2・24内田聖子講演会「公共の再生と地域主権をめざして」
2025年2月24日、内田聖子さんを招いて講演会「公共の再生と地域主権をめざして 杉並区長選挙と住民運動の実践から」がもたれ、100人ほどが参加した。主催はソーシャルネット浜松。講演会の前には岸本聡子さんが杉並区長になる経過を描いた「○月○日、区長になる女」(ぺヤンヌマキ監督、2024年)が上映された。内田さんは岸本さんと共に杉並で活動してきた。以下は、内田さんの講演の概要である。
浜松には縁があり、水道の民営化の反対の動きの中で、岸本さんと共に浜松で講演したことがあります。
経済のグローバリゼーションは投資の拡大、資本移動の自由化、貿易の自由化とともに進んできました。それは新自由主義の経済政策による規制緩和。公共政策の市場化・民営化を伴うものです。水道民営化もこの動きの中で起きたことです。新自由主義により農産物の市場開放や食の安全の緩和が進みますが、一部の利害関係者へと利益が誘導され、中間層の没落がすすみます。それにより貧困や格差が拡大し、気候危機をもたらします。
このような新自由主義の台頭は民主主義の危機を生んでいます。エリートへと富が集中し、大衆が貧困に追い込まれます。そこに諦めが生まれ、それが少数者の支配を強めることになり、さらに階層格差、地域格差が拡大するという悪循環となります。ネット上でデマやフェイクが拡散し、真実が隠され、排外主義や右派の勢力が拡大していきます。
このような状況にどう対抗するのかという思いの中で、2022年6月の杉並区長選挙に取り組みました。杉並区の人口は57万人です。岸本さんは政策として、公共の再生、地域主権、人権と多様性を柱とし、区政での具体的な改革の取り組みとして、規制緩和による職員の削減や民間委託の拡大の問題、都市計画による住民の意思を無視した道路計画問題、再開発による児童館や高齢者の居場所の移転問題、ジェンダー平等やヘイトスピーチへの対応などをあげました。
また、「さとこビジョン・対話から始まるみんなの杉並」構想を示し、気候変動への取り組み、杉並区自治基本条例による区政、透明な区政の実施、区の施設と職員を財産として尊重すること、対話と調査の重視、ジェンダー平等による少数者や女性の安心した暮らしづくり、地域経済づくりを主要な指針として示したのです。岸本さんは気候や公共を破壊するグローバリゼーションに対抗してきた人ですから、それに対抗する直接民主主義を含む地域自治の思想(ミュニシパリズム、地域主権主義)を持ち、新自由主義に抗う自治体づくりを目指したのです。それは、住民が直接参加することで自由や権利を拡大して行くことを目指し、政治の在り方を変え、権力を市民の手に委ねるというものです。
岸本さんの選挙を支えたのは2022年1月に結成された「住民思いの杉並区長をつくる会」です。それは杉並での長年の市民運動の蓄積によるものです。選挙資金は市民の寄付、応援団は選対10人、事務局に約40人、賛同者は400人という活動です。それを政党が支援したのですが、政党員もひとりの市民として議論し、他者を尊重していました。短い選挙期間でしたが、旧来の選挙の型を問い直しつつ、共感の輪が広がっていき、「地べたからの草の根民主主義」の存在を感じた選挙戦でした。選挙結果は7万6743票を獲得し、現区長とは187票の僅差での当選でした。投票率は37.5%、前回より5.5ポイント増加です。特に30代女性の投票率が増加しているのが特徴です。
区長は変わっても、議会が変わらなければなりません。2023年4月の区長選挙では48議席のうち女性が24人を占めました。上位4人は新人女性、自民は7議席を減らし、緑の党やれいわが議席を得ましたが、参政党や維新も議席を得ています。岸本区政は参加型予算の編成、気候区民会議の設置、あさがやまちづくりセッションの開始、街づくりデザイン会議の設置、区立施設再編の見直しなど、住民自治と参加型の区政をすすめています。
しかし、長年の市場化、民営化による動きはすぐには変えられません。行政と住民との信頼関係も不十分です。創造し提案する運動を作る必要もあります。住民による調査と政策立案、提言も必要です。岸本区政を敵視する議員の動きもあります
新たな岸本区政を支え、この運動を広げるために自治体首長・議員・市民による{ローカルイニシアチブ・ネットワーク}の活動をはじめました。そこでは、地域主権と民主主義の実現、、自治体と地域の力による気候変動対策、ケアを社会の真ん中に置く、人権尊重・多様性の社会形成、市民と行政の共同参画を柱にしています。「ソシアルサトコズ」(聡子後援会)への入会による全国からの支援も呼びかけています。
(文責、人権平和・浜松)