以下の要請書を送付しました。
NO!AWACSの会浜松

日本国政府首相様       2002年1月21日
防衛庁長官様          NO!AWACSの会浜松・1/19集会参加者一同

有事立法制定策動と空中給油機導入計画の中止
などを求める要請書


 1月19日、わたしたちは「アメリカの報復戦争はなぜ間違っているのか」をテーマに
浜松で集会を開催し、討論をしました。
 昨年、アメリカのブッシュ政権は10月アフガニスタンへの報復戦争を開始しました。
 すでに3ヶ月余が経ちますが、現在も米軍は最新型の爆弾を投下しアフガニスタン
の民衆の生命・生存権を奪いつづけています。さらに冬をむかえ飢えと寒さがアフガニ
スタン民衆の生命を奪おうとしています。
 一方、日本政府はアメリカのアフガンへの戦争を正当化し、平和を求める多くの民衆
の声を無視し、参戦しました。政府はアフガン民衆の生命・生存権を奪う側を選択した
のです。「テロ対策特措法」を十分な論議もせずに成立させ、憲法の平和精神を踏み
にじり、日本を戦争国家へと転換させ、自衛隊の海外派兵を行ったのです。また、昨年
12月には日本の自衛隊機と海上保安庁の巡視船が一隻の国籍不明船を追い、中国
の排他的経済水域で撃沈し、同船乗員約15名の命を奪いました。政府は「合法」「正
当防衛」と宣伝しましたが、この交戦・撃沈行為は国際法と憲法に違反するものです。
 1月21日からはじまる通常国会に、政府は有事立法推進法案を提出しその具体化
に着手するという動きが報道されています。有事法は民衆から財産権・労働権・言論
の自由・知る権利などの人権を奪い、軍需産業に利益を与え、憲法の基本精神と民
主主義を蹂躙し、戦争へと民衆を総動員するものです。その制定は日本民衆のみな
らず、世界の民衆の平和的生存権を奪うことにつながります。わたしたちは政府が有
事法案などの戦争法を提出し審議することに強く反対します。テロ対策法・周辺事態
法・有事立法のもとで政府によって再び戦争の惨禍がもたらされようとしているとわた
したちは考えます。
 かつて浜松は陸軍空爆の拠点であり、アジア各地を空爆する部隊を送り出しました。
 現在では空の司令塔といわれるAWACSが轟音とともに舞い立ち米軍と海外で共
同軍事行動訓練まで行っています。さらに空中給油機の導入まで計画されています。
 このような軍拡の動きにわたしたちは強い憤りをもっています。有事立法は強制徴
用・接収をもたらすものであり、軍事基地のある浜松を再び戦争拠点とし、民衆への
統制・監視はいっそう強められることになります。
 19日、わたしたちはアメリカの報復戦争が憎しみの連鎖を生み決して平和的な解
決をもたらさないこと、この戦争の背後には中央アジアへの経済・資源利権があるこ
と、報復とテロの連鎖ではなく民衆の側からの反戦平和と和解・共存の取り組みが大
切であること、日本が戦争国家に向かって急激に動いていることを学びました。「1・1
9アメリカの報復戦争はなぜ間違っているのか集会アピール」をふまえ、わたしたちは
以下を政府に訴えます。

1 米軍に即刻、アフガニスタンへの攻撃をやめるように要請すること。
1 米軍支援をやめ、今後自衛隊の海外派兵をいっさいしないこと。
1 有事法制推進法案の通常国会提出をやめ、今後の有事立法の法制化を中止
 すること。
1 浜松基地のAWACSの運用をやめ、廃棄すること。
1 空中給油機の導入計画をいますぐ撤回すること。
1 日本政府は憲法9条の戦争放棄の精神を遵守すること。
1 浜松を再び派兵拠点としないという浜松市民の思いを受け止めて政治を行うこと。

アメリカの報復戦争はなぜ間違いか
アフガン・パレスチナはいま02・1


NO!AWACS集会 岡田剛士さんの話

 1月19日、集会をもち岡田さんの話を聞いた。参加は22人。集会では講演・討論ののち集会アピールを採択。NO!NO!バンドが「花」を演奏して終了した。以下講演の要約を紹介する。(文責:NO!AWACSの会)

アフガン戦争の背後にある石油利権

 アメリカによる戦争でものすごく多くの人々が死んでいる。その一方で1月21日から東京でアフガン復興支援会議が開かれようとしている。アフガンに爆撃を続けながら復興が語られ、日本がそれを積極的に支援していくという構図だ。
 アフガン戦争の背後にあるもの、明らかにその一つに中央アジアのエネルギー資源への利権があるだろう。98年1月1日付、97年8月30日付の東京新聞をみると中央アジアには石油天然ガスが豊富にあり、カスピ海周辺の石油埋蔵量は1800億バレルとされる。この資源をめぐって米・中・欧・ロの争奪戦があり、日本の伊藤忠も参加していること、カスピ海からの輸送ルートとして、アフガン・パキスタンを経由してインド洋へとパイプラインを引く計画がすでにあったことがわかる。
 アメリカはアフガン戦争の開始にあたり、中央アジア各国も含むアフガニスタン周辺諸国の軍事基地を使用するみかえりとして、これら各国との関係を改善してきた。アフガン・ゲリラ諸勢力を支援してきたアメリカが、今度はタリバンをつぶすことで巨大な利権を得ようとしている。今回の戦争はブッシュのいうような「善と悪との戦争」ではない。この利権のためにさらに何万人ものアフガンの人々が飢え、こごえ、苦しんでいる。
 ブッシュ家とビン・ラディン家が石油ビジネスでつながっていたという報道もある。朝日新聞2001年9月25日付(夕)によれば、ブッシュが70年代に石油ガス採掘会社を設立したとき、オサマの長兄が共同出資者となっている。ブッシュはこの会社から顧問料として年間12万ドル(のち5万ドル)を得ていたという。
 中央アジアからアフガニスタンを経由してパキスタンやインドに至るパイプライン建設が、アフガンの復興の基盤になるという発言もある。この戦争の特徴は、戦争と復興と利権が、ひとつながりになっていることだ。

●パレスチナ暫定自治の実態

 アメリカの9.11事件はパレスチナ人に何をもたらすのだろうか。
 昨年9月というのは、2000年9月末にイスラエル右派リクード党の党首シャロン(現首相)がイスラムの聖地に強引にのりこみ、それに対するパレスチナ人の闘争が開始されて、1周年の時期に当たる。また1982年9月、イスラエルによるレバノンへの軍事侵攻、そのさいのサブラ・サティーラでの3千人余のパレスチナ難民の虐殺事件(当時、シャロンは国防相だった)から19周年だった。昨年2月、その強硬派シャロンが首相となり、これまで以上に和平プロセスはすすまなくなり、パレスチナ人への弾圧は厳しくなった。
 昨年の9・11テロは、アメリカがイスラエルなみになったという印象をもった。アメリカを頂点とする世界秩序=グローバル化が抱える矛盾のなかでのテロと報復の連鎖だ。だが、パレスチナの状況はさらにひどいものだ。
 現在、イスラエル国内で一般的に売られているイスラエルの地図を見ると、ゴラン高原もイスラエル領とされている。これがイスラエル側の認識だ。
 一方99年のパレスチナ暫定自治の地図では、茶色はイスラエルの自治区、緑色は行政権はパレスチナだが治安はイスラエル軍という地区であり、1967年以後イスラエル軍が支配を継続している白色の地域も多い。
 暫定自治とはいうものの、面積では約6割が今もイスラエルの軍事占領下にある。暫定自治区は離れ小島のようにバラバラに存在している。ヨルダン川西岸地区の各地にあるイスラエルの入植地と、それらを結ぶバイパス道路が、パレスチナの暫定自治地域を網の目のように囲い、分断していることがわかる。
 ガザ地区では、例えばパレスチナ人たちの住むハーン・ユーニスはイスラエルの大きな入植地に接していて、その境界はコンクリートブロックでおおわれている。そこからの銃撃が日常的にある。これらの入植地とイスラエルをむすぶバイパス道路と、ガザ回廊に以前からあった道路が交差する地点で、衝突がよくおきると言われている。
 アブー・グネイムというエルサレムとベツレヘムの間にある山(小高い丘陵地帯)に、新しいイスラエルの入植地が建設されている。1997年3月から2001年8月にかけての写真をみると土地が没収され、山が削られ、大地が破壊されて入植地がつくられていく過程がよくわかる。(http://www.arij.org/paleye/abughnam/pictures.htm)
 このようなイスラエルによる入植地建設が、どれほどパレスチナ人の怒りをかうやり方なのかわかると思う。

●新たな民衆運動の形成

 パレスチナ暫定自治政府のアラファト体制の矛盾も顕在化してきている。かつてのようなPLOを中心とした解放運動は、今はない。イスラエルの軍事占領はひどいが、暫定自治政府も汚職や人権抑圧、死刑などの問題がある。また、今のパレスチナ人たちの闘争(インティファーダ)は、大衆的な運動というよりも、テロ攻撃と武装(銃)の誇示が突出し、それがイスラエルからの報復攻撃の口実ともなっている。
 そのなかで新しいパレスチナの運動の模索もある。例えば「人権と環境のためのパレスチナ協会」は、イスラエルによる人権弾圧のみならず、パレスチナ自治政府の人権抑圧ともたたかっている。
 またサーブリーンというパレスチナ人の音楽グループは、演劇や絵画、詩などの文化運動を行ってきた人々とともに、イスラエル軍の弾圧や戦争によって傷つけられた子どもたちの心の問題を考え、いやすための活動を行っている。しかもサーブリーンは、この活動を、女性が積極的に社会参加してゆくための活動でもあると位置づけている。
 イスラエル内でも、たとえば「ターユシュ」(アラビア語で“共存”の意味)という団体ができ、イスラエル国内からガザ地区のパレスチナ人に支援のカンパをおくる活動をはじめている。さらに、このグループも含めて複数の運動団体が、兵役を拒否するイスラエルの若い人々の支援も行っている。イスラエルという、社会全体が非常に軍事化された国家の中で、しかしそうした軍事至上主義それ自体を問い、軍事力では人々の安全は守ることができないのだと考えはじめた人々の運動だ。
 イスラエルは国民皆兵であり、男女とも兵役がある。兵役を担うことが国家による社会サービスをうける前提となる。62人の高校生が兵役を拒否する事件が昨年8月にあったが、兵役拒否は処罰される。
 パレスチナ人自身が今後どういう社会をつくっていこうとするのか、それと不可分のものとしての和平を、どのように具体的に模索するのか、そしてイスラエル人自身が共存へのとりくみをすすめていくこと、そのような民衆レベルでのイニシアティブの形成と運動展開が必要であるし、そこに注目したいと思う。

●アメリカの戦争をめぐって

 9.11について、「アメリカのグローバリゼーションに対する、世界中で苦しむ人民を代表した異議申し立てだ」といった趣旨の評価があるが、それは違うと思う。パレスチナ人のもとめてきたもの、それをパレスチナ人たちは「正義ある和平」と表現している。東エルサレムを首都とするパレスチナの独立国家建設、民族自決、難民の帰還だ。イスラエルの背後にアメリカがあることをパレスチナ人たちは十二分に知っているけれど、そのアメリカ人を何千人も殺せと主張していたわけではない。
 パレスチナの運動体のひとつ、パレスチナ女性同盟は「テロ・虐殺の犠牲者であるパレスチナ人はアメリカのテロ犠牲者の悲しみがよくわかる」という趣旨の声明を、9.11の直後、その翌日に出している。
 ブッシュは「善と悪の戦争」といっているが、その背後には石油利権をめぐる動きがある。アメリカ国内では、アラブ人やイスラム教徒へのハラスメントが増加している。その一方で、ニューズウィーク誌に載っていた漫画には、アラブ風の服を着た人間に対して「おまえの生まれた所へ帰れ!」と言うと、その人間が「ニュージャージーへか?」と答えるというのがあった。このコラムはアメリカ社会の現状をよく示していると思う。
 1993年の和平合意以後、イスラエルは周辺アラブ諸国との関係改善をすすめた。さらにアラブ諸国がアラブ・ボイコット(イスラエルと取り引きをした企業とは、アラブ諸国は取り引きをしない、という政策)を実質的に解除したこともあり、イスラエルは他国企業とのビジネスも拡大していった。和平プロセスは、イスラエルが中東地域でグローバル化するプロセスでもあった。そうした変化は世界中から歓迎されたが、それがパレスチナにもたらしたのは、非常に危うい暫定自治だけだった。
 日本では、テロ対策法制定、自衛艦隊のインド洋派兵(事実上の日本の参戦)、そして12月には領海外での「不審船」への発砲と撃沈を「正当防衛」とするなどの動きがあった。1月21日からの国会では有事立法問題がでてくる。様々な法律を改悪しながら有事立法化がすすんでいくとみられる。フィリピンでは、米軍が長期にわたる軍事演習という名目で、「テロ組織」への掃討作戦が展開されはじめている。
 このような軍拡と戦争への道ではなく、新たな平和な世界の創造にむけ民衆自身のイニシアティブによる運動をともにつくりあげていきましょう。