NHK浜松支局長様 2005年2月2日
人権平和・浜松
公権力に屈服することなく真実を報道することを
求める要請書
わたしたちは浜松の戦争史跡や戦争責任について調査している市民団体です。今回は2001年1月に放映されたNHK番組への官房副長官等の介入問題について要請します。
NHKは2000年12月の日本軍「慰安婦」についての女性国際戦犯法廷を取材し、01年1月にそれを放映しました。この番組放映において、歴史修正主義者でもある安部官房副長官(当時)らが事前にNHK幹部と会い、放映にあたり元「慰安婦」の証言や天皇に戦争責任があることなどを示した法廷判決部分がカットされたことがあきらかになりました。このことに争いはありません。
被害者などの証言と戦争犯罪の責任を追及する判決の部分はこの法廷の核心であり、そのカットは法廷や歴史の真実の隠蔽となると考えます。ジャーナリズムにおいては、真実を求めることや権力に屈することのない表現の追究こそが、その生命線です。しかしここでは、過去の戦争を正当化しようとする政治家たちに屈服し、この法廷と歴史の真相がカットされてしまったのです。それに対する、この番組担当の長井プロデューサーによる告発はジャーナリストとしての良心によるものであり、その勇気は高く評価されるものです。
本来、NHKは法廷主催者や証言者(戦争被害者)にたいして謝罪と賠償をおこない、そして真実を示した映像を作って再放送をおこなうべきであるにもかかわらず、自己弁護の報道を繰り返し、介入を報道した朝日新聞社に対して逆に反論しています。この問題について知人の高校生は「被害者の慰安婦にまず謝るべきであって、言った・言わないと争うのは子どものケンカ」といっています。次世代がその本質を見抜いているといっていいでしょう。
ジャーナリズムによる戦争責任の追及はこれまでに多くの成果をあげてきました。NHKが今回の事件を教訓とし、よりいっそう、真実の追究と権力に屈しない姿勢を持つことをここに強く求めます。
よって以下をNHK支局長に要請しますので、これを上申し、NHK報道の体質の変革をすすめてください。
1 公権力による介入・検閲に屈しない報道姿勢を持つこと
1 カットして真相を報道しなかったことに対して法廷関係者・被害者に謝罪の広告をだし報道すること
1 日本軍慰安婦問題について、被害者の尊厳回復の視点を持った新番組を作成し報道すること