「盧溝橋事件70年 
南京大虐殺事件と日本の今」
静岡集会2007・07・21

 

2007721日、静岡市内で「盧溝橋事件70年 南京大虐殺事件と日本の今」と題し、映画と講演の集会がもたれた。

 映画は「南京戦・閉ざされた記憶を訪ねて 元日本兵の証言」(松岡環監督2007年)から2編が上映された。その後、この映画を作った松岡さんが「日本軍兵士の取材を通して見えてきたもの」、在日中国人の林伯耀さんが「南京大虐殺を明らかにすることの意味」と題して講演した。

 映像では元兵士が殺戮や強姦を証言している。今では老人となっている兵士が「生きるか死ぬかの中で最低の動物のようになっていた」「人を殺すことをなんとも思わなくなった」「クーニャンを飼った」という。行軍途中で中国女性を徴発するように連行し,性の奴隷として「飼う」のである。この「飼う」という表現に中国人への侵略と差別と迫害が象徴されているように思われた。証言をみていると、侵略時の意識が変わることなく現在までつづいていることがわかる。このことも、この国が戦争を対象化して自省するという歴史的・文化的体験を持てなかった歴史を示している。

 映像は現在20人ほどが編集され、まとめられているという。今後、映像として集成されていくことを期待したいと思った。

 松岡さんは、教師になって子どもたちからすすむべき道を教えられたとし、中国での取材体験と、日本での南京虐殺の証言集会の開催の経過を語った。また、加害者と被害者双方から聞き取りをすすめたなかでのエピソードを示し、学生間の交流事業もすすめてきたことや最近の歴史修正主義の動向の批判などを語った。最後に、知ったものの責任と「矛盾に気づいたなら見過ごさない」という行動の指針を示した。

 林さんは、南京は中国人にとって忘れがたいものであることを示し、自らの日中の友好事業を踏まえて、現状を分析した。林さんは、一番戦争を呪ったのは前線の兵士であったはずだが、死者に口はなく、靖国に祀られて遺族の思考が停止させられている。加害の事実を語れば周囲から圧力が加えられる。死に追い込まれた同僚の死に対して、その戦争責任を問うことはなく、思考が停止している。それは精神の奴隷状態であるとした。林さんは、歴史を正視し、歴史的位置を確認し、深く自省することでアジアから尊敬されるとし、そのような自省は「自虐」ではなく、勇気だと語った。

 集会では最後に「元残留孤児」が発言し、日本の戦争と移民政策によって「孤児」とされたがその責任が日本政府にあること、中国人が自身を大切にして育て教育を与えてくれたという人間愛への感謝を語った。その語りは、今も戦争犯罪をないかのように語る政治家への怒りに震えながら、マイクを握り締めての証言だった。