藤枝の市民による抗議文
2006年10月20日(金)
10月18日付け朝刊屋山太郎氏「論壇」記事に対し、強く抗議いたします。
以前、「女性国際戦犯法廷」主催者への屋山氏による侮蔑的記事に対し、謝罪社告の掲載を要請しました。その際、貴社が大変誠意ある対応をおとりになった事を、一読者、市民として大変高く評価しておりました。
(中略)
しかし、今回の屋山氏の論壇記事は貴社への信頼を再び深く傷つけるものでありました。
少なくとも、70万部の読者に支えられている貴社は、公器としての社会的責任を負うものであります。
今回の「誤った歴史認識の背景」と題された記事は、全くの事実誤認であるか、元「日本軍慰安婦」であった被害者に対する意図的な名誉毀損であるとしかいえません。
問題の所在は、以下にあります。
@米下院での国際関係委員会で審議されていた、日本軍慰安婦制度の被害者への謝罪、賠償要請は、私達支援者にとっても、名誉回復さえままならない被害当事者たちにとっても、一縷の望みをかけたものでありました。この採決が安倍氏の政治的介入によって見送られた事を、屋山氏が肯定的に評価し、あたかも正当な結果であるかのごとく、読者に伝えている事実。
ANHK裁判でも争点となっている「放送に対する政治家の介入」と同様、今回も安倍首相が「加藤良三駐米大使に電話して怒鳴りつけた」ことが事実であるならば、米下院での審議過程に、安倍氏が「国家元首」として政治的圧力をかけたことになります。このような政治的圧力の行使を評価し、それを読者に伝えている事実。
B日本軍慰安婦制度は、既に陸軍省兵務局兵務課起草案1938年3月4日「軍慰安所従業婦等募集に関する件」等、軍関与証拠資料が公表されています。戦後GHQによって証拠隠滅がはかられたにも関わらず、幸いにしてかろうじて残った資料、証言、証拠を仔細に検討して、「元日本軍慰安婦制度」の被害が、疑いのない事実であったことが明らかにされたからこそ、1993年の河野官房長官談話として、ひろく世界に公表されたわけです。安倍首相自ら、従来の個人見解とは全く異なるこれらの談話を首相として踏襲すると、今国会の質疑で言明せざるを得なかったのも、被害事実が否定のしようもなく、歴然としてあったからに他なりません。
したがって、屋山氏が書いているように、「「従軍慰安婦の誤り」は中国や韓国の言い分がそのまま国際社会を突っ走り、放置された」ゆえの事実誤認にあるのでは決してなく、国際的にも、事実的にも歴然とした国家的犯罪行為であった周知されながら、なんら賠償が行われない状態におかれている事実にあります。だからこそ、日本の国会でも補償、謝罪が要求され続け、米下院でも審議されてきたのです。
頑迷なまでに以上の事実を否定される屋山氏の論壇記事は、読者に謝った事実認識を与えようとする悪意に満ちたものであるばかりでなく、「日本軍慰安婦制度」被害者に二重の被害を与え、さらに貴社の信用を著しく貶めるものでもあります。
今回の論壇記事で名誉を傷つけられたのは、被害者当事者であります。
その数は20万人以上、東南アジアの全域に渡る、という事実をよくお考えください。
以下の要求につき、誠意あるご回答をお願いいたします。
@「女性国際戦犯法廷」主催者にたいする中傷記事謝罪要求の際、貴社の「元日本軍慰安婦制度」に対する認識をお伺いいたしました。また、認識を共有化するため、研修会を持ちたいと要求いたしました。この2点に関しては、貴社の謝罪社告掲載をもち、再度の要求を控えましたが、今回、この歴史的犯罪事実に対する、貴社の明確なる認識をご提示くださるよう、強く要求いたします。
A今回の屋山氏「論壇記事」に対する反論記事の掲載を要求いたします。
読者の声への投稿ではなく、度重なる論壇記事に対し、この影響力の行使に匹敵するような欄を与えてくださるよう、お願いいたします。
文書回答でお願いいたします