4・11強制動員問題・原告遺族の訴え

●三菱・日鉄への「丸の内行動」

2025年4月11日、東京・丸の内の三菱重工と日本製鉄の本社前で「丸の内行動」がもたれた。今年の1月から三菱と日鉄の支援者は強制動員問題の解決を求めて毎月第2金曜に共同して行動をはじめ、それを「丸の内行動」と命名した。この日は韓国からの参加者を含め50人ほどが参加した。

三菱重工業本社前に、動員被害者が描かれた布や遺影、「韓国大法院判決の被告として三菱重工は原告に謝罪し、解決に向けて協議をはじめよ」と記された横断幕が翻った。三菱名古屋、三菱広島の強制動員被害訴訟を支援してきた人々がマイクを握り、急病で来日できなかった原告の遺族の無念を分かち、三菱が強制労働の責任をとり、謝罪し賠償すべきことを訴えた。代表団が本社に入るが、三菱は要請書の受け取りを担当者の不在を理由に拒否した。かつては担当者が対話に応じたが、2024年に入ると態度を変えた。韓国の日帝強制動員市民の会の李国彦さんは「第3者弁済がなされようとも日本政府と動員企業の責任は消えない。債権は生きている。企業は責任をとれ」と訴えた。

続いて日本製鉄の前に移動し、「強制動員被害者に謝罪と補償を!日本製鉄は韓国大法院判決を履行せよ」記した幕を中心に集まり、日本製鉄訴訟を支援する会のメンバーが日本製鉄に強制労働への反省を求めた。李春植さんの遺族の李昌煥さんや支援者は日本製鉄に申入書を受け取ることを求めたが、日鉄側は事前に送った手紙やメールについては「確認できない」などと言って、受け取ろうとはしなかった。李昌煥さんは「惨憺たる気持ちです。そんなに反省と謝罪の一言は難しいものでしょうか。父は戦犯企業と闘い続けました。父の願いを受け継ぎ、謝罪と賠償を求めたい。」と話した。

●強制動員問題・原告遺族の証言集会

この行動に続いて、衆議院第1会館で「強制動員問題は終わったのか?原告遺族は訴える」集会がもたれ、会場に110人ほど、オンラインでは50人ほどが参加した。

集会では遺族の李昌煥さんがつぎのように訴えた。

父は日本製鉄釜石製鉄所に動員され、骨が折れるような労働に耐えて生き残り、さらに徴兵され、神戸の捕虜収容所の監視をさせられました。解放後、釜石に行って未払金の支払いを求めました。2018年に韓国の大法院で勝訴しましたが、その時、途中で亡くなった仲間を思い、涙を流しました。父は今年の1月27日に104歳で亡くなりましたが、日本政府と日本製鉄に謝罪と賠償を求め続け、その意思を曲げませんでした。尹政権の第3者弁済により家族に問題が生じてしまいましたが、私は父の遺志を受け継ぎ、日本政府と日本製鉄に心からの謝罪と賠償を強く求めます。これからも連帯とご支援をお願いします。

三菱広島工場に動員された鄭鐘伍さんの遺族は急病のため来日できなかったが、三菱広島の支援者が遺族の思いを伝えた。それは、父は当時、連行されて奴隷や獣のようだったという。動員の過ちを日本政府や三菱が認めないため訴訟を起こした。自分の目の前で死んでいった無念な仲間たちの絶叫を一生忘れることができなかったのだろう。お金よりも日本政府と三菱が被害を認定し謝罪することが重要であるという内容だった。

遺族の報告を受け、民族問題研究所の金英丸さんは、尹政権は第3者弁済など歴史問題や福島処理水への対応で民衆から批判され、クーデター未遂により罷免された。強制動員問題は終わってはいない。解決を!と呼びかけた。市民の会の李国彦さんは韓国の民主主義は危機にあったが、市民の正義の力で尹は罷免された。日韓関係も正義による関係が必要であり、節目の時期にあたり、日本政府と日本企業は大法院判決を受け入れるべきと訴えた。

●行動を終えて

尹政権は「第3者弁済」をおこない、日本側の呼応を求めたが、日本政府も当該企業もそれに応じなかった。それは韓国大法院判決を受けいれようとしないからである。日本政府と当該企業が強制労働の事実を否認しているのである。それは、事実の認定、謝罪・賠償、記憶の継承の課題が残されていることを示すものでもある。

この日の行動は、強制労働の問題解決はなされないままであることをいっそう明らかにするものだった。

強制労働被害者はその遺族は、その過酷な労働に加え、後遺症や消息不明になり、遺骨も戻らないなど、戦後も強制労働の被害を背負ってきた。だが日本政府は、韓国の外交権を奪った1905年の保護条約から120年、日韓条約から60年間たつが、植民地支配とその下での動員は合法であり、65年請求権協定で解決済みという認識を変えていない。

まず、植民地支配の不法と戦時中の強制労働、強制動員の事実を認めることが求められる。その上で日本政府と企業は被害者と協議し、納得の上で謝罪と賠償を行い、教科書に動員の強制性をきちんと記し、死者を追悼し、日本に残る遺骨は収集して遺族の元に戻すべきである。

現在、パレスチナのガザやウクライナでは侵攻が止まらず、日本では戦争の記憶が薄れるなか、台湾有事を想定して中国攻撃の準備が進んでいる。継続する植民地主義を克服しなければ、戦争は防げない。被害者の尊厳回復の仕組みが、政府による戦争遂行を止める力となるだろう。                  (竹)