのである。これまで三菱は原告が来れば応対し、話を聞いたが、今回は、問題は国と国とのものであり、解決済みであるとし、日本政府の主張に沿った対応へと転換した。


日本製鉄前


三菱重工前

このような、会わない、受け取らない、反省しないという対応に、原告の家族・遺族は「対等に扱われていない。建物は父の血と涙で染まっている。出てきて受け取るべき。」「謝罪も賠償もなく、未払のまま、判決にも従わない。許せない。」「(原告が)亡くなっても、最後まで闘う。謝罪と賠償を。」と怒りの声をあげた。この対応は、原告の家族・遺族だけでなく正義を求める人びとの尊厳を侵すものであり、韓国司法の判決も否認するものである。それは、日本政府の請求権協定解釈とそれに追随する企業の行為が、今も継続する国家暴力となって人びとの存在をうつという状況だった。怒りの声が雨天の東京駅周辺のビルの谷間に響いた。


不二越前

集会では、強制動員訴訟の日本製鉄原告李春植の長女の李杲賱(ゴウン)さん、三菱重工名古屋原告梁錦徳の長男の朴相雲さん、三菱重工広島原告鄭昌喜の三男の鄭鐘建さんが訴えた。

李杲賱さんは、父は103歳で今も元気だが、判決後6年が経つ。今日、日鉄に行ったが大きな建物のなかにいても会おうともせず、書類も受けとらない、とても卑怯な対応だった。日鉄が直接、謝罪、賠償をおこなうべきである。父は歴史を生き抜いた証人、第三者弁済は強制動員被害者を無視し、勝ち取った権利を否定するものであり、認められないと語った。

鄭鐘建さんは、父は三菱の広島工場に連行され、被爆した。韓国で被爆者の被害者運動をおこない、2012年に亡くなった。第三者弁済は加害者の三菱が責任を認めないものであり、受け取れない。父がどのような人生を送ったのか正確に知っている。お金よりも強制動員被害を認め、真の謝罪することが必要と話した。

朴相雲さんは、今日は三菱に門前払いされた、なぜこのような扱いなのか。三菱の勤労挺身隊に連行された母は日本政府と三菱の真摯な謝罪と賠償を求めてきた。韓国政府の第3者弁済に対しては、「飢えても死んでも物乞いのような金は受け取らない」と言っている。私も汚れた金はいらないと思うと語った。

 尊厳回復に向けて闘いつづけた親の意思は次の世代に継承されている。

原告の代理人の林宰成弁護士が韓国での強制動員訴訟の現状をつぎのように話した。

韓国大法院は2023年12月から24年1月にかけて三菱重工業3件20人、日本製鉄2件8人、不二越3件23人、日立造船1件1人の判決を出した。判決は2018年判決を再確認し、消滅時効の起算時点を2018年判決以後とした。この判決について韓国政府は第3者弁済をすすめるとしたが、財源が足りず、第三者弁済の説明はするものの実際には弁済をおこないえてない。

韓国政府は2023年7月に第三者弁済に反対する者の債権を消滅させることを狙い、一方的に供託を実行しようとした。しかし地方法院は「加害企業に免罪符を与えることになる」「慰謝料という顕著な制裁的機能が完全に没却される懸念」「事実上の債務免除や免責のような結果をもたらす」などの理由で供託を認めなかった。債権者の同意のなき供託は違法と判断したのである。大法院が同様の判断をすれば韓国政府の解決策は破綻することになる。

2018年判決以後の当該企業の三菱の特許権、商標権、日鉄のPNR株式の売却については審理が続いている。大法院の売却決定が出れば、競売の手続きがなされることになる。日立造船の場合、自発的な賠償ではなく、例外的な担保供託によるものである。強制動員被害者の抵抗は大法院判決の効力を維持させている。

集会では最後に、支援をしてきた日帝強制動員市民の会の李国彦さんが、生存者は900人程に減少し、生存の限界状況にあるから、早く解決を求めたい。名古屋の演劇(鳳仙花)の光州公演を見て、真実は人の心を鳴らすものであると感じた。壁を越え、真実と平和に向けての活動をすすめたいと語った。民族問題研究所の金英丸さんは、原告が政府の解決策を拒否するのは大変な状況であるが、拒否している。第三者弁済を拒否する原告が人権と平和の運動の最前線で闘っている状況であると報告した。

今回の原告の家族・遺族の来日は、当該企業の関係者と会い、判決の履行にむけて協議することが目的であった。しかし、三菱と日鉄は会うことも文書を受け取ることも拒否した。また外務省も面会を拒否した。そのような対応は、原告の家族・遺族に日本政府と企業による強制労働否定を実感させ、逆に抵抗と解決への決意をより強めるものになった。

 参加者から感想を聞いた。

 ○100人を超える参加者で立ち見も出た。熱気ある集会だった。

 ○遺族・家族が主体となり原告の意思が受け継がれていた。新たな運動の始まりを感じた。

 ○参加して元気が出た。人びとの訴えが心に伝わった。

 ○現実の政治の壁の厚さを感じた。それを越える運動を作っていきたい。

 ○問題点を明らかにして、解決への取り組みを強めたい。

 ○この運動を含め社会運動に参加する人びとの声が政治に反映される時代を作りたい。

 ○被害者の声に応えて自民党の中にも協力する人が出てくるような展開、情勢にしたい。  

 ○戦争被害者の尊厳回復の力は、戦争を阻止する基礎だと思う。        (竹)

参考

[報道資料]

強制動員原告遺族、日本の被告企業を直接訪ねる!

-第三者弁済を拒否している遺族、25日に日本製鉄・三菱重工・不二越を訪問し、「賠償」を求める-。

強制動員問題と関連して提訴された日本の戦犯企業に対し、韓国の大法院(最高裁)が相次いで賠償判決を下しているが、2018年に大法院の賠償判決が下されてから6年目になるが、日本企業は賠償に応じていない。

特に、韓国政府が昨年3月、被告日本企業に代わって行政安全部傘下の日帝強制動員被害者支援財団を通じて第三者弁済方式の判決金を支給すると発表したせいで、問題はさらに複雑化している。つまり、加害者企業の賠償責任が巧妙に曖昧になり、韓国政府と被害者間の葛藤のように問題の本質が歪曲されているのだ。

そんな中、韓国政府の第三者弁済方式の「判決金」の受け取りを拒否してきた4人の原告側(日本製鉄原告李春植(イ・チュンシク)さん、三菱重工原告梁錦徳(ヤン・クムドク)さん、三菱重工原告故朴海玉(パク・ヘオク)さん、三菱重工原告故鄭昌喜(チョン・チャンヒ)さん)の遺族たちが、被害者に代わって日本の被告企業を直接訪ねる。謝罪と賠償を求めるためだ。

 韓国大法院から賠償命令を受けた原告の遺族である日本製鉄訴訟の原告李春植さんの長女李杲賱(イ・ゴウン)さん、三菱重工広島訴訟原告の故鄭昌喜(チョン・チャンヒ)さんの長男鄭鐘建(チョン・ジョンゴン)さん、三菱重工名古屋訴訟原告の梁錦徳さんの三男朴相雲 (パク・サンウン)さんらは、3月25日(月)午前、韓国と日本の支援団体関係者らとともに、それぞれ日本の被告企業である▲日本製鉄▲三菱重工業▲不二越を順に訪問する予定だ。

彼らはすべて、韓国政府が日本企業に代わって支給しようとした「判決金」の受領を拒否してきた。裁判所の賠償判決の履行を促すために、被害当事者ではなく訴訟遺族が日本の被告企業を直接訪問するのは今回が初めてで、2018年に大法院で賠償判決を受けてから6年ぶりだ。

三菱重工を相手に訴訟を起こした鄭昌喜さんは訴訟中に亡くなり、生存被害者である李春植さん、梁錦徳さんは高齢と健康の悪化で移動が困難な状態だ。そんな中、被害者に代わってその遺族たちが今回の東京行動に、初めて参加する。

25日午後4時~6時には、「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」が主催して衆議院第2議員会館多目的会議室で「強制動員問題解決!韓国原告の家族・遺族の声を聞く会」集会が予定されている。強制動員問題の解決のために日本の国会議員、マスコミ、市民に訴える場である。

韓国政府の第3者弁済を拒否している遺族たちはこの場で、日本企業の謝罪と賠償を改めて求める意見をそれぞれ述べる予定。

やむを得ない事情で日本日程に参加できなかった故朴海玉さんの長男である林哲熙(イム・チョルヒ)氏も代りに意見を伝える予定。

今回の東京日程には、▲各訴訟代理人-張完翼(チャン・ワニク)弁護士、金正熙(キム・ジョンヒ)弁護士、林宰成(イム・ジェソン)弁護士、▲支援団体-民族問題研究所の金英丸(キム・ヨンファン)対外協力室長、李国彦理事長、金禎恩(キム・ジョンウン)事務局長、▲原告家族側からは、第三者弁済を拒否した原告の故鄭昌熙さん(三菱重工業)の長男鄭鐘健さん、李春植さん(日本製鉄)の娘杲賱さん、梁錦徳さん(三菱重工業)の三男(朴相雲氏)らが参加する予定。

(社)日帝強制動員市民の会