1999年9月18日 荒川章二氏講演のまとめ
（文責：ＮＯ！ＡＷＡＣＳの会
浜松は戦前陸軍の爆撃拠点、戦後は自衛隊航空教育の拠点であり、東富士は戦前戦後と実弾砲撃演習の全国的拠点である。静岡の基地問題はこの２つをおさえることが大切だ。
１８９７年、静岡歩兵３４連隊
１９０７年には浜松歩兵第６７連隊が設置された。
富士では砲兵隊の演習場としての使用がはじまり、１９０６年滝ケ原・板妻に廠舎が建設された。印野村移転をめぐって住民の抵抗がおきた。
●陸軍近代化と部隊新設再編
１９１９〜２０年三島に野戦重砲兵第１旅団が設立され、東部での軍事拠点となった。この部隊設置でも経済効果が期待された。それは排外的な地域利害の追求であった（年間１０数万円）。
１９２５年４月に浜松連隊は廃止されたが、在郷軍人会・連隊営業者らの存置要求運動もあり、歩兵第１８連隊３大隊５００人が分屯した。同年１０月には浜松飛行第７連隊が設置された。
広大な三方原が適地とされ、御料地が県へと払い下げられた。浜松の経済界、とくに日本楽器は誘致運動を強くおこなった。浜松基地は陸軍初の重爆撃と軽爆撃部隊であり、陸軍近代化の最重点とされた。この基地の設置は戦時での際限のない基地拡大の原動力になった。
さらに１９２８年には高射砲第１連隊が浜松旧歩兵連隊跡地に豊橋から移転した。前年には漁民の反対をおしてこの部隊の射撃演習場が米津海岸にできている。
１９２５〜２８年にかけて浜松は陸軍近代化の最先端地域に変わった。富士裾野演習場が陸軍実弾射撃訓練拠点となり、浜松は陸軍航空、爆撃と防空の拠点となったのである。
●
満州侵略と浜松基地 〜加害性〜
中国侵略にむけて飛行第７連隊では事前訓練として、重爆撃機の長距離無着陸飛行（浜松―平壌・浜松―大連など）、寒冷地飛行訓練、高高度爆撃訓練、空中追撃訓練などがおこなわれた。
「満州事変」にともない、飛行第７連隊から軽爆１個中隊、重爆１個中隊が派遣され、満州で飛行第１２大隊へと再編され、熱河作戦に参加した。この戦闘経験から対ゲリラ戦（夜間飛行、急降下爆撃、雪原着陸）、対高射砲戦術、夜間都市爆撃などの訓練が必要となり、１９３３年には浜松飛行学校が設置された。そこでは爆撃や飛行隊の戦術、調査研究がおこなわれた。
第３師団（歩兵）は中国侵略を担い、１年４ヶ月の戦闘をみると、ゲリラ戦は５７４回を数え、ゲリラ側４，５００人、第３指弾１，３００人の被害があった。また無住区作戦、集団部落の設定などをおこなっている。これらは１９４０年代の先駆的作戦である。
●
アジア太平洋戦争と基地拡大
県内部隊の動きをみると第３師団は上海から南京へと犠牲を出しながら行軍、捕虜の虐殺もおこなっている。
飛行第７連隊は「北支」に３つの部隊を派遣し、内１部隊は第６０戦隊に編成され、１９３８〜４１年にかけて重慶の戦略爆撃に参加した。第７連隊は１９３８年第７戦隊と名称を変え、１９４１年には関東軍特演に参加、インドネシア方面にも派遣された。１９４５年には沖縄付近での攻撃や義烈空挺隊として特攻作戦にも参加した。
戦争がすすむにつれ軍事基地も拡大し、１９４４年には三方原教導飛行団（毒ガス部隊）がおかれ、陸軍の毒ガス訓練の拠点となった。浜松では航空毒ガス戦、富士では毒ガス砲撃訓練がおこなわれた。
１９４４年には陸軍飛行学校を実戦部隊にかえ、浜松教導飛行師団とし、サイパン攻撃、フィリピン戦での陸軍航空最初の特攻隊（富岳特別攻撃隊）攻撃に参加した。
浜松周辺には海軍浜名海兵団、第１航測連隊、天竜飛行場、三方原飛行場など各種部隊が集中するようになった。
１９４２年小豆餅への第１航測連隊の設置では５月１７日に説明会をもち7月末までに家屋を撤去するという強引なやり方で基地建設をすすめた。
「本土決戦」にともない、飛行部隊と軍需工場をかかえていたため浜松周辺にはすき間のない形で部隊が集中し、地域丸ごとの兵営化がすすんだ。
加害性ある部隊をかかえていたことが空襲の増加と住民の被害拡大をもたらすことになった。
（講演は東富士についてふれていましたが、ここでは紙数の関係で浜松基地を中心にまとめました）