労働相談から見た外国人労働者問題

2024年11月23日、静岡県労働組合共闘会議主催の秋季討論集会で遠州連帯ユニオンの鈴木英夫さんが問題提起をした。以下はその概要である。

 今日は「労働相談から見た外国人労働者問題」という題目で、遠州連帯ユニオンの組合活動での体験をまとめて報告し、今後の活動のための問題提起としたいと思います。

●外国人労働者からの相談事例 解雇・労災・ハラスメント

まずこの間、連帯ユニオンに来た外国人労働者からの労働相談をあげてみます。

 第1に解雇・雇止めの事例です。

①ブラジル人A夫婦の場合、妻の雇止め理由は「つわりで休みが多かったから」、夫の雇止め理由は「賃金上げてほしいと言ったから」です。夫婦で解雇されました。

②ブラジル人Bさんの場合、派遣会社と派遣先に妊娠3カ月であることを報告しました。そうすると、作業内容が「塗装作業」に変更され、シンナーの臭いでつわりが酷くなったため、仕事を休むことがたびたびありました。その後、「勤怠不良」で有期雇用期間の途中で解雇されました。

③ブラジル人Cさんは、婦人科から「作業中、一時的に座れるようにしてほしい」という診断書を作成してもらったのですが、派遣会社から「そんな仕事はないから、書き直してもらえ」と言われました。再び婦人科の「就業可能だが、昼勤のみで軽作業とし、重い物は持てない。尚、夜勤と残業は妊娠初期のため不可能」という診断書を派遣会社に提出したところ、派遣会社に、「これでは更にだめだ。こんな仕事は無いから帰れ。」と言われ、仕事に就かせてもらえなかった。その翌日も出勤したが帰されました。そして、帰る途中に交通事故を起こしてしまいます

④ブラジル人Dさんの場合は、会社から「勤怠不良」を理由とした雇止め通知書が交付されました。欠勤のほとんどは、妊娠によるつわり(重症悪阻)が原因でした。

⑤ブラジル人労働者Eさんは、妊娠初期からつわりで休業や早退を繰り返しました。妊婦健診で医師から「重症悪阻、妊娠性頭痛」と診断、安静加療と診断されました。すると派遣会社は、「貴方の妊娠のために、他の人を補充しなければならないから、会社にとっては不利益になるから解雇する。」と言い、解雇したのです

技能実習生は「妊娠したら母国へ帰れ」と、当たり前に言われてきたのですが、日本に居住しているブラジル人も安心して子どもを産めない状態になっています。それでは未来がありません。

第2に労働災害です。日本人よりも外国人労働者の方が、労災発生件数が多い状態であり、日本全体の労災発生率が1,000人あたり2.36人に対して、外国人労働者は2.77人と高い割合で労災事故が発生しています。遠州地域でも同様です。

①ブラジル人Fさんは、作業場の「立入禁止区域」内で転び骨折しました。「立入禁止区域」であることを周知したと会社は主張しますが、外国人派遣労働者には周知していなかったのです。また、「立入禁止」の表示があったといいますが、本人は日本語を読めなかったのです。

②ブラジル人Gさん、作業中に負傷し休業しました。しかし、労災の休業補償給付が支払われていないことから、浜松労基署へ相談に行ったところ、労災申請がなされていないことが判明しました。会社は、Gさんが労基署へ相談した報復として休業命令を行い、その後、解雇しました。

③ブラジル人Hさん、腰椎椎間板ヘルニアで働けなくなりました。Hさんは、雇用契約書には書いてない複数の就労場所で「応援」という名目で働かされました。腰に負担がかかる仕事の為、職場の変更を求めたのですが、「2か月、我慢しろ」と言われました。その間、腰へのダメージで腰椎椎間板ヘルニアにつながったのです。会社は労災申請ではなく、傷病手当金申請の手続きを勝手に行い、手当金の振込口座を、Hさんの口座ではなく会社の口座としました。

④ブラジル人Iさんは、腰椎分離症と診断され、仕事ができなくなったため、派遣会社に労災申請の手続きを行うよう依頼しましたが、会社から「労災にすると仕事を失うが、それでもいいか」と脅され、傷病手当金の手続きをされました。

 このように労働災害であっても労災を申請しない、場合によっては解雇されるという状況にあります。傷病手当金を会社の口座に振り込ませることまでされているのです。

第3にハラスメントです。

①ブラジル人Jさんは、「職制」だからと言われて、年休も8年超働いて、通算10日程しか取っていません。夏休みなど長期休暇中でも、「カイゼン」の為と称して出勤を命じられ、それを拒否すると、「ボーナスに響くからな」と恫喝されました。部下がラインを止めてしまった場合、職制の責任だと罵倒されます。職場の空調が故障したため、会社に空調の修繕や扇風機の配備を要求したところ、「お前が扇風機を買ってこい」などと怒鳴られたといいます。

②ブラジル人Kさんは、派遣先の日本人から、「デブ」「仕事が遅い」などと日常的に言われたり、日本語で書かれた作業記録をKさんに当該に見せ、日本語を読めないことを承知で、「おまえ、これ読める?」などと挑発され侮辱されました。また、日本人から部品を投げつけられることもありました。さらに、日本人は、Kさんが「いろいろな男性と性的関係を持っている」と、デマを流しました。そのため、同じラインのベトナム人の男性から、腰の下に手をまわして「アパートに一緒に行こう」などとからかわれました。これらのことはすべて、派遣会社に報告し、是正を求めたのですが、派遣会社は、「これは派遣会社の仕事じゃあない」、「あなたの方に原因があるのでは」と言われました。

 このようなハラスメントが改善されないまま続いています。労働現場には甚だしい人権侵害があるのです。

 

●日本の労働者不足と海外からの労働者増加

 ではつぎに日本の労働者不足と海外からの労働者の状況についてみてみましょう。

日本での労働者不足の現状からみれば、生産年齢人口(15才~64才人口)は急速に減少しています。1995年の8,726万人をピークに、2025年には7,170万人、2050年には5,275万人に減少すると見込まれています

超高齢化社会の到来が問題となっています。政府は女性・高齢者の潜在的労働力の活用などによって労働力不足は対応可能という考えを示してきたのですが、2000年半ば以降、方針転換し、外国人労働者を迎え入れる方向にあります。2023年末の在留外国人数は、全国で342万人(前年末比11%増)、静岡県で11万6000人です。外国人労働者数は全国で204万9000人(23年10月時点)、静岡県は7万5000人となっています。

政府は、「外国人雇用状況の届出」を全事業所に義務付けていますが、十分ではなく、提出していない事業所もあります。また、在留資格のうち、「特別永住者」と自営業(個人事業主)は届出の対象外となっています。労働者数が多い上位3か国(全国)はベトナム 51万8364 人、中国 39万7918人、フィリピン 22万6846人です。インドネシア、ミャンマー。ネパールからの労働者が増えているのも特徴です。静岡県をみると、ブラジル 1万9729人(全体の 26.4%)、ベトナム 1万4423人(同 19.3%)、フィリピン 1万3788人(同 18.4%)となっています。

つぎに外国からの労働者の増加状況についてみましょう.増加は1990年以降のことで、その際の政府の方針は、「専門的・技術的労働力」を受け入れるが、「単純労働者」は受け入れないということでしたが、実態では崩れています。資本の要求に応えるために、日系南米人(とその配偶者と未婚未成年の子)、研修・技能実習生 、留学生を「労働力」として利用するようになりました。

南米日系人(ブラジル人・ペルー人)についてみれば、かつての日本人移民の子孫たちに「定住者」という就労に一切制限のない在留資格を付与しました。これにより、ブラジル人やペルー人などの日系南米人出稼ぎ労働者が急増し、主な就業先が、自動車や電機などの製造業が集積する特定地域です。それは浜松市、豊田市、豊橋市、群馬県太田市・大泉町などです。

しかし、2008年秋のリーマンショックで50%弱の大量の日系人が派遣切りされ、住居すら失いました。南米日系人の大量解雇となったのです。当時、浜松市全体の生活保護率が0.9%、一方のブラジル人の生活保護率は10%超に達しました。これは子どもの教育にも大きく影響したのです。

政府は、失業した外国人を滞留させると「社会的コスト」がかかり、「治安が不安定」になるからと言って、日系人の帰国支援事業を行いました。失業者1人に30万円、扶養家族1人に20万円を支給し、再入国禁止としたのです。このように使い捨てて追い出したという状況です。その数は、全国で2万3000人、浜松市で5000人です。

南米日系人の働かされ方の特徴は、第1に、何十年働いても賃金は上がらず、大半が派遣などの間接雇用で働き、終身派遣ともいうべき固定化した状態が続いていること、第2に、派遣会社に「通訳」が配置され、直接雇用の選択肢が少ないこと、第3に、仕事の場、生活の場でも同国人に囲まれて母語で暮らし日本社会とのつながりをほとんど持たないケースが多いことです。日本語が話せなくても生活できる、日系人と言いながらも、日本人とのつながりが少なかったことが、大量失業の原因のひとつとなっています。

 つぎに、研修生・技能実習生の問題をみてみます。

1980年代になると中小企業で人手不足となり、外国人を受け入れようという動きがありました。1990年には民間ブローカー任せという団体監理型により、中小企業も研修生の受け入れを開始しました。研修生を労働者とみなさず、「研修手当」として月額約6万円を支給し、残業や夜勤をやらせても、労働者ではないため割増賃金は支払われなかったのです。

1993年、技能実習制度が始まりました。建前は「国際貢献」です。最初の1年は「研修生」、2年目以降は「技能実習生」とされたことで、区分が曖昧となり、雇用主にとって使い勝手のいい制度に改変されました。

2000年代に入り、違法な残業、賃金未払い、強制貯金、パスポート取り上げ、強制帰国などの実態が明らかになっています。2016年に技能実習法が制定されましたが、制度の目的と実態のかい離や人権侵害は今も続いています。現代の奴隷制度と言われています。

留学生(私費留学生)の労働についてみれば、留学生の80%以上がアルバイトを行っています。技能実習生では「供給」できない宿泊、飲食、小売業などなどのサービス業で働いています。法定時間(週28時間、夏休み・冬休みは8時間、40時間)を超えて働くケースが多く、雇用主の意向で働かされることになります。

 このように外国人労働者の労働条件は劣悪であり、ユニオンにも多くの相談が寄せられています。

 

●外国人労働者の権利実現にむけて

外国人労働者の受け入れは、人間としての尊厳と、労働者の権利が大切にされる制度でなければなりません。

「特定技能」の名による就労制度は、人手不足対策の即戦力として2019年創設されました。増加するとみられる「特定技能1号」の内容を詳しくみれば、試験(技能・日本語)または「技能実習2号」を修了した者に「特定技能」を付与する。1号は介護・外食・建設・ビルクリーニング・農業、漁業など16分野、2号は、建設、造船の2分野とされます。最長在留期間5年間、家族帯同は不可です。技能実習から移行した場合、最長8年~10年家族と離れて働くことになります。受入れ予定人数は5年間で82万人です。転職の自由があるとされますが、実際にどうなるのかは不明です。家族と暮らせないという制度設計は人権侵害です。

技能実習制度に代わり創設される「育成就労制度(3年間)」も家族の帯同は不可です。技能実習制度では認められていなかった、「自己都合での転籍」が容認されることになったのですが、同じ受け入れ機関で1~2年就労し、日本語と技能の試験に合格しなければならないのです。仮に転籍要件を充たしても、転職支援がなければ転籍先を探すことはできないわけですから、再び人権侵害の温床になりえます。また、技能・日本語能力を要件にしていることで、「日本語教育をせず技能試験にも行かせない悪質な監理支援機関のもとでは転籍できないことも考えられます。

政府は、「外国人材の活用は、移民政策ではない」という姿勢を堅持しています。そのため、外国人労働者の権利などの議論は進んでいないのです。日本語教育に関して国・文科省のかかわりは極めて不十分です。そのかわり地方自治体が日本語教育を行っていますが、限られた財源のため小規模な施策にとどまり、地域格差も生まれています。

南米日系人は「定住者」「永住者」でありながら、多くが間接雇用であり、直接雇用でも時給で働き、昇給も賞与も退職金もない状態となっています。このような働かされ方を抜本的に改善するため、外国人労働者の同一労働・同一賃金や正社員登用を追求していく必要があります。

また、外国人差別を許さない世論作りが大切です。例えば、外国人が公務員や公立学校の教員に就くには多くの制限があります。また、参政権も与えられていないことが合理的なのか、市民の目で世論喚起すべきでしょう。

いま起きている労働現場での人権侵害を許さず、今後も同様な問題を起こす育成就労などの制度の問題点を明らかにし、外国人労働者の権利実現に向けて、共に闘っていきましょう。

                       (文責・人権平和浜松)