アベコベアベバ  

地引 浩

 

あーらふしぎ あらふしぎ

アベコベアベバ あらふしぎ

ふしぎなじゅもん あらふしぎ

アベコベアベバ とふた吹きすれば

みーんなあべこべ だいへんしん

なったつもりで おだいじん

きがつくまでの おたのしみ

おたのしみ おあとは いつも じこせきにん

 

アベコベアベバ アベコベアベバ

 

戦後レジューム脱却で美しい国 普通の国

日本の伝統は 夫婦同姓 皇神子の国

憲法改正 新日本帝国憲法

教育改革 財政改革 政治改革 

社会保障の効率化で社会保障の一体改革

生活保護費削減

Tpp 国土強靭化 公共事業

原発ベースロード 核燃料サイクル 原発再稼働

原発輸出 東電再建 除染促進 福島復興

国家安全保障会議 特定秘密保護法 テロ対策

新防衛力大綱 離島防衛 水陸機動団 核武装

国防軍 新軍法会議 新憲兵隊 辺野古新基地建設

靖国神社国家護持 

デフレ脱却 国債大量発行 法人税減税

限定正社員 派遣法再改悪 国家戦略特区

その他いろいろ ひとまとめ

 

アベコベアベバ アベコベアベバ

 

あーらふしぎ あらふしぎ

アベコベアベバ あらふしぎ

見かけだおしの 化けの皮

アベコベアベバ 期限切れ

みーんな正気に アベコベアベバ

なったつもりが まるはだか

あげくのはては くいものあさり

おたのしみ おあとは いつも じこせきにん

 

(2014.2.28)

 

ほんとうのこと(2) 

O保線管理室施設係Aさんへの手紙

地引 浩

 

 

Aさん あなたはなにをしたのか

Aさん あなたはJR北海道からクビになった

    函館線大沼駅で起きた貨物列車脱線事故のあと

    ゲージの計測値を改竄したという理由で

Aさん ほんとうはなにをしたのか しなかったのか

Aさん 施設係というあなたはJR北海道の線路保守部門の

    最末端の従事員だったはずだ

Aさん あなたは ほかのだれにも業務指示できる立場になく

Aさん あなたは 上司の指示や指導で

    日々仲間たちと作業していたのではないか

Aさん ほんとうのことを言おう

Aさん どの役職のだれが あなたに指示をしたのか

Aさん あなたはずっと上司の命令以外のことを許されてもなく

Aさん 仕事とは そんなものだと思っていたのだろう

Aさん もしかして あなたは深く考えることなく

Aさん 言われるままに数字をいじったのかもしれない

Aさん あるいは あなたはなにもしてないのに

    あなたがやったことにされたのではないのか

Aさん ほんとうのことを言おう

Aさん あなたは知らされてないのだろう

    あなたがこの世に生まれるまえのことだから

Aさん 日本国有鉄道が北海道の街々を線路でつないでいた頃のことだ 

     おれたち保線区員は五項目の安全綱領を月に一度はかならずみんなで唱和していたんだ

Aさん 「一、安全は輸送業務の最大の使命である。」

     「二、安全の確保は、規程の遵守及び執務の厳正から始まり、

      普段の修練によって築きあげられる。」と

Aさん その国鉄は赤字だからと言いがかりをつけられて

     民営にされ そのうえ分割されてしまったんだ

Aさん そのとき北海道では国のやり方に反対した組合にいるという理由だけで

     たくさんの保線区員たちがクビになってJR北海道に採用されなかった 

Aさん そんな話はだれからも聞いてないかもしれないね

     JR北海道に残れた人は国や会社の言うことをきく人か

     おとなしくて会社に逆らえなかった人なのだから

Aさん 安全綱領の最後はこうだった 「五、疑わしいときは、手落ちなく考えて

     最も安全と認められるみちを採らなければならない。」

Aさん だから おそらく あなたにも責任がある 職責に応じた責任はある 

Aさん だけど ほんとうに責任を取らなければならないのは会社のトップ

     社長や専務そして施設部門の役員たちだ

Aさん ほんとうのことを言おう

Aさん 会社では線路を修繕することよりも検査数値を手直しすることが当たり

     前になっていたのではないか それを利益優先の会社幹部は知っていて

     知らないふりをした

Aさん 会社に入ったばかりのあなたは みんながやることをそんなもだと思ってしまった 

Aさん レールは 線路は列車運行のため最も大切な設備だと思わないか

Aさん 末端のあなたの仕事は鉄道事業にとって何よりも 何よりも大事なものだった

Aさん あなたはもっと自分の仕事に誇りをもっていい そして胸を張ろう 

Aさん そしてほんとうのことを言おう 「数値の手直しは会社の命令だった」と言おう

Aさん おれは あなたを断固擁護する おれたちはあなたを断固擁護する

    会社はあなたを懲戒解雇してはならない

 

(2014.1.22)

 

 

トックトック天国

地引 浩

 

 

トック トック トックトック

ここらはずーっと ハケントック

イホウ フホウ 当り前

ブローカーは 大繁盛

 

トック トック トックトック

そのうちあそこも トバクトック

カジノで ポーカー ルーレット

ハシモト君の 真骨頂

 

トック トック トックトック

二ホンはあれから ヒバクトック

そこいらじゅうが 管理区域

子どもや孫らは どうなるの

 

トック トック トックトック

二ホンゼンコク アンポトック

米軍主権の 地位協定

オスプレイも 飛び放題

 

トック トック トックトック

これからトウキョウ オリントック

ドウロ ホテルに スタジアム

フクシマ忘れて 大はしゃぎ

 

トック トック トックトック

イリョウ ホケン カイコトック

どこかの国の 植民地

多国籍企業は ウッシッシ

 

(2013.10.21)

断絶  JR北海道社長という男に

地引 浩

 

 

あなたは それでいいのだろう

言い訳や言い逃れの言葉を探し

その時その場をやり過ごせば

あなたはそれでいいのだろう

 

あなたは 知りたくもないだろう

バールとハンマーとビーターを担ぎ

くる日もくる日も線路にへばりつき

汗を流した人々がいたことを

 

あなたは 興味もないだろう

一ミリの狂いも見過ごさない眼と

鍛えられた腕と焼かれた黒い顔の

線路工手と呼ばれた男たちのことを

 

あなたは 決してわからないだろう

地吹雪の夜の汽笛の悲鳴を

嵐の夜 鉄橋見張りに立つ

ずぶ濡れの雨合羽の男の恐怖を

 

あなたは 見たこともないだろう

真冬の朝 線路を押し上げる霜柱を

春先の線路わきを染める

真紫のスミレの花たちを

 

あなたには 聞こえてこないだろう

線路を突き固める線路工手たちの唄が

線路で働き 家族を養い

一生を終えていった男たちの唄が

 

あなたは それでいいのだろう

見せかけの数字や作られた作業記録も

請負会社のミスにしてしまえば

あなたはそれでいいのだろう

 

(2013.10.10)

あっちむけ ホイ

地引 浩

あっちむけ ホイ  こっちむけ ホイ

こっちむけ ホイ  あっちむけ ホイ

指さすほうは むいちゃダメ

あっちむけ ホイ  こっちむけ ホイ

こっちむけ ホイ  あっちむけ ホイ

やつらはみんな だますだけ だますだけ

 

原発は安全   ウソばっか

原発は安い   よく言うよ

電気が足りない おどし文句

地域の発展   ゴミ捨て場

平和利用は   プルトニウム生産

終息宣言    だましの手口

汚染水漏れ   止められない

放射能汚染   とりかえしつかぬ

漁業再開    絶望的

原発輸出    どの面下げて

 

あっちむけ ホイ  こっちむけ ホイ

こっちむけ ホイ  あっちむけ ホイ

政治家 役人  信用するな

あっちむけ ホイ  こっちむけ ホイ

こっちむけ ホイ  あっちむけ ホイ

オレらはみんな あっちむかない ホイ

 

(2013.8.30)


ちいさな ちいさなお客さま

地引 浩 

ようこそ

ちいさな ちいさな お客さまが

ひらひら ひらひら 舞っています

ぼくたちの ちいさな庭の木陰に

ちいさな ちいさなお客さまは

まいとし まいとし どこからか やってきます

コバルトブルーのきゃしゃな身体に

薄い黒曜石のすてきな羽をまとって

どこかの舞踏会に行ってきたのでしょう

 

ようこそ

ちいさな ちいさな お客さまが

しずかに しずかに 止まっています

ぼくたちの ちいさな庭の木陰は

ちいさな ちいさなお客さまで

すてきな すてきな おとぎの森の小路になります

木洩れ陽のスポットライトが

コバルトブルーと薄いガウンをつらぬくと

さあ ぼくたちだけのバレエのはじまりです

 

ようこそ

ちいさな ちいさな お客さまが

なかなか なかなか こないのです

ぼくたちの ちいさな庭の木陰に

ちいさな ちいさなお客さまは

いったい ぜんたい どうしてしまったのでしょう

もしかして ほうしゃのうのせい

それとも つゆの雨が少なかったからでしょうか

とっても とっても心配しています

 

ようこそ

ひらひら ひらひら ひらひら

おはぐろとんぼさん ようこそ

ようこそ ぼくたちのところに

ことしも ことしも ようこそ

 

(2013.7.3)

 

いつのこと

地引 浩

 

 

いつのことだろう

かごやざるがプラスチックになったのは

 

いつのことだろう

新聞紙にものを包まなくなったのは

 

いつのことだろう

八百屋から虫食いの菜っ葉がなくなったのは

 

いつのことだろう

八百屋や魚屋や肉屋が街から消えたのは

 

いつのことだろう

原子力の平和利用という大ウソをみんな信じたのは

 

いつのことだろう

階段を上がるのを若い人がやめたのは

 

いつのことだろう

くつしたやズボンの穴を繕わなくなったのは

 

いつのことだろう

見かけだけで人を計るようになったのは

 

 

そして

いつのことだろう

日本列島から人間がいなくなくなったしまったのは

 

いつのことだろう

(2013.3.25)

ほんとうのこと

地引 浩

ほんとうのことを知りたいのです

安心したいのではありません

「だいじょうぶ」と言ってほしいのではありません

「心配しなくていい」と保証してくれなくていいのです

 

ほんとうのことを知りたいのです

そのことでパニックになんてなりません

ほんとうのことが どのようなことであっても

だれも 十年先 二十年先 三十年先のことは

わからないのですから

 

隠さないでください

どうか隠さないでください

ほんとうの ほんとうのことを知りたいのです

わたしやわたしの住むところの汚染がどれくらいなのか

わたしの体内汚染がどのくらいなのか

ほんとうに知りたいのです

 

わたしの わたしのほんとうのことを

隠さず 隠さず教えてほしいのです

それは できないことですか

 

ほんとうのことを知りたいのです

 

(2013.6.3)

従属したい者ら     地引 浩

 

 

「バンザイ」とは いったい何なんだろう

「バンザイ」を叫ぶとき

人は何者であり 何者になろうとしているのか

 

あの南の島 サイパン マップ岬

あの母たちや老いた人々の「バンザイ」は

何であり 何のためだったのだろう

あの「玉砕の島」 ガダルカナル

機銃掃射の弾幕のまえに身を晒した

兵士たちの「バンザイ」は

スーサイド・アタック(自殺突撃)と呼ばれなかったか

 

「バンザイ」と叫ぶとき

人はひとでなく

何者かに従属する者として

何者かの臣下としてのみ自己を自覚するのだろう

 

「バンザイ」を唱和するとき

人は何者かの従者として

その序列のなかに身を置くことで

自己という存在の価値を見出したいのだろう

 

二〇一三年四月二八日 「主権回復の日」の式典

「テンノウヘイカ バンザイ!」と三唱したのは

あの閣僚たちと

「選良」という者らと 「知事」という者らだった

テンノウの従者とテンノウの臣下でありたい者らであった

 

「テンノウヘイカ バンザイ!」

「テンノウヘイカ バンザイ!」

「テンノウヘイカ バンザイ!」

 

(2013.5.3)