玉響 生駒孝子
介護を必要とする季節:ヒトの一生の中で、それは玉響に過ぎない
しかし、それは何と重く先の見えないものであろうか
「危険なことは分かっていた」
八十五歳の責任者は、そう言ってうなだれた
継ぎ接ぎだらけの建物は、入所者たちの逃げ場を失わせた
なぜそんな施設に高齢者を預かっていたのかと
法は裁くのだろう
借金を重ね、部屋を継ぎ足す度に、
あなたは迷ったのではなかろうか
もう辞めようか、と
誰もあなたを責めなかっただろう
入所者と変わらぬ年齢のあなたを
けれどあなたは辞めなかった
辞めることができなかった
今、あなたは何を後悔しているだろうか
冷たい塀の向こうで
そして私は考えている
もし私が、入所者の家族だったら、
あなたに頼まなかっただろうか
「それでも母をお願いします」と
老人施設「たまゆら」火災に寄せて