8・23池内了静岡講演「福島事故があったにもかかわらず、なぜ今原発回帰なのか?」
2025年8月23日、静岡市内で池内了さんの講演会がもたれた。主催は浜岡原発の再稼働を許さない静岡県ネットワーク。池内さんは「福島事故があったにもかかわらず、なぜ今原発回帰なのか? 中部電力の巧妙な作戦」の題で次のように話した。

2022年6月の最高裁判決では津波の予見や万全の対策は不可能とし、国の責任を免除した。23年2月には岸田内閣がGX基本方針(原発の最大限活用)を閣議決定し、25年2月のエネルギー基本計画ではこれまでの可能な限り原発依存度を低減する方針から原発の最大限利用へと転換した。関西電力は次世代型原発の設置までいう状況である。
だが、そもそも原発は人道に反する技術である。原発は過疎地に押し付けられる。植民地主義であり、中央集権による地方自治の圧殺である。地域共同体が破壊される。また、被ばく労働を押し付ける。電力会社は事故時に生命を賭けるのだろうか。さらに、放射能廃棄物を世代を超えて押し付ける。10万年も安定した地層などない。そして、事故によって放射能汚染を押し付ける。被害は矮小化され、復興という名で地域が搾取される。
いま日本は原発を止められない。経産省は電力会社に手厚い保護をする電力会社は金もうけのために原発の延命を狙う。経産省は、ベースロード市場、非化石価値取引市場、脱炭素電源オークションなどの名で原発をすすめる。ベースロード、非化石、脱炭素とは原発を進めるための用語である。
電力会社が資金を提供して原発応援団ができている。彼らは相対的安全論や放射能安全神話を流布する。事故が起きたため絶対的安全から相対的安全を言うようになった。新規制基準に適合するとは言うが、安全とは言わない。相対的安全とは「危険性が社会的通念上容認できる水準以下であること」などと言う。いいかえれば、原発は壊れるまで安全ということである。
日本の核燃料サイクルの動きをみれば、無責任が横行している。原子力規制委員会は機能不全であり、原発稼働のための委員会になっている。司法は行政から独立できずに政治に追随している。大法律事務所の暗躍もある。
GXの名で原発回帰がすすんでいる。原発を相対的安全などと言い、放射能安全神話が流されている。事故被害の矮小化や見せかけの復興が宣伝されている。事故により安全性が増したという宣伝がなされ、原子力ムラの逆襲が起きている。そして司法は「予測不可能」と言って政府に追随する。原子力規制委員会の審査は大甘である。活断層の認定や被ばくの問題など科学には限界があるが、それを無視している。
中部電力も巧妙に作戦を立てている。南海トラフの震源域にあることは熟知し、再稼働は急がず、反原発のターゲットにならないようにしている。中電は努力しているから再稼働を認めてもいいという世論を得ようとしている。中電は1・2号機の廃炉を模範的に進めているとし、防潮堤のかさ上げも28メートルまで上げる計画を立てた。軟弱地盤の上にある5号機は適合審査から外した。使用済み燃料の保管については中間貯蔵施設を予定している。だが、浜岡原発は南海トラフの震源域にありその揺れの大きさ、危険性は高い。冷却水は沖の取水トンネルからであり、取水塔やトンネルが壊れれば、冷却水が途絶える。事故が起きれば東京、あるいは名古屋が汚染される。避難計画も大雑把であり、関東甲信、石川・富山まで避難できるとは言えない。
あくまでも反原発を主張することが必要だ。原発立地地域の困難な状況を理解し、経産省の原発優遇政策の不当性、電力会社との癒着や政策の無責任性を追求しよう。原発と軍拡は共存できない。日本は自然エネルギー資源の豊かな国であり、その有効利用をすすめよう。 (文責、人権平和・浜松)