12・7森島豊講演「戦争に向かわせる日本の人権思想」



 2024年12月7日、森島豊講演「戦争に向かわせる日本の人権思想」がもたれ、60人ほどが参加した。主催は浜松・憲法9条の会であり、結成20周年の集いとして開催された。
森島豊さん(青山学院大、牧師)は「戦争に向かわせる日本の人権思想」の題で、日本の人権思想は天皇制を認めた一君万民の四民平等という「天皇型人権」であり、その思想は板垣退助の「自由党史」や「一代華族論」などにみられると指摘 、そのような考え方は北一輝の国家改造論にもみられ、一君万民の思考によるテロリズムも基礎となった論じた。また、このような日本の天皇型人権論は抵抗権の確立を阻むものとし、一君万民の平等思想が挙国一致の戦争につながっていったと分析した。さらに日本国憲法では帝国憲法下の臣民が国民とされ、天皇を国体とするありようが形を変えて残っていることも指摘した。そのうえで自民党の憲法改正案が天賦人権論を否定する国を主語とした人権論であることを批判した。
以上が講演の概略である。
講演の題は「戦争に向かわせる日本の人権思想」であるが、内容は「戦争に向かわせる天皇型人権思想」というものであった。講演者の分析は戦前・戦中に天皇制を批判した人びとの人権運動への評価がないものだったが、現憲法での象徴天皇制の問題点に言及するものであった。浜松・憲法9条の会が結成された20年前、講演した憲法学の大学教授が「日本国憲法はすばらしもの」と象徴天皇制の問題点には全く触れなかったが、象徴天皇制の問題を捨象した9条擁護論にはずっと違和感を持っていた。今回の日本での天皇制下の一君万民の人権論批判の提示は有益だった。戦前にも存在した天皇制批判に触れての議論の展開に期待したい。(T)