一日を生きる
生駒 孝子
気の早くなった六月の太陽がせっかちに昇り始める
光が滲む方角を目指して、私のトラックは走り出す
気づくとここにいる
いつもこの運転席に座っている
走りながらの食事も大分上手くなった
対向車の視線は見ないことに決めた
過労死した人は何を感じてから逝ったのだろう
頭がじんじんと熱を帯びてくる
思考が停止する
脳が肉体の奴隷になってしまうのか
「男でもきつい仕事だね」という声を聞いて、
やっと弱音も口に出せる
運行管理者達は、私の労働時間を法的に
クリアさせるために躍起になって知恵を絞る
それでも私は「体が丈夫なだけが取り柄です」と
笑ってしまう
自分が一番嘘つきだ
働くことが美徳だった
母は働いて働いて、女手一つで私たち姉妹を育て上げた
私は何に縛られているのか
遊び足りない子どもが駄々をこねるように
沈んでいく夕日を見送りながら、エンジンを切る
「終わった」
深く短くため息を吐く
明日も早い