弾 劾
里 檀
ひとつ 来年も雇うから一度辞めてください
保険証も返してね
ふたつ 来年は辞めてもらいたい
理由は特にないけど そういうことで…
ああ、いや、これからまだ仕事が忙しいんだったか？
なら、来年もやってもらおうか
無理にとは言わないが
みっつ 会社の経営状況が悪いんです
あと一ヶ月で終わりにしてね
年休消化？考えませんでした 忙しかったもので
整理解雇ですよ…違う？
新しい人を入れている…黒字解消もしている
…そうだけど
よっつ ここで働いて長いでしょ？
いいでしょ、もう 辞めてくださいね
反復雇用されている？
おお、そうだ あなたのいうとおり
世間の常識から言えば
「期限の定めのない雇用」に転化している
そんなことですね
では、定年までは働けますよ
給料も、心持ちだけど、
今まで上がることがなかった分、上げましょう
いつつ 雇用契約期間満了です、辞めてもらいます
会社もこの先の経営を盤石にしたいんです
整理解雇じゃありません
特別功労金も付けますよ、
退職金を支給する契約じゃないのにですよ
何が不満なの
雇い止め理由が適当、って、適当、って、適当、って、
「適当」って？
『働く者は一個の人間である。
使用者の、合理性を装った都合のみで
一方的に使い捨てる事は許されない』
〝定年まで勤められると以前の理事長が言ったんですか？
はあ そうなんですか
いやいや、
『不知』です 『不知』です
今の私らには関係ないことです
６年も前の約束に、どうで関係がありましょう？〟
（二○一二・一○・一二 ）
※不知 … 相手方の主張を知らないという陳述。
否認と推定される。
（民事訴訟法第１５９条第２項）
あなたのそばにいく 里 檀
あなたのそばにいく
あなたのかたわらで
あなたががんばっているのを
なにもいわずにみている
あなたのそばにいく
あなたのうしろにいて
あなたががんばっているじかんを
すこしでも共有してみる
あなたのかたわらには
たくさんのひとがやってくるね
みなおんなじかおをしているね
あなたががんばるのをみて
じぶんもじぶんのやれることで
がんばるんだとおもっている
がんばれるとおもっている
げんきをもらっているのよね
それをみてわたしもげんきになる
あなたのそばにいくということ
そんな〝遠征〟を
《火を借りにいく》と
こころひそかにわたしはよんでいるんだよ？
あなたのそばにいき
あなたにわらいかけて
きょうもがんばったねと
またくるねと てをふってわかれる
じぶんのおもいをひとにつたえるために
辛苦のみちをいくひとよ
ささやかなことばでねぎらうことしか
感謝のかたちはないけれど
きょうもがんばったねと
てをふって
（長きにわたり闘争をつづけている貴方たちに
二〇一二・六・一六 ）