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(2003.6.6)
着剣 捧げ銃! そうならないことを願いながら 地引 浩 着剣 捧げ銃! 迎えられるのは キミ 着剣 捧げ銃! 送られるのは キミ ウソと石油にまみれた侵略戦争の ひとつの帰結 貧しい若者たちが さらに貧しい異国の大地を蹂躙する 命令で 貧しい若者たちが 破壊した瓦礫のかげの人を撃つ 自由と民主主義の名のもとに 着剣 捧げ銃! 迎えられるのは キミ 着剣 捧げ銃! 送られるのは キミ デマと野望に汚れた侵略戦争の ひとつの現実 ふつうの若者たちが 殺された母子のかたきに反撃する 身を捨てて ふつうの若者たちが 鉄条網で囲われたキミを撃つ 正義と家族の名誉のために 着剣 捧げ銃! 迎えられるのは キミ 着剣 捧げ銃! 送られるのは キミ 過去として忘れ去られた侵略戦争の 新たな復活 (2004.1.30) |
地引 浩
楽しくしていたいから わたし
考えたくなんかないよ いま
楽しくしていたいから わたし
気にしてないよ 失業なんて
きれいじゃない!
クリスマス イルミネーション
クリスマス イルミネーション
楽しくしていたいから いつも
思い出したくなんかないよ いま
楽しくしていたいから いつも
聞きたくないよ 自殺だなんて
すてきじゃない!
クリスマス イルミネーション
クリスマス イルミネーション
楽しくしていたいから もっと
知りたくなんかないよ いま
楽しくしていたいから もっと
どうだっていいよ アフガンだって
すごいじゃない!
クリスマス イルミネーション
クリスマス イルミネーション
楽しくしていたいから ずっと
考えたくないよ いま
楽しくしていたいから ずっと
興味ないよ せんそうなんて
いいじゃない!
クリスマス イルミネーション
クリスマス イルミネーション
楽しくしていたいけど ほんとは
わかってしまうんだ いま
楽しくしていたいけど うん
泣いているんだ こわくなって
笑っちゃうよ!
クリスマス イルミネーション
偽りの イルミネーション
(2003.12.23)
派兵される自衛官を想いながら
地引 浩
歌があるだろうか ぼくに
奥底から湧き上がる
歌があるだろうか
焼かれ 吹き飛ばされ
殺された 大地に
やさしく染み入る
歌があるだろうか
悲しみはあるだろうか ぼくに
全身を震わせる
悲しみがあるだろうか
撃たれ 足蹴にされ
殺された 少年に
おとうと と呼びかける
悲しみがあるだろうか
勇気があるだろうか ぼくに
この日々を見つめる
勇気があるだろうか
奪われ 占領され
殺された イラクで
銃器を捨てる
勇気があるだろうか
歌があるだろうか ぼくに
人の輪を和ませる
歌があるだろうか
犯され 蹂躙され
殺された 空に
どこまでも 響く
歌があるだろうか
(2003.12.12
派遣実施要綱承認・準備命令発令の日に)
第一号
地引 浩
込みあげる反吐をこらえながら
オレはオレに言い訳する
「仕方なかった
撃たなきゃ やられていた」
足元から立ち昇る
血と 人肉と 硝煙の匂い
アラブの地に広がる
赤黒い しみ
散乱した ボロキレと
皮膚と 内臓
いったい オレは何をしたのか
反動を抑えて
絞り続けた トゥリガー
飛び出す薬莢 空になった弾倉
その男の目だ
笑い顔で近づいてきた
その目
髭面の奥の その目だ
腰だめにした 89式小銃
とまれ!
フリーズ!
「正当防衛だ 心配するな
名誉ある防衛行動第一号だ
キサマが口火を切ったのだ」
指揮官の声が遠くに聞こえる
突然踊りだす 心臓
全身が燃える 焦げる
オレが第一号
オレが名誉ある第一号 か
込みあがる 笑い
乾いた笑い
「安心しろ 他のヤツも続く」
指揮官の怒鳴り声が
耳の奥で こだまする
(2003.8.18
オサラバ自衛隊
地引 浩
リストラ 不況の この世の中で
技術身につき 資格も取れる
公務員だから クビもない
そんなムードに 乗せられて
あれよあれよと
イラク行き
そんなハズじゃ 自衛隊
そんなハズじゃ 自衛隊
さっとオサラバ 自衛隊
職なし すねかじり みっともない
体も鍛えて 勉強もできる
三食保証で 給料も出る
そんな勧めにダマサレテ
あげくのはては
地獄行き
そんなハズじゃ 自衛隊
そんなハズじゃ 自衛隊
さっとオサラバ 自衛隊
憲法 九条 あるのだから
訓練はしても 実戦はなし
専守防衛 派兵なし
そんな見込みはおおハズレ
いやだいやだで
ヤスクニの杜
そんなハズじゃ 自衛隊
そんなハズじゃ 自衛隊
さっとオサラバ 自衛隊
(2003.7.15)
この日
地引 浩
もう こんな季節なのか
この日
休耕田の茅原に鎌を入れた
背丈ほどに伸びていた
一振り 一振り
茅を刈り 束ねる
夏野菜の根元に敷く茅は
保水のためだし やがて肥料にもなる
もう こんな季節なのか
イラク反戦のデモが退き
AWACSは日米共同訓練に
アラスカに飛んだ
この日
オウム宰相のくには
戦争のできるくにへと化けた
きょねんも おととしも さきおととしも
ここで鎌を振るった
体中から吹き出す汗も
肌にはりつくシャツの感触も
一振るいごとに広がっていく
ぽっかりとした空間のせいなのか
妙に気持ちがいい
金曜日の夕方の駅前には
大道芸やキャッチセールスも繰り出して
交差する人波も踊っている
有事法制反対のチラシは
沈黙と無視の連続で
幾十枚 配れただろうか
きょねんと おととしと さきおととしと
別のくにになった このくにと
どのように向き合っていこうか
もう 夕暮れが近い
(2003.6.6)