黄金三日月        里  檀

 

黄金三日月、夕星ふたつ

すずめお宿に帰ろうか

 

帰るお宿がありませぬ

ある日切られてどこへやら

わたしはうなだれ立ち尽くす

余所のお宿へ行こうとて

飛べる翼もありませぬ

吐く息白く身を包む

 

黄金三日月、夕星ふたつ

希臘の神があでやかに、

凍の夜空におわします

吐息となった寂しさが

美神の衣に飾となり

明日にはほのとなるといい

 

黄金三日月、夕星ふたつ

すずめお宿に帰ろうか

 

いえいえ、お宿はありませぬ…

 

(二〇〇八・十二・四)

 

 

 二〇〇八年冬、アメリカのサブプライム・ローンショックに始まった

金融不安は、今や大量の派遣労働者切りという現象となって日本の社会

を襲っている。労働者派遣法の悪はここで言うまい。ただ、労働を切ら

れるとともに住む所を失う人の現実をどうするのか。明日からの生活を

どうしろというのか。

 三四歳の派遣労働者は、最低限の声を上げたきり、闘うことすらでき

ずに姿を消した。何とか生きていてくれるといい、そんなことが彼に関

わった者の、せめての希望とは!

 家路を辿る西の空に低く三日月、その上に木星と金星が輝くのを見た。

それは、ただただ、美しかった。